米・トルコ、シリア進攻の「5日間停止」で合意 停戦はクルド撤退後と

Mike Pompeo and Mike Pence

画像提供, Reuters

画像説明, マイク・ポンペオ米国務長官(右)とマイク・ペンス米副大統領は17日、トルコがシリア北部での軍事作戦を5日間「停止」することで合意したと発表した

トルコは17日、シリア北部で進める軍事作戦について、5日間「一時停止」することでアメリカ側と合意した。しかし、クルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」が同地域から完全に撤退するまでは「停戦」しないとしている。

トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領はこの日、即時停戦を直接交渉するため首都アンカラを訪れたアメリカのマイク・ペンス副大統領と会談し、合意に至った。

ただし、YPGが撤退要請に完全に応じるかは不明だ。

トルコは、シリア国境から約30キロにわたる一帯を「安全地帯」として確保したい考え。アメリカは、この安全地帯の想定地域からのクルド人部隊の撤退を促進するために協力する考えだと、ペンス副大統領は述べた。

ペンス氏は会見で、「(トランプ大統領は)停戦を望んでいた。暴力を止めたがっていた」と述べ、トランプ氏の「力強い指導力」を称賛した。

合意を受け、トランプ氏はエルドアン氏について、「正しいことをした非常にすごい指導者」だと述べた。

YPGが大半を占めるシリア民主軍(SDF)のマズロム・コバニ司令官は、北部国境の町ラス・アルアインからタル・アブヤドにわたる地域をめぐる合意内容を確認する方針で、「我々は、他の地域の今後について議論していない」と述べた。

在英非政府組織のシリア人権監視団(SOHR)によると、軍事作戦の「停止」合意後も、ラス・アルアインで衝突が続いている。過去8日間で民間人72人が死亡、30万人以上が避難を余儀なくされたという。

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トルコの主張

トルコのメブリュト・チャブシオール外相は記者団に対し、軍事作戦が完全に終わるのは、SDFが国境地域から撤退した時だけだと述べ、今回の停止はあくまでも一時的なものにすぎないと強調した。

「我々は軍事作戦を一時停止する。停戦はしない。この地域から(クルド人部隊が)完全に撤退すれば、我々は軍事作戦を止めるだろう」

チャブシオール氏は、トルコはクルド人部隊から重武装を取り除き、その攻撃拠点を破壊するという目標を達成したと述べた。

Turkish-backed Syrian fighters sit in the back of a truck in the Syrian border town of Tal Abyad on October 17, 2019

画像提供, AFP/Getty Images

画像説明, シリア国境の町アル・アブヤドに配備されたトルコが支援するシリア反体制派の戦闘員(10月17日)

トランプ大統領の反応

ペンス副大統領の発表に先立ち、トランプ大統領は、「トルコに関する素晴らしいニュースがある。ペンス副大統領とポンペオ国務長官による記者会見が間もなく始まる。エルドアン大統領に感謝する。何百万人もの命が救われる!」とツイートした。

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トランプ氏はその後、「この合意は、3日前には絶対にまとめられなかった。合意に至るためには『タフな』愛が必要だった。みんなよくやった。誇りに思う!」と付け加えた。

また、「必要なものだが、いささか型破りな道をたどる私についてきてくれて、アメリカを誇りに思う」と述べた。

書簡をごみ箱へ

ペンス氏とエルドアン氏の会談前日には、トランプ氏が即時停戦を求める書簡で、エルドアン氏に対し「タフガイの真似はするな。馬鹿な真似はするな!」と書いていたことが明らかになった。

この書簡について、エルドアン氏に近い関係者はBBCに対し、「エルドアン大統領は書簡を受け取り、要請内容を徹底的に拒絶し、ごみ箱に捨てた」と明かした。

追加制裁は発動せず

ペンス氏は、アメリカはトルコが軍事作戦を止めれば、既存の経済制裁を解除するだろうと述べた。一方で、合意の一貫として追加制裁は発動しないとしている。

民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長と民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、トルコの軍事作戦「停止」は「見せかけの停戦」にすぎず、エルドアン氏は何1つ諦めていないと述べ、経済制裁をめぐる政府の方針転換に強く反発した。

2人は、制裁解除は米国の外交政策への信頼性を深刻に損なうものだと主張した。

クルド人部隊の撤退は

シリアのクルド人政治家のアルダール・ヘリール氏は、サウジアラビアの国営テレビ局アル・アラビヤに対し、戦闘が終わることを歓迎したものの、SDFは暴力にさらされることがあれば自衛するだろうと述べた。

アメリカのジェイムズ・ジェフリー、シリア特別代表は、クルド人部隊が支配地域から撤退することに不満を示していることを認めた。

「我々は基本的に、経済制裁の切り替えをアメとムチに使い、YPGに撤退してもらうよう最善を尽くしている。YPGが同地域に留まれることを望んでいることは明白だ」

米軍撤退をめぐる批判

トランプ大統領が6日にシリア北東部からの米軍撤退を発表すると、トルコは9日、YPGが支配するシリア北部への進攻を開始した。

トルコの狙いは、同国がテロ組織と認定しているYPGの戦闘員を、安全地帯から完全に排除することだ。シリア内戦などでトルコ領内に避難してきたシリア難民360万人のうち、最大200万人をこの安全地帯に移住させたいとしているが、こうしたトルコの一連の動きは、クルド人に対する民族浄化だとの批判も出ている。

シリア北東部からの米軍撤退をめぐっては、過激派「イスラム国」(IS)掃討で重要な役割を果たし、アメリカに協力したクルド人を見捨てたとの非難の声が上がった。

トランプ氏は16日、クルド人は「天使ではない」と述べたほか、「トルコとシリアは国境で問題を抱えている。我々の国境ではない。我々がそのせいで命を失うべきではない」と、米軍撤退の正当性を主張した。