イギリスでは貧困地域ほど死亡率高い=政府統計局 新型コロナウイルス

A nurse in protective wear taking a temperature

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英イングランドとウェールズでは、貧困地域に住む人の方が、新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」を発症した場合、死亡する確率が高いことが明らかになった。イギリス政府の国家統計局(ONS)が1日、分析結果を発表した

ONSによると、3月1日から4月17日にかけて、イングランドで最も困窮する貧困地域では人口10万人につき55.1人がCOVID-19関連で死亡したのに対し、最も裕福な地域では25.3人にとどまった。

同様にウェールズでは、最も貧しい地域では44.6人だったのに対し、最も裕福な地域では23.2人だった。

イングランド南西部はCOVID-19関連の死亡率が10万人あたり16.4人で、最も低かった。死亡率が最も高い行政区はいずれもロンドン市内で、ニューハムは144.3人、ブレントは141.5人、ハックニーは127.4人だった(いずれも10万人あたり)。

人口に対する死亡率は通常、貧困地域の方が富裕地区より高い。

ONSは新型コロナウイルスが、この傾向に拍車をかけているようだと指摘している。

マット・ハンコック保健相は1日、「懸念している問題で、詳しく検討している」と話した。

首相官邸で毎日開かれる新型コロナウイルスに関する政府会見で、ハンコック氏は、国内の様々な人口グループに新型ウイルスが異なる形で影響している様子を「できるだけ理解」するため、保健省が情報を分析していると述べた。

イギリス全体では、大勢が密集する都市部ほど人口に対する死亡率は高い傾向が出ている。首都ロンドンでは10万人あたり85.7人がCOVID-19が関係する形で死亡している。この死亡率は、次に高い地区より2倍近い。

ONSによると、3月1日から4月17日にかけてイングランドとウェールズで死亡した9万232人の死亡診断書が4月18日までに提出された。そのうち、2万283人がCOVID-19起因で死亡している。人口や年齢などを調整すると、イングランドとウェールズの全体では人口10万人あたり36.2人がCOVID-19が関係する形で死亡しているという。

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ONSのデータによると、イングランドで特に貧困が著しい地域では、男性の死亡率が高い。10万人のうち76.7人がCOVID-19が関係して死亡している。女性は10万人につき39.6人だという。

ONSの健康分析責任者、ニック・ストライプ氏は、「貧困レベルの高い地域では全般的な死亡率が他の地域より高いのは通常のことだが、これまでのところCOVID-19による犠牲は通常より多いようだ」と話した。

最大野党・労働党のジョナサン・アシュワース影の保健相は、ONS報告を受けて、新型ウイルスが不平等に乗じて多くの被害者を出していると問題視した。

「政府は、社会格差が健康不良の決定要因となる幅広い問題に取り組むため、包括的な戦略をもって、健康格差に取り組まなくてはならない」と、アシュワース氏は強調した。

ONSは今回の分析に、2019年に更新された重複剥奪指標を利用した。この指標は、特定地域の収入、就労率、犯罪発生率、疾病率や身体障害者の比率などを総合的に表す。

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英慈善団体「健康基金」のデイヴィッド・フィンチ上級フェローは、貧困地区の人の多くは狭い住宅に住んでいる可能性が高いため、新型ウイルス感染のリスクが高いと指摘する。

さらに、貧困地域の人は複数の慢性的基礎疾患を患っている可能性が高いため、感染後に重症化するリスクも高いという。

動画説明, 新型ウイルス被害は「平等ではない」とBBCキャスター 低所得者ほど感染と

ONSとは別に、調査団体の英財政研究所(IFS)は、イングランドとウェールズのCOVID-19患者の内、アフリカ系イギリス人が白人の3倍のペースで死亡しているという調査結果を発表した。

IFSによると、COVID-19被害が特に深刻な地域では、少数民族系の住民の割合が高い傾向にあるという。