【解説】 集中治療とは? どういう人に必要? 新型コロナウイルス

ミシェル・ロバーツ健康担当編集長、BBCニュースオンライン

Hospital bed

画像提供, Science Photo Library

イギリスのボリス・ジョンソン首相は6日夜、新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)が悪化し、現在はロンドンのセント・トマス病院の集中治療室(ICU)で手当てを受けている。

首相官邸は声明で、自宅待機よりも複雑な治療が必要に鳴った場合に備えて、医師の助言をもとに念のための措置だとしている。

そもそも、集中治療とは?

ICUとは、重症患者を詳細にモニタリングし、治療を施すために設けられた特別な病室のこと。

通常の病室よりも患者が少ない一方で、医療従事者の数は多く、時には1対1で看護・治療が行われる。

また、モニタリングには最先端の設備が利用される。

イギリスの国民保健サービス(NHS)がロンドン東部に新設した、新型コロナウイルス患者専用の「ナイチンゲール病院」には、集中治療用のベッド4000床が用意されている。

ナイチンゲール病院のICUでは、各病床に酸素や医療用ガスの供給口や、人工呼吸器などが備え付けられている。

ベッドにはリクライニング機能があり、床ずれを防ぐための空気ポンプや毛布を暖める機能などもある。

Bed bay in NHS Nightingale
画像説明, ナイチンゲール病院の一般的な病床。酸素吸入器(oxygen)、人工呼吸器(ventilator)、床ずれ防止用エアマットレスの調節器、毛布を暖める装置などがついている
Presentational white space

集中治療を必要とするのは

こうした治療が必要になる理由はさまざまだ。

大きな手術からの回復でICUに入る患者もいる。一方、交通事故などで大けがを負うなどした人もICUに入る。

ジョンソン首相は5日夜、発熱などCOVID-19の症状が続いているとして入院。その後も症状が改善しないため、予防措置としてICUに入った。

新型ウイルスは肺を攻撃する場合があり、ジョンソン首相も呼吸がしづらくなっている様子。酸素供給装置をつけているが、人工呼吸器ではないという。

どんな治療が行われる?

新型ウイルスの症状でICUに入った全員が、呼吸を人工呼吸器に頼らなければいけないわけではない。

人工呼吸器なしで肺に酸素を送り込む「持続的気道陽圧(CPAP)装置」で呼吸をサポートする場合もある。人工呼吸器では患者に強い鎮静剤を打ち、気道に管を挿入しなくてはならないが、CPAP装置はこれに比べて侵襲性が低いのが特徴だ。

ICUでは、さまざまなモニタリング用の機器に、身体を管やケーブルなどでつながれることになる。

また、点滴静脈注射から薬や栄養などを与えられる。

首相の入院しているセント・トマス病院では、これまでにもICUで新型ウイルスの患者を治療してきた。重篤な患者には「体外式膜型人工肺(ECMO)」という生命維持装置を使うこともある。イギリス全土を見ても、この装置はたった数基しかないという。

集中治療からの回復

患者が快方に向かうと、ICUから別の病棟へと移動となる。これにより、集中治療を必要とする別の患者に病床が空けられる。

ICUの滞在期間は、数日の場合もあれば、数週間、数カ月になる場合もある。