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Photographer: Troy Harvey/Bloomberg
Cojp

新ゲームや中国期待で高騰の任天堂株、空売り投機家の影消えず

  • スイッチの廉価版、今年6月末までに発売見通し-関係者
  • 株価急騰の19日に空売り比率は上昇、決算発表見据え強弱観対立

任天堂の株価は、主要ゲーム機の新型モデルの発売期待や中国市場への参入を材料に今年の最高値を付けた。しかし、先行きの反落を見込んで空売りを仕掛けるヘッジファンドなど投機家の影はなお消え去っていない。

  任天堂株の年初来上昇率は23日時点で27%と、2015年以来の好スタートとなっている。特に、中国広東省当局が同国インターネットサービス大手のテンセント・ホールディングス(騰訊)に対し、任天堂の家庭用ゲーム機「スイッチ」の販売を認めたため、19日の取引では14%高と急騰。2年7カ月ぶりの上昇率を記録した。

Nintendo President Shuntaro Furukawa Attends Business Strategy Meeting

今期の業績計画発表が迫る任天堂の古川社長

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  一方、IHSマークイットのデータによると、任天堂の発行済み株式数に対する空売りの比率はメルビン・キャピタル・マネジメントを含むヘッジファンドが売り姿勢を強める前の1年前の0.7%から大きく上昇し、一時は2%を超えた。直近では15日に1.53%まで低下したが、株価急騰を受けた19日時点で1.78%まで再度上昇した。

  強弱観の対立は、25日に任天堂の決算発表と古川俊太郎社長の会見を控えていることから起きている。空売り派は、アナリストらの期待ほど業績が拡大しないとのシナリオに賭けている。

  任天堂は1月、年末商戦の伸び悩みを理由に、19年3月期のスイッチのハード販売目標を2000万台から1700万台に下方修正した。株価は昨年1月に08年以来の高値となる4万9980円を付けた後、スイッチの販売低調を織り込む形で一時2万7055円まで下げた経緯がある。古川社長にとって、前期のような販売台数予想の見誤りだけは避けなければならない。

  大和証券の鈴木崇夫アナリストは、「任天堂は現状のトレンドを誰よりもよく理解している」と指摘。スイッチの新型ハードの動向は不確かだが、会社側は販売数を予想に入れるはずで、「われわれはスイッチの増加見通しを期待すべきだ。減少見通しとなれば、ひどいことになる」と話している。

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  ブルームバーグがアナリスト10人の見通しをまとめたところ、前期のスイッチのハード販売台数は平均で1738万台、今期は1850万台に増加すると予測した。任天堂は今月、スイッチと連動してバーチャルリアリティ(VR、仮想現実)を楽しめる段ボール製作キット「ニンテンドーラボVRキット」を発売した。

  また、事情に詳しい関係者2人が匿名を条件に明らかにしたところ、任天堂は現在のスイッチより価格が安い廉価版モデルを発売する見通し。そのうち1人によれば、発売時期は6月末までになる見通しだ。複数の関係者によると、現行のスイッチもやや改善されるが、より高性能な新型の発売準備は進んでいない。

  ソフト面では、人気タイトルの「ポケットモンスター」「どうぶつの森」「ルイージマンション」でスイッチ向け商品の登場を控える。ただし、スイッチの中国市場での販売については不透明な部分がある。ニコ・パートナーズのアナリストのダニエル・アフマド氏によれば、任天堂はさらに中国側の認可を得る必要があり、ソフトウエアも同国政府や出版、ラジオ、映画、テレビの承認が必要としている。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の村上宏俊シニアアナリストは、「市場は世界最大の中国ゲーム市場の掘り起こしに期待先行だが、現実は厳しい」と指摘。既にモバイル、パソコン中心の市場が形成されている中国での家庭用ゲーム機の需要は限定的とみる。その半面、任天堂の有力キャラクターを使ってテンセントとモバイルゲームを共同開発し、展開すれば「成長ポテンシャルは大きい」との見方も示した。

  ブルームバーグがまとめたアナリスト予想では、19年3月期の営業利益は会社計画の2250億円に対し2599億円。20年3月期は3520億円への増加が見込まれている。

原題:Nintendo’s Big Rally on China Prospects Hasn’t Scared Off Shorts

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