ジョンソン英首相、「新時代の夜明け」を歓迎へ イギリスはEU離脱をどう迎える
ボリス・ジョンソン英首相は、イギリスの欧州連合(EU)加盟最後の日となる1月31日、「新時代の夜明け」を歓迎する演説を行う予定だ。
イギリスは1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)、47年間加盟していたEUを離脱する。ジョンソン首相はその1時間前となる午後10時に、「これは終わりではなく始まりだ」と演説する。
また、EU27カ国との関係を断つことは「国家として本当に再生し、変わる瞬間」だと説明することになっている。
ただし、イギリスは31日午後11時から「移行期間」に入るため、直ちに変わることはあまりない。移行期間中のイギリスはほとんどのEU法を遵守し、予算も拠出するなど、イギリスは離脱前とほぼ同じ関係をEUと保つ。EU域内の自由移動も、12月末までは認められる。
イギリスは今年12月31日までに、EUとの通商交渉などを終えたい考え。
最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)によって「内向きになる」ことなく、「本当の意味で国際的で多様性に富んだ、外向きのイギリス」を作るべきだと訴えた。
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イギリスは2016年6月の国民投票で、52%対48%でEU離脱を決定した。当初は2019年3月31日に離脱する予定だったが、テリーザ・メイ前首相がEUと取りまとめたEU離脱協定案をイギリス議会が再三にわたって否決したため、延期された。
昨年7月に就任したジョンソン首相は「ブレグジットを実現する」というスローガンを掲げて12月に総選挙を実施。与党・保守党が過半数議席を獲得し、協定可決にこぎつけた。
「終わりではなく始まり」
ブレグジットを記念し、ジョンソン首相は31日午前にイングランド北東部サンダーランドで閣議を開く。サンダーランドは、2016年の国民投票で最初にEU離脱支持が多数と発表された選挙区だ。
ジョンソン首相はこの国民投票で、EU離脱運動の先頭にいた。31日に放送される演説では勝ち誇るのではなく、派閥を超えて団結する重要性を強調する。
首相官邸で撮影された演説で首相は、「最も大事なのは、これは終わりではなく始まりだということ」だと述べている。
「夜が明ければ、次の場面の幕が上がる。イギリスが国家として本当の意味で再生し変わる瞬間です」と首相は言う。
さらに、「あなたや家族の人生のチャンスが、イギリスのどの地域で育ったかに左右されるなど認めない、そんな新しい時代の夜明け」だと言い、「この瞬間から私たちは一致団結し、今までよりレベルアップする」と述べる。
ビッグベンの鐘は鳴らず
一方でEU残留派は、31日の午後3時から「EUに別れを告げる」ためにロンドンの官庁街(ホワイトホール)を行進する予定。
対するEU離脱派は、ブレグジットを祝う集会をウェストミンスターの議会前広場で行う。首相官邸のあるダウニング街では、EU離脱をカウントダウンする時計がプロジェクションマッピングで映し出される。
ホワイトホールでも建物がライトアップされ、パーラメント・スクエアでは全ての旗ざおにイギリス国旗ユニオン・ジャックが掲げられる。
1日からは、EU離脱を記念した50ペンス硬貨が流通する。
離脱推進派のマーク・フランソワ下院議員(保守党)は、23時のEU離脱に合わせてビッグベンの鐘を鳴らそうと募金活動を行っていたが、改修工事のためにこの計画は中止となった。
EU離脱を惜しむイベントも
ブリュッセルでは、EU機関の庁舎からユニオン・ジャックが取り外される。ただ、博物館には1枚が収納されるという。
ブリュッセルではすでに、観光スポットの「小便小僧」が、ユニオン・ジャックのベストを着たジョン・ブル(イギリスの典型とされる人物像)の格好に着せ替えられた。
また、市内中央の広場グランプラスは赤と白、青にライトアップされた。企画者は、イギリスとEU加盟国の変わらない友情を表したとしている。
2016年の国民投票でEU残留を支持したスコットランドでは、「スコットランドのために灯りをつけておいてください」と、31日に夜通しろうそくを灯すイベントが企画されている。
「親愛なるヨーロッパ、私たちはこんなこと選んでいない」とポスターなどで訴えるこのイベントは、アバディーンやダンディー、グラスゴー、スターリングなどの街で計画されている。スコットランドはEUに残れるよう、その道筋を残しておいてほしいとEUへメッセージを伝えるという。
また、スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相はこの日、スコットランドは「市民の大多数の意思を無視し、EUから引き離される」と演説する予定だ。
さらに、「スコットランドには平等で独立したEU加盟国として、より良い、輝かしい未来の見通しがある」と述べるという。
イギリスは「分かれ道にいる」
12月総選挙の大敗を受け4月に退任する労働党のコービン党首は、イギリスは「分かれ道にいる」と指摘している。
「世界でのイギリスの立場が変わるだろう。問題は、どの方向に行くかだ」
「我々は、本当の意味で国際的で多様性に富んだ、外向きのイギリスを作ることができる。あるいは内向きになって、信念や権利、基準と引き換えに、足早に決めた一方的で最悪一辺倒の通商協定をドナルド・トランプらと結ぶこともできる」
その上でコービン氏は、「EUやアメリカ、その他の国々と交渉する中で、雇用と生活基準、働く権利、そして消費者および環境の水準が確実に守られるように、労働党は行程ひとつひとつに責任を持つ政府を作るだろう」と述べた。
親EU派の野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首代行は、欧州と「できるだけ親密な関係」を築けるよう「戦い続ける」と話した。
また、「ハード・ブレグジットがイギリス国民に害を与えないよう、ダメージを最小限に抑える努力を続ける」と述べた。