ホンダ:英国の四輪工場閉鎖、2021年に-業界の急激な変化に対応
鈴木偉知郎-
八郷社長「競争力の観点から難しいと判断、ブレグジットは無関係」
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クラーク英民間企業相「衝撃的な決定」-ホンダはトルコ生産も終了
ホンダは19日、四輪車を生産する英国のスウィンドン工場(ウィルシャー州)を2021年に閉鎖すると発表した。電動化など世界の自動車産業を取り巻く急激な環境変化に対応するため、生産体制を見直す一環としている。
ホンダの発表によると、同工場は年産15万台の規模を持つ。約3500人の従業員には同日に閉鎖の計画に関して説明し、労使間での協議を開始した。また、従業員1100人を抱えシビックのセダンタイプを生産するトルコの工場も21年中に終了することを決めたとしている。欧州の地域本社は引き続き英国に置くという。
ホンダの八郷隆弘社長は都内の本社で会見し、英国の工場閉鎖に関して「欧州域内での生産は競争力の観点から難しいと判断した」と述べ、同工場での生産車種については、北米など他地域で生産することを検討しているとした。シビックの次期モデルの生産拠点を決定するタイミングだったとし、英国の欧州連合(EU)離脱問題とは関係ないとの考えを示した。
一方、ホンダの正式発表を受けて英国のクラーク民間企業相は工場閉鎖は「衝撃的な決定」だとの声明を発表。「同工場で働く多数の熟練労働者や献身的な従業員、その家族、サプライチェーンで雇用されている全ての関係者にとって特に厳しい打撃となる」と指摘した。
ホンダのウェブサイトによると、同工場の第1工場は1992年10月に生産を開始。現在は「シビックハッチバック」や「シビックタイプR」を生産する。01年7月には第2工場でも生産を開始。10万台の年産能力があるが、現在は休止中となっている。
八郷社長は「今回の決定は非常に残念な思いでいっぱい」とした上で、英工場の従業員にはできる限りのことをやっていきたいと話した。また、部品メーカーなどの取引先にも「かなりの影響」が出ることを想定しているという。欧州事業からの撤退は考えておらず、今後は主に中国や日本からの輸出で対応し、強化をしていきたいと述べた。
ホンダの英国工場閉鎖に関しては英スカイニューズが18日に先に報じ、ノーススウィンドン選出のジャスティン・トムリンソン英下院議員が報道内容を認め、ホンダの決定は世界市場のトレンドに応じたもので英国のEU離脱とは無関係だとツイートしていた。また、「21年まで雇用削減や生産変更は一切見込まれていない」とし、「欧州市場の全ての生産は21年に日本に集約される」とも記していた。
英国の自動車業界は、EU離脱に絡む経済の減速や関税が設定される可能性のほか、3月29日に予定される離脱後の供給面のボトルネックなどの問題に苦慮している。
トヨタ自動車は英国が合意なきEU離脱にいたった場合、大きな影響が出ると見込んでいる。広報担当の新実真木氏は、効率性の高い物流体制を取っていることもあり直ちに重大な影響を及ぼすとの見通しを示した。離脱期限の3月29日以降は「国境で相当な物流の遅延が発生し、それを受けて数日から数週間の工場の操業停止に陥る」ことが見込まれるという。
ホンダは17年10月に国内生産体制の再編計画を発表。埼玉県の狭山工場での生産を停止し、21年度をめどに最新の生産技術がある寄居工場に集約して国内3工場体制とすることを明らかにしていた。