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Photographer: Takaaki Iwabu/Bloomberg
Cojp

生まれたての日本ハイイールド債市場、銀行が押しつぶす (訂正)

訂正済み
  • 銀行は低格付け企業への最低水準金利での貸し付けにやぶさかでない
  • 投資基準緩和でもアイフル債の後に発行されたハイイールド債はない

アイフルが今年、日本企業として初の投資適格級を下回る社債(ハイイールド債)を国内で公募発行した。これは利回りに飢えた円資産投資家にとって小さな希望の光だった。

  アイフル債は年金基金や生命保険会社に希望を与え得るものだ。計7兆2000億ドル(約766兆円)余りを運用するこれらの業界にとって、日本のハイイールド債市場は3年以上に及ぶマイナス金利の苦痛を和らげる可能性を持つ。国債利回りが過去最低へと向かう今、リターン確保はかつてない急務となっている。

  SMBC日興証券金融経済調査部の阿竹敬之課長は、「巨額の資金を運用する日本の生命保険会社や年金基金は、超低金利・マイナス金利下で利回りを求めて必死になっている」と指摘。「ハイイールド市場が誕生・拡大すれば、投資家 にとっては歓迎すべきことだろう」と述べた。

  しかしこの希望は、利回りを求めるもう1つのグループによって吹き消された。日本の銀行だ。巨額の預金を抱えわずかなマージンにも血眼の日本の商業銀行は、ジャンク級(投機的格付け)と見なされるどんな企業に対しても最低水準の金利で貸し付けるのにやぶさかでない。

Japanese banks have a near-record amount of unlent deposits

  実際、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内投資基準の緩和にもかかわらず、アイフル債の後に発行されたハイイールド債はない。

  GPIFからの委託で投資するマニュライフ・アセット・マネジメントの押田俊輔シニア・クレジット・アナリストは、ハイイールド債発行の可能性があると見込んだ複数の企業と面談したが、特段成果はなかったという。「一言でいうと、銀行だ。結局、銀行が良いレートで貸し出すので、債券を発行する必要が無い」と同氏は話した。

  日本銀行政策委員会審議委員の鈴木人司氏は8月29日の熊本県金融経済懇談会で、「金融機関においては、信用リスクが相対的に高いミドルリスク企業向けの貸出や、外国債券、内外の投資信託等への投資を積極化する動きがみられている」とした上で、「このため、将来的に景気やクレジットサイクルの局面変化が生じた場合に、貸出先企業の経営悪化が信用コストの増加に繋がる惧れが高まっている」と語った。

  SMBC日興証券によると、地銀が抱える不良債権は前会計年度に、8年ぶりに3000億円を突破した。日本銀行は4月に公表した金融システムレポートで、地域⾦融機関による「相対的に信⽤⼒の低い」企業への融資はもはや、リスクに見合った利鞘を確保しにくい状況が続いていると指摘していた。

  アイフルのハイイールド債発行も例外的なものだったと見なすことができる。同社の担当者によれば、起債の目的の一つは、10年前に破綻の危機に瀕した同社が市場での資金調達が可能だということを示し、銀行との交渉での立場を強くすることだった。ハイイールド債発行市場の見通しは明るくなさそうだ。

原題:Nascent Japan Junk Bond Market Crushed by Banks Hungry to Lend(抜粋)

(第3段落の阿竹氏の肩書きを課長に訂正します)
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