不登校支援、まずは子ども第一に!

不登校の小中学生は2015(平成27)年度に約12万6,000人を数え、3年連続の増加となるなど、依然として深刻な課題です。たとえ学校に行けないとしても、適応指導教室やフリースクールなど、何らかの学びの支援を行う必要があることは、言うまでもありません。
昨年12月には、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)も制定され、施行を迎えました。そうしたなか、文部科学省の「フリースクール等に関する検討会議」は1月30日、最終報告を固めました。学校外で学ぶ子どもたちに、どんな支援が必要なのでしょうか。

法律は国に「基本指針」策定義務付け

議員立法により成立した教育機会確保法は、当初、保護者が提出した計画を教育委員会が認めることで、フリースクールなどに通っても「普通教育を受けさせる義務」(憲法26条)を果たしたとみなすことも検討されましたが、与野党で調整した結果、全児童生徒が安心して学校教育を受けられるような環境の確保や、個々の不登校児童生徒の状況に応じて必要な支援を、国や地方自治体に努力義務として課すにとどめました。

ただし、基本理念の中で、不登校児童生徒(教育を十分に受けていない者)の意思を十分に尊重して教育機会を確保すべきことや、フリースクールなど「民間の団体」とも連携すべきことをうたっています。文部科学相には、教育機会確保の施策を総合的に推進するための「基本指針」策定を義務付け、地方自治体にも、学校外で学ぶ児童生徒やその保護者に対して、必要な情報の提供や助言などを行うよう求めました。経済的支援についても速やかに検討し、必要な措置を講じるとしています。

自治体も民間団体などと連携を

そうした議員間の調整の一方で、教育再生実行会議の第5次提言(2014<平成26>年7月)を受けて、15(同27)年1月から設置されたのが、同検討会議です。NPO法人東京シューレ(東京都北区)の奥地圭子理事長らフリースクール関係者も委員に加え、14回にわたる会合を重ねた他、昨年7月の審議経過報告をパブリックコメント(意見公募手続)に掛けるなどして、最終報告にこぎつけました。なお、同検討会議と両輪で設けられていた「不登校に関する調査研究協力者会議」は、昨年7月に最終報告をまとめています。

同検討会議の最終報告は、学校の教員が児童生徒と関わりを持ち続けたり、特別な教育課程を編成できる制度を活用したりするなど学校側の対応を求める一方、学校以外の場で学ぶ児童生徒を支援するため、国や自治体に、(1)民間の団体等と連携した支援の充実(2)家庭にいる不登校児童生徒への支援の充実(3)支援のための体制整備……を図るよう求めています。

とりわけ、児童生徒にとって重要なのは、社会で自立的に生きていくための基礎を培うことだと強調していることが注目されます。社会的自立への支援は、不登校協力者会議も含めた基調でもあります。

考えてみれば、学校教育を受けさせることを保護者に義務付けているのも、教育を受ける権利が保障されている子どもの、社会的自立のためです。そのためなら、公的な学校か否かは問題ではないのかもしれません。もちろん「小さな社会」である学校の重要性が失われるものではありませんし、公教育の見直しも欠かせません。子どもの「最善の利益」(子どもの権利条約)を第一に、関係者の総力を挙げた努力が求められます。

※義務教育機会確保法
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19001034.htm

※フリースクール等に関する検討会議 最終報告
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/107/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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