Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
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日銀がフォーワードガイダンス修正、20年春頃まで長短金利水準維持
日高正裕、藤岡徹
更新日時
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日銀適格担保の要件を緩和、ETF貸付制度の導入も検討へ
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物価・成長率見通しを下方修正、21年度も2%物価目標に届かず
日本銀行は25日の金融政策決定会合で、政策金利のフォワードガイダンス(指針)について「当分の間、少なくとも2020年春ごろまで現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」と明確化した。長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針は維持した。
フォワードガイダンスの明確化は、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえた措置。片岡剛士、原田泰両審議委員はガイダンス見直しと政策運営方針に反対した。四半期に一度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)は、輸出や生産の減速を背景に成長率を中心に下方修正され、2%物価目標は3年後も達成できない見通しが示された。
長期金利がゼロ%程度で推移するよう国債買い入れを行い、ある程度の金利変動を許容する方針と、マイナス0.1%の短期金利を維持した。指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も従来通り。
同会合ではまた、円滑な資金供給や資産買い入れと市場機能の確保のため、適格担保の拡充などを決めた。企業債務の信用力について外部格付けでBBB格相当以上に緩和するほか、日銀が保有するETFを市場参加者に一時的に貸し付けることを可能とする制度の導入を検討する。
長短金利操作(賛成7反対2) |
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資産買い入れ方針(全員一致) |
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フォワードガイダンス |
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展望リポート |
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エコノミストの見方
ソニーフィナンシャルホールディングスの菅野雅明チーフエコノミスト(今会合でのフォワードガイダンスの修正を予想):
- 時間軸はもっと長く、例えば来年夏や秋など1年くらい先になると思っていた。「20年春ごろまで」というのは「当分の間」という表現を言い換えただけだが、これで日銀がよりハト派的になったと市場が受け止めているのであれば、日銀の作戦勝ちだろう
- フォワードガイダンスは本来、原田委員が主張するように物価指標にひも付ける方が望ましいが、2%物価目標達成が非常に困難でそれができなかったので苦し紛れの選択だろう
- 今会合の最大のポイントは、初めて示された21年度の物価見通しが1.6%と4月時点の3年先見通しとしては異次元緩和開始後、最も低い水準となったことだ。見通しが下方修正された20年度だけでなく、据え置かれた19年度も委員の見通しは全般に下方修正されている
- それにもかかわらず日銀は何もやらないのか、という批判を受けないように、フォワードガイダンスの明確化と適格担保の緩和でハト派色を出したかったのだろう。こうした措置により緩和度合いが強まるかは未知数だ
IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミスト:
- 実際に変わったのは適格担保の緩和などの諸措置の部分だが、それによって市場が大きく反応するほどのインパクトはない
- 言葉としては強く出ているが、日銀としてそれほど大きな手段がない中で、今のところまずはできること、金融システムに大きく影響が出ない何かを探して出てきたのかなという感じがする。全体的に影響は限定的だろう
- 日銀の買い取っているETFの金額が非常に大きくなってきていることが問題になっていた
ブルームバーグがエコノミスト48人に行った事前調査では大勢が現状維持を予想していた。午後3時半に黒田東彦総裁が定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は5月10日、「議事要旨」は6月25日に公表。
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