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日本とEU、米が自動車関税猶予でもぬか喜びに終わるか

  • トランプ政権は日EUに対米輸出制限を求める案を検討中
  • 対中国の場合のように交渉中でも関税を発動する可能性も

トランプ米大統領が自動車輸入関税の発動を先送りする見通しが明らかになり、日本や欧州の自動車メーカーの間にはいったん安堵(あんど)感が広がった。だが、安心するのはまだ早いかもしれない。

  ブルームバーグが閲覧した大統領令の草案によれば、トランプ政権は日本と欧州連合(EU)からの自動車・同部品輸入に関し、対米輸出を「制限ないし規制」することに応じるよう日本とEUに求めて180日間の猶予を与える案を検討している。問題なのは、トランプ大統領の計画が自動車輸入を米国家安全保障への脅威だと結論付けていることと、関税賦課を猶予する代わりに求めている輸出制限措置が受け入れられるのは難しそうなことだ。

President Trump Delivers Remarks On Modernizing Immigration System

トランプ大統領(5月16日)

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  世界貿易機関(WTO)のルールは輸出自主規制を禁じており、EUそして特にフランスなどの加盟国は、国際ルールに則った秩序とWTOルールに反する米国との取引には一切反対すると表明している。

  ビジネスヨーロッパ(欧州経営者連盟)の国際関係担当ディレクター、ルイザ・サントス氏は「EUが割当枠など数量規制を受け入れる可能性は極めて低い」とし、「WTOにかなりの圧力がかかっている現状で、数量規制を受け入れればWTO体制に追い打ちをかけることになるため、EUとしてはその責任を負いたくないだろう」と説明した。

  EUの行政執行機関、欧州委員会はトランプ大統領の決定が公表されるまではコメントを控えるとした。

  昨年の米鉄鋼・アルミニウム関税を巡る米欧対立の際には、関税割当枠であるならば容認可能とする姿勢をEUが示唆したが、結局折り合うことができず、米国は関税賦課に踏み切った。当時との違いは、米国とEUが現在、工業製品の関税引き下げに向け正式に交渉を進めており、双方とも協議が続いている間は追加関税を導入しないとしている点だ。

  しかし、トランプ大統領は中国との貿易交渉が続いている中でも対中追加関税の引き上げをためらうことはなかった。また大統領は昨年、EUについても「中国とほとんど変わらないくらい悪い」と発言していることから、欧州の同盟国を特別扱いするという保証はない。

  交渉中は貿易摩擦をエスカレートさせないと米国と合意を交わしているのは日本も同じだ。菅義偉官房長官は16日の定例会見で、「昨年9月の日米首脳会談で、貿易交渉の協議が行われている間は共同声明の精神に反する行動を取らず、自動車およびその部品について追加関税が課されることはないと直接確認している」と述べた。

  茂木敏充経済再生相は17日の記者会見で、米国が自動車の輸出制限を日本に求めることはないとライトハイザー米通商代表部(USTR)代表に確認したことを明らかにした

Blow to the Sector

Germany is the EU country with car manufacturing sectors most exposed to direct demand from the U.S.

Source: World Input Output Database (2014), Bloomberg Economics

原題:EU, Japan Reprieve From Trump Car Tariffs May Be Short-Lived (3)(抜粋)

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