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日銀短観、大企業製造業景況感が7年ぶりマイナス-新型コロナ直撃

更新日時
  • 製造業の業況判断DIはマイナス8、非製造業はプラス8に悪化
  • 宿泊・飲食サービスのDIマイナス59、悪化幅のマイナス70は過去最大

日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査(短観)の3月調査で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はマイナス8と、昨年12月の前回調査から8ポイント悪化した。悪化は5期連続で、マイナスとなるのは2013年3月調査以来。悪化幅は12年12月調査(マイナス9)以来の大きさとなった。新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に経済活動が停滞する中、企業心理は急速に冷え込んでいる。

  大企業・非製造業のDIはプラス8と、前回調査から12ポイント悪化。悪化幅は09年3月調査(マイナス22)以来の大きさとなった。水準としては13年3月調査以来の低さとなる。新型コロナの感染拡大を受けたインバウンド(訪日外国人客)需要の減少のほか、イベントや外出の自粛などによる消費低迷が直撃した格好で、特に宿泊・飲食サービスの悪化幅はマイナス70と過去最大の落ち込みとなった。

キーポイント

  • 景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いたDIは大企業・製造業がマイナス8と前回調査から8ポイント悪化ーブルームバーグ調査の予想はマイナス10
  • 非製造業はプラス8と12ポイント悪化-予想はプラス2
  • 先行きは製造業がマイナス11に悪化、非製造業はマイナス1と悪化を見込む
  • 全規模・全産業の20年度の為替想定は1ドル=107円98銭、1ユーロ=120円29銭

  

悪化幅は12年12月調査以来の大きさ

      菅義偉官房長官は午前の記者会見で、新型コロナによって「国内外の経済活動が一時的に縮小を余儀なくされており、日銀短観もそれを反映したもの」との認識を示した上で、感染拡大の抑制を最優先に、雇用の維持と事業の継続のため当面の資金をしっかり支援していきたいと語った。さらに、感染の収束後に「V字回復を実現するため、旅行、飲食、イベントを中心に大規模な需要喚起を実現できるような措置を講じる予定」だとも述べた。

      詳細(日銀の説明)

      • 製造業では大企業、中小企業から新型コロナの感染拡大による部品調達難や、国内外の需要減少を指摘する声が多い。また、米中貿易摩擦を指摘する声も散見された
        • 自動車のDIマイナス17は、11年6月調査(マイナス52)以来の低さ
      • 非製造業では宿泊・飲食サービスや対個人サービスを中心にインバウンドや個人消費の減少を指摘する声が幅広く聞かれた。また、暖冬の影響や、中小企業中心に人手不足を指摘する声も根強い
        • 宿泊・飲食サービスのDIマイナス59、悪化幅のマイナス70は過去最大。新型コロナの影響を反映
      • 製造業、非製造業ともに先行きがさらに悪化しているが、中小企業中心に新型コロナの感染拡大や先行き不透明感を指摘する声が幅広く聞かれた
      • 設備投資計画は現時点で堅調ともいえるが、大企業中心に新型コロナの影響を今後織り込む可能性があり、次回6月短観と合わせてみる必要がある
      • 企業の物価見通しは、原油安の影響もあり期間の短いところを中心に低下
      • 3月調査の回収基準日は3月11日。それまでに約7割が回答

      背景

      • 消費増税や自然災害などから昨年10-12月の日本の実質国内総生産(GDP)は大きく落ち込んだが、新型コロナ感染拡大でエコノミストからは1-3月、4-6月まで3期連続マイナス成長を見込む声が増えている
      • 安倍晋三首相は3月28日、新型コロナ感染拡大を踏まえ、「リーマンショック時を上回る」追加経済対策と20年度補正予算案の編成を指示。自民党は31日、10兆円超の給付措置など含む事業規模60兆円、財政支出で20兆円を超える過去最大規模の緊急経済対策を求める提言を提出
      • 日銀は3月16日に緊急の金融政策決定会合を開き、潤沢な資金供給や上場投資信託(ETF)などの資産買い入れ、新たな企業支援措置を柱とする緩和強化策を決定。黒田東彦総裁は、さらなる経済・金融への下押し圧力が生じた際にはマイナス金利深掘りを含め追加措置を講じる考えを表明
      (3段落目に菅官房長官のコメントを追加して更新しました)
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