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東京五輪延期の公算高まる、4週間内にIOC結論-安倍首相容認

更新日時
  • IOCが緊急理事会開催後に声明、中止の検討ない
  • 今現在、世界はオリンピック開ける状況にない-安倍首相
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Photographer: FABRICE COFFRINI/AFP

7月24日から開催予定の東京五輪・パラリンピックが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、延期される可能性が一気に高まってきた。国際オリンピック委員会(IOC)が延期を含めた予定変更を検討すると発表したのに続き、安倍晋三首相や小池百合子東京都知事も延期を容認する姿勢を打ち出したためだ。  

  東京五輪の延期を求める圧力が強まる中、IOCは22日、電話会議方式で緊急理事会を開催。「4週間以内に結論に至ることを確信している」との声明を発表した。大会中止は検討されないとした。

  IOCは声明で、大会組織委員会や東京都、日本政府、各国競技団体などと今後協力していく予定だとし、メディアパートナーや五輪関連で数十億ドルを拠出する最高位スポンサーからのコミットメントについても探るとしている。延期の場合の開催時期は明らかになっていないが、カナダのオリンピック委員会などからは1年延期論が出ている。

Tokyo 2020 Olympic Flame Arrives Japan

宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地に到着した東京五輪の聖火(3月20日)

  安倍首相は23日の参院予算委員会で、「今現在オリンピックは開けるのかといったら世界はそんな状態ではない」と発言。今後の4週間でIOCが一定の方向性を示してくれるものと期待しているとし、「場合によっては私自身の考え方についてもバッハ会長にお話させていただく機会があればと思っている」と述べた。 

  東京都の小池知事も同日、記者団から延期を容認するのかと問われ、「4週間かけてさまざまなシナリオを検討される。その中にはその言葉も入ってくるのではないか」と述べた。可能なシナリオについてIOC、組織委員会とも協議していく考えも示した。NHKがウェブサイトに小池氏の発言を動画で掲載した。

なるべく早く判断

  安倍首相は「中止は選択肢にはない、この点はIOCも同様だと考えている」と指摘。IOC緊急会合に先立ち、自らの考えを組織委員会の森喜朗会長を通じてバッハIOC会長に伝えたことを明らかにした。また、「IOCが判断することであり、東京都のお考えもある」としながらも、「私もなるべく早く判断した方がいいと思う」との認識を示した。

  森会長は23日に都内で会見し、昨夜にバッハ会長らとビデオ会議を開催し、今後4週間かけて大会延期の具体的な方針を定めるほか、中止については議論しないことで合意したことを明らかにした。

  いつまで延期するのかや延期で発生する追加コストの規模、使用する競技場などの空き状況などが今後の協議での検討課題になると述べた。組織委員会としては、延期となった場合、2020年中の開催を最優先したい考えも明らかにした。

  120年以上続く五輪史上、夏季大会は戦争でこれまで4度中止になったことがあるが延期になった例はなく、東京五輪が延期されることになれば、初めてとなる。  

  日本政府はこれまで、予定通りにしっかりと開催できるように準備し、それに向けて連携していくとして、あくまで7月開催を目指す方針を示していた。欧米での新型コロナの感染が急拡大したことを受け、トランプ米大統領が12日、1年延期に言及。競技団体などから再考を促す意見も相次いでいた。

完全な形で実施

  安倍首相は先週行われた主要7カ国(G7)首脳のテレビ会議で「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして完全な形で実施したい」と発言。その後の国会答弁では、アスリートや観客にとって「安全で安心できるものでなければならない」と述べた。

  日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は23日、記者団に対し、延期を決定する場合には関係各所から理解を得る必要があり大変なこととした上で、「安全が確保できないのであればそれ以外の選択肢はない」とコメントした。選手や指導者など関係者が大きな不安を抱いていることから、開催国のオリンピック委員会として意見を集約したい考えを示した。

  カナダのオリンピック委員会とパラリンピック委員会は22日、IOCと国際パラリンピック委員会(IPC)、世界保健機関(WHO)に対し、東京五輪の開催を1年間延期するよう緊急に要請するとともに、今夏に開催なら選手団を派遣しないと表明した。

  オーストラリア・オリンピック委員会(AOC)も23日、東京五輪が21年夏に開催されると想定して準備すべきだと自国アスリートに伝えていることを明らかにした。  

  東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは「株式市場は完全な形で通常通り実施できるとは考えていない。もし延期が発表になれば日本経済にとってはマイナス要因だが、株価は悪材料が出尽くしとなる可能性もある」と指摘。水戸証券の酒井一チーフファンドマネジャーも「マーケットは開催への懸念を先行して読んでいた。驚きではない」との見方を示した。

  23日の東京株式相場は日経平均株価が前営業日比2%高の1万6887円78銭、TOPIXは同0.7%高の1292.01だった。

(12段落にJOC山下会長のコメントを入れて記事を更新します)
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