ハンガリー、移民支援を罰則化する法案を可決
ハンガリー国会は20日、難民申請を希望する移民を支援する弁護士や活動家に刑事罰を科す法案を可決した。「不法移民を手助け」した場合、最長1年の禁錮刑が科されることになる。
ビクトル・オルバン首相が率いるハンガリー政府は、新法案を「ソロス阻止法」と呼んでいる。ハンガリー生まれの著名投資家ジョージ・ソロス氏がイスラム教徒の移民支援を行っていると、政権が非難しているためだ。
ハンガリー国会での法案可決の数時間、欧州連合(EU)首脳らは難民をめぐる規定の見直しを協議することで合意した。
ハンガリー政府は移民が国家安全保障を脅かすとしているが、政府の強硬姿勢や法案可決に対して国際社会から多くの非難が集まっている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が今回の法案の撤回を求めたほか、人権問題を扱う欧州評議会は、諮問機関のベニス委員会が法案の評価を22日に出すまで、法案の採決を延期するよう求めた。
ベニス委員会はハンガリーの法案について報告書で、「不法移民の発生に直接関係のない団体の活動を犯罪だと認定している」と述べていることが、BBCの取材で明らかになっている。
なぜ法案は議論を呼んでいるのか
法案はすでにある8本の法律を改正し、新たに「不法移民の手助け」を犯罪としている。
新法の下では、難民申請希望者への支援や擁護活動にかかわる非政府団体で働いたり、団体に協力したりした人に禁錮刑が科される可能性がある。人権擁護団体は、ハンガリーに入国した人々が合法的に難民申請ができるよう支援しているだけだと主張している。
新法は難民認定についても規定を厳格化するため、直接迫害の危険にさらされていない第三国からハンガリーに入国した場合には難民申請が認められない。
これに関連して、ハンガリー議会は憲法への修正条項を可決した。修正条項は、「外国人の集団はハンガリーに定住できない」としており、イタリアやギリシャに到着した難民申請希望者をほかのEU加盟国で受け入れるという、EUの施策が非合法化されることになる。
難民危機が高まっていた2015年、西欧諸国を目指す約40万人の移民がハンガリーを通過した際、オルバン首相は人々の流入を止めるためのフェンスの設置を命令した。欧州委員会はすべての加盟国に割り当てられた数の難民受け入れを強制する措置をとったが、オルバン首相は受け入れを拒否した。
2015年には、17万7000人がハンガリーで難民申請をしたが、難民認定されたのは数百人にとどまった。2017年には難民申請の数は約3200件まで減少した。