新型コロナウイルス、クルーズ船で新たに41人感染-厚労省
延広絵美、広川高史-
チャーター機第4便で湖北省の邦人ら198人帰国、中国籍配偶者含む
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新たなクルーズ船感染者は全員乗客で日本人21人-集団感染は計61人
新型コロナウイルスの集団感染が発生しているクルーズ船で、新たに検査結果が判明した171人のうち41人の陽性が確認されたと厚生労働省が7日、発表した。陽性は検査対象の273人中61人となった。うち1人は重症で持病があった。これを含めた国内の感染者数は計86人。中国湖北省からチャーター機で同日入国した198人のうち4人が体調不良で搬送された。
加藤勝信厚生労働相は7日の記者会見で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号内での集団感染について最初に判明した香港の男性からどう拡大したか分析すると述べた。クルーズ船の乗客・乗員の船内待機は5日からの14日間で、感染者の濃厚接触者以外でも高齢者や持病のある人についてはウイルス検査を検討しているという。厚労省によれば、下船が可能になるのは19日以降。
新たに確認された感染者は全員乗客で20代から80代まで。日本人は21人。東京都と埼玉、千葉、神奈川、静岡各県の協力を得て感染症病棟のある医療機関に搬送する。厚労省は日本国内の感染者について症状のない人も含め25人としており、クルーズ船の乗船者を除いている。加藤氏は世界保健機関(WHO)もクルーズ船内の感染を国内の発生と分けて判断していると説明した。
厚労省の担当者によると、残る乗船者全員の検査は実務的に難しい面があり、有症状者を優先的に検査を行っているという。いったん陰性となった人に追加検査を行うかどうかについては現時点では検討中。何人まで検査をするかは決まってない。同船には乗員・乗客合わせて約3700人が乗船していたが、この日までに検査結果が判明したのは273人。
同船に対しては、防衛省が6日、自衛隊が乗客らへの生活、医療支援を行うと発表。クルーズ船内に医官らを派遣する。
7日の東京株式相場は報道を受けて下落に転じ、日経平均株価は一時前日比114円安まで下げた。前日の大幅高による高値警戒感が台頭する中、新型ウイルスの感染拡大が懸念された。終値は前日比0.2%安。
一方、新型コロナウイルスが流行している中国湖北省在住の邦人らを帰国させるためのチャーター機の第4便は7日午前10時12分、羽田空港に到着した。外務省によると、搭乗者は中国籍の配偶者らも含め198人。菅義偉官房長官は午後の記者会見で、羽田到着後に4人が体調不良のため医療機関に搬送されたことを明らかにした。
チャーター機の第1便から第3便では合わせて565人が帰国しており、9人の感染者が確認されている。うち4人には症状がない。湖北省に残っている帰国希望の邦人は残り数人だが、茂木敏充外相は7日、第5便の派遣も含めて全員が帰国できるよう今後も調整することを明らかにした。
別のクルーズ船
日本政府は1日から、感染が確認できていない場合でも14日以内に湖北省滞在歴がある外国人や同省発行の中国旅券を所持する渡航者は特段の事情がない限り、拒否する措置を実施。法務省によると、同措置により5日までに16人の入国を拒否、4人が上陸申請を取り下げた。
安倍晋三首相は6日、政府の対策本部会合で、香港から日本国内に向かって出発したクルーズ船「ウエステルダム」号に乗船している外国人についても、特段の事情がない限り入国を拒否する措置の対象とする方針を表明。新型コロナウイルス感染症を発症した恐れのある人が確認されたのが理由で、今後も同じような事案が分かった場合は同様の措置を取るという。入管難民法に基づく措置で、菅官房長官は同船には日本人5人が乗船していると述べた。
ウエステルダム号の航行履歴
ただ、同船を運航する米カーニバル傘下のホーランド・アメリカ・ラインは、ウエステルダム号で検疫は実施されておらず、「現時点で新型コロナウイルス感染例は確認されていない」と発表した。
同船の乗客、スティーブン・ハンセン氏(バンクーバー出身)は電子メールでの問い合わせに対して、「私たちの最大の懸念は、いったんどこかの港、恐らくグアムだろうが、そこに受け入れられた後、どう扱われるかだ。カナダ国籍の私ら夫婦はどうなるのか、隔離されるのか、国外退去処分になるのか、誰にもわからない」と回答した。
一方、安倍首相は7日午前、自民党の岸田文雄政調会長らと会い、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた中小企業対策などを柱とする提言を受けた。首相は今後の対応について「来週にも緊急対策を取りまとめ、速やかに予備費を活用して順次実行していきたい」と表明。「観光など地域経済への影響についても十分に目配りをした、万全の適切な対応をしていきたい」とも述べた。官邸が首相発言の動画をウェブサイトに掲載した。
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