携帯料金の値下げにつながるかもしれない「eSIM」とは?

 家計の大きな負担になっているといわれる、携帯電話スマートフォン(スマホ)の通信料金の値下げに向け、総務省は「eSIM」の普及を図るという。この総務省の指針を見越してか、端末に依存せずにeSIMサービスを提供している2社の一つ、楽天モバイルは今年10月12日申込み分から、これまで1回税別3000円を請求していたSIM交換・eSIM再設定手数料を無料化した。

 とはいえ、そもそもeSIMとは何かよく分からない人が多数だと思われるので、改めて説明しよう。今年1月に掲載した「年末には誰でも説明できる? 2020年の注目ワード3選『eSIM/WLTC/Wi-Fi 6』」もあわせてお読みいただきたい。

・年末には誰でも説明できる?
 2020年の注目ワード3選「eSIM/WLTC/Wi-Fi 6」
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200121_154669.html

SIMカードの抜き差し不要 機種変更が楽になるeSIM

 eSIMは、embedded(組み込み)SIMの略称。IIJ楽天モバイルのほか、NTTドコモも「キッズケータイ SH-03M」「ワンナンバーフォン ON 01」など、eSIM専用端末に限り、eSIM形式でサービスを提供している。
 
個人向けにeSIMサービス「データゼロ プラン」を提供するMVNOのIIJmio

 iPhone 12/11シリーズ、iPhone SE(第2世代)、iPad Pro Wi-Fi +CellularモデルSIMフリー版)など、AppleのeSIM対応製品の場合、SIMカードとeSIMの二つの通信サービスを利用できる仕様なので、電話とデータ通信で異なる通信事業者を利用し、通信料金の合計を抑えるといった活用も可能だ。なおこの設定の場合、請求は二つに分かれる。
 
Google Pixel 3a以降はSIMカードとeSIMのデュアルスロットに対応。
ただし、5G対応機種はデュアルスロット利用時は4G通信限定となる

 用途・データ残量に応じた使い分けなど、使いこなしに知識が必要なeSIMの普及は、正直かなりハードルが高いと思われるが、もし、大手3キャリアが楽天モバイル同様、手数料完全無料でeSIMサービスを提供するなら、少なくとも、販売中の「 Google Pixel 5」「Google Pixel 4a」「Rakuten mini」「Rakuten BIG」、海外発表の「Galaxy Z Fold2」など、増えつつあるeSIM対応のSIMフリーAndroidスマホの初期設定が楽になり、事務手数料分だけ確実に負担は現状より下がる。
 
eSIMサービスに力を入れる楽天モバイルは「SIM交換(sSIM再設定)」を
10月12日の申し込みから無料化

 またeSIMなら、機種変更時など、別のスマホに本人自身がSIMカードを差し替えるにあたり、作業中のカード紛失・逆方向にカードを差し込んだための動作不良(取り出し不可)といった理由でキャリアショップに駆け込む必要がなくなるので、オンラインショップでのスマホ購入が心理的に楽になるのは間違いない。eSIMの普及によって、現状の来店型ショップ・窓口運営の効率化による間接的な通信料金値下げは、確かに期待できそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)