香港警察「追跡アプリ」、米アップルが削除 「デモ隊が悪用」
米アップルは9日、反政府デモが続く香港で警察の動きや催涙ガスの使用を追跡できるアプリ「HKmap.live」をオンラインストアから削除した。「香港警察や住民を危険にさらすような使い方をされていた」のが理由という。
アップルは当初、アプリ販売サイトApp Store(アップストア)で同アプリを取り扱わないとしたが、一転して配信を開始。これを中国メディアが厳しく批判していた。
「警察を待ち伏せ」
今回のアプリ削除についてアップルは、「懸念を抱く多くの香港の顧客から問い合わせがあった」からだと説明している。
「私たちは、このアプリが香港警察を標的にしたり待ち伏せしたりするために使われていたと、香港のサイバーセキュリティー・テクノロジー犯罪局を通じて確認した」
さらに、「犯罪者がアプリを使用し、警察がいないと分かっている地域で住民に被害をもたらした」としている。
アプリはアップストアから削除されたものの、ウェブサイト版は残っている。Google Pay上にも残ったままだ。
「有害アプリ」
このアプリが当初アップストアで配信されると、アップルに対して中国国営メディアからは非難の声が上がった。
中国国営・人民日報は、アプリ名は伏せつつ、「有害なソフトウェアの配信は、中国国民の感情への裏切り行為だ」と主張。暴力的な抗議行動への「道を開いた」としてアップルを批判した。
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長期化する香港デモをめぐっては、多数の企業が中国当局の怒りを買ってきた。
米プロバスケットボールNBA、ヒューストン・ロケッツのゼネラル・マネジャー(GM)が、香港で続く反政府・民主化デモを支持するツイートをしたところ、中国人ファンや中国のスポンサー、パートナー企業などから批判が殺到。中国の放送局や動画配信サービスは、ロケッツの試合を放送・配信しないと表明した。
米宝飾品大手ティファニーは、右目を手で隠した女性の広告を出したところ、中国人から香港デモを支持するものだと抗議を受け、広告を取り下げた。
また、米カリフォルニア州のビデオゲーム会社「ブリザード」は、ライブストリームで香港デモへの支持を表明したプロゲーマーを出場停止にした。
香港デモでは、中国の銀行や、中国寄りとされる企業などが標的となっている。
中国はアップルにとって主要市場であり、商品の製造拠点もある。
同社製品の製造部門では、中国国内で、直接的および間接的なものを合わせて約300万人の雇用を生んでいる。
台湾や香港を含む中華圏での直近の四半期の売り上げは96億1000万ドル(約1兆300億円)に上る。