2020.01.12

“気持ち”でつかんだ決勝進出…川崎ブレイブサンダース、アクシデントを全員で乗り越え優勝へ王手

選手の欠場が相次ぐ中、結束力を深めて決勝進出を果たした川崎[写真]=伊藤 大允
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 1月11日、さいたまスーパーアリーナにて「第95回天皇杯・第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」の準決勝が行われ、川崎ブレイブサンダース宇都宮ブレックス相手に82-61で勝利を収めた。

 川崎はこの試合前、9日の準々決勝で17得点を挙げる活躍を見せた藤井祐眞がインフルエンザのため欠場することを発表。篠山竜青マティアス・カルファニ鎌田裕也に加え、藤井も欠く中で宇都宮に挑んだ。

 アクシデントが重なり、「下馬評では宇都宮さんが有利」(辻直人)だったかもしれない。しかし、いざ試合が始まれば第1クォーターから相手を10得点に抑えることに成功。すると、残りの30分間もディフェンスだけでなく攻撃面でも相手を上回り、圧勝ともいえる点差、内容で決勝進出を決めた。

 川崎は藤井に代わり、シューターの辻が先発ポイントガードを務め、その辻が計6アシストでターンオーバーなしと役目を果たした。試合後、本人も「最初はテンパる部分はあったんですけど、簡単なターンオーバーがなかったことが一番よかった」と胸をなで下ろした。

辻は「試合をとおしていいプレーができたと思う」と振り返った[写真]=伊藤 大允

 また、佐藤賢次ヘッドコーチは、ポイントガードを本職とする青木保憲ではなく辻に先発ポイントガードを任せた理由を「経験」と説明。「青木をスタメンにする考えもありましたが、これまで数々の経験を積んでいる辻もコントロールができるので」と、まずは広い視野とパスセンスも兼ね備える30歳にゲームメイクを託した。

「一昨日は藤井がアタックしてみんなで勝利をつかみました。でも藤井がいなくなってもそれができなくなるチームではないです。誰が出ても同じことをできるように今まで積みあげてきましたし、『自信持ってやろう』と送りだしました」

「今日は気持ちの試合だったと思います。『いない選手の分まで』という気持ちが相手のシュートタッチを狂わせたと思いますし、チームのエナジーが勝利を呼びこんだと思います」

「誰が出てもやるべきことは変わらない」と佐藤HCは信念を貫く[写真]=伊藤 大允

 そう指揮官が言うように、この勝利は全員でつかんだ勝利だ。

 辻と交代を繰り返しながら試合をつないだ青木、ニック・ファジーカスジョーダン・ヒースはともに35分以上コートに立ち続け、ファジーカスは17得点、ヒースは5本の3ポイントを含む21得点をマークした。先発に名を連ねた熊谷尚也長谷川技もコンスタントに得点を挙げ、辻と同様ターンオーバーは「0」。大塚裕土も相手の追いあげを食い止める“4点プレー”を決めて会場を沸かせた。

 そして、宇都宮を上回るほど会場で大きな声援を送り続けた川崎のファン、試合に出られない篠山を筆頭にSNSを通じて『#チュウィンチュウィンチュウィン』とパワーを送った“念組”の存在も忘れてはならない。

「チームが1つになっている感じがあります。『不幸中の幸い』じゃないですけど、ピンチの中でもみんながすごく前向きでより集中してできているかなと思います」(辻)

 最後の相手はサンロッカーズ渋谷。ベストメンバーで戦えない中でも、優勝まであと1つのところまできた。

 サンダースファミリー全員でタイトルを獲りにいく——。

文=小沼克年

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