トランプ米大統領「戦時下」の態勢と 新型コロナウイルス対策で

Trump gives press briefing

画像提供, Getty Images

アメリカのドナルド・トランプ大統領は18日、自分は「戦時下の大統領」だと述べ、アメリカは感染が拡大する新型コロナウイルスに「完全な勝利」を収めるだろうと誓った。トランプ氏はこの日、重要な医療用品の増産を民間企業に求めることができる、朝鮮戦争下の1950年に成立した「国防生産法」を復活させた。

ホワイトハウスでの記者会見で、新型ウイルスとの戦いについて、アメリカが戦時体制にあると考えているか問われると、トランプ大統領は「これは戦争だ」と述べた。

「私は、ある意味、自分のことを戦時下の大統領だとみなしている」

新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)をめぐっては、トランプ氏はアウトブレイクの初期段階では感染の影響を軽視していたとして非難されている。そのため、今週はこの非常事態に関するブリーフィングを連日行っている。

トランプ氏は、「我々は共に犠牲を払わなければならない。我々は全員一緒にこの問題に関わっているからだ。目に見えない敵は、いつだって最強の敵だ。(中略)だが、我々はこの目に見えない敵を倒す。我々が考えているよりも早期に倒し、完全な勝利を収めると思う。完全な勝利になるだろう」と述べた。

<関連記事>

アメリカではこれまでに9000人以上が新型ウイルスに感染し、145人が死亡している。

世界の感染者数は20万人以上、死者数は8700人以上に上っている。

「国防生産法」

朝鮮戦争下の1950年に成立した「国防生産法」は、国家安全保障に必要な製品の受注を満たすため、民間企業に増産を指示する権限を大統領に与えるというもの。

トランプ氏は会見後にツイッターで、「将来、最悪のシナリオ」に陥ったときにのみ発動させる方針だと述べた。

トランプ氏はまた、スティーブン・ムニューシン米財務長官が、新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)によって米国内の失業率が20%にまで上昇する可能性があると警告したことについて、「全く完全に最悪のシナリオ」だと述べた。

動画説明, 「具合が悪いんだけど、もしかして新型ウイルス?」 発熱、空ぜき、においや味が

米海軍の病院船派遣も

トランプ氏は、今後起こり得る病床不足を軽減するため、米海軍の病院船に対応にあたるよう求める方針とした。海軍病院船「USNSコンフォート」が、ニューヨーク港へ派遣されるとみられる。しかし米国防総省によると、「USNSコンフォート」は現在、ヴァージニア州でメンテナンス中という。

別の海軍病院船「USNSマーシー」は、西海岸へ派遣するための準備が進められている。

「中国ウイルス」は人種差別

トランプ氏はこれまで度々、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んでいる

この日の記者会見中、トランプ氏は「新型ウイルスは中国から来たんだ」と述べ、「中国ウイルス」という呼称は人種差別だとの指摘を一蹴した。

世界保健機関(WHO)は2015年、伝染病の名称決定に関する指針を発表している。

WHOは、「これまで、病気の名前が特定の宗教的・民族的コミュニティーに対する反感を引き起こし、渡航や貿易などへの不当な障壁を生み、家畜の不要な殺害を招いてきた」と指摘。2015年に流行した中東呼吸器症候群(MERS)の名称を批判している。

WHOは、伝染病の名称を決める上で避けるべき言葉として、地理的な位置(スペイン風邪など)、人名(クロイツフェルト・ヤコブ病など)、動物あるいは食品名(鳥インフルエンザなど)、文化や産業の名前や、過度な不安を引き起こす言葉などを挙げている。

動画説明, 1分で解説 新型コロナウイルスについて知っておくべきこと

18日の会見に先立ち、アメリカはカナダとの国境を事実上封鎖した。必要性のある渡航や商業移動は除外される。

トランプ氏はまた、新型ウイルスの拡大を防ぐために、特定の国からの人の流入を阻止する法律を発動させ、メキシコ国境を越えて入国する移民あるいは亡命希望者への新たな取り締まりを行うだろうと述べた。

米議員が新型ウイルス検査で陽性

民主党のベン・マクアダムス下院議員(45、ユタ州選出)が新型ウイルス検査で陽性反応が出たことが18日夜、明らかになった。

マクアダムス氏は、14日夜にワシントンへ戻った後、「軽度の風邪に似た症状」が出たという。すぐに自宅で自主隔離したものの、「症状が悪化し、発熱や空ぜきが出たほか、呼吸困難に陥った」としている。回復するまで、今後も自主隔離を継続するという。

17日に医師からウイルス検査を受けるよう指示を受け、18日に陽性の判定を知らされたと、同氏は声明で説明している。

民主党のリオ・ディアス=バラート下院議員(58、フロリダ州選出)も、18日に陽性反応が出たと発表した。

ワシントンの自宅マンションで自主隔離中のディアス=バラート氏は、「気分はずっとよくなっている。だが、新型ウイルスについて誰もが真剣に受け止めることが重要だ」とツイートした。フロリダへ州へ戻る予定はないという。

ディアス=バラート氏は、妻ティア夫人には持病があるため、感染の「リスクが非常に高い」と明かした。

米議会には高齢議員が多いことから、議員の間に不安が広がる可能性がある。

経済への影響は

トランプ氏は18日、上院で90対8で可決した新型コロナウイルス対策法案に署名した。無料のウイルス検査や有給の病気休暇、従業員数が500人以下の会社の従業員の家族休暇や病気休暇を認めることとなる。

病気休暇と家族休暇だけでも1050億ドル(約11兆4300億円)規模の費用がかかると推計されている。

また、最大1兆3000億ドル(約141兆円)規模の追加の景気刺激策が検討されている。米国民へ最大1000ドル(約10万7000円)の現金給付などの直接支援も盛り込まれる可能性がある。

こうした経済支援への取り組みが進められる中、18日のダウ平均は再び急落。トランプ政権発足以降の上昇幅がすべて帳消しとなった。

Presentational grey line
Coronavirus graphic on what you need to do

予防について知る

感染症について知る

在宅勤務・隔離生活について知る

Bottom of the web banner