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【先週の新興国市場】再び高まった米中の緊張、リスク選好の重しに

  • 中国反論、武漢の研究所が新型コロナ発生源としたポンぺオ長官に
  • ブラジルやマレーシア利下げ、トルコは「操作的」取引の定義拡大

先週の新興国市場では株式と通貨が下落。米国と中国の緊張が再び高まったほか、新型コロナウイルスの感染拡大封じ込めへの楽観論が後退した。コロナのパンデミック(世界的大流行)による経済への甚大な影響が統計で示される中、新興国の中央銀行の間では追加利下げの動きが広がった。

  8日終了週の主なニュースは以下の通り。

ハイライト:

  • 米中両政府の通商交渉担当トップが電話協議。第1段階の貿易合意を実行するため好ましい環境づくりを行い、経済と公衆衛生の面で協力すると表明した
  • トランプ米大統領はパンデミックを受けて中国との第1段階の貿易合意の先行きが疑わしくなったとの考えを明らかにした
    • 中国は新型コロナの発生源が湖北省武漢市の研究所であることを示す証拠があると述べたポンペオ米国務長官に反論、ウイルスの流出を裏付ける証拠を長官は示せないと指摘した
    • 中国の崔天凱駐米大使は、米国に新型コロナを巡る「非難合戦」をやめるよう強く要求。これまでで最上位の高官を通じて応戦した
  • トランプ大統領は新型コロナのパンデミックによる感染者や死者の増加につながるとしても、米国民は日常生活に戻り始めるべきだと述べ、経済活動再開に向けて突き進む姿勢を示した
    • 米国の4月の非農業部門雇用者数は前月から2050万人減少し、失業率は前月の3倍余りとなる14.7%に上昇した
  • 米連邦準備制度がマイナスの政策金利を導入する可能性を織り込む方向にトレーダーが動き、米2年債利回りが過去最低を更新した  
  • ドイツ連邦憲法裁判所は欧州中央銀行(ECB)の債券購入プログラムについて継続は可能だとしつつ、複数の懸念事項があるため3カ月以内に政策が適法である根拠を示す必要があるとの判断を下した
    • ラガルドECB総裁はブルームバーグ主催のパネルディスカッションでこの判断に関する具体的な見解を避けたが、ユーロ圏のインフレ率およびその延長線上にある経済を責務の範囲内で回復させる使命について、ECBに「揺るぎはない」と語った
  • トルコ・リラが最安値を更新した。トルコ当局は為替介入を実施し、新たな投機対策を導入したが下落傾向に歯止めをかけられず。当局は国内の銀行がシティグループ、UBSグループ、BNPパリバとリラ取引を行うことも禁止。リラはその後に下げ幅を縮小した
  • ブラジル中銀は政策金利を0.75ポイント引き下げて過去最低の3%とした。金融緩和ペースを加速させたことを受け、レアルは過去最安値へと下落した
  • マレーシア中銀は翌日物の政策金利を0.5ポイント引き下げ2%とした。感染拡大に対応した制限措置を緩和し、ほとんどのセクターで活動を再開した経済を下支えする。0.5ポイントは2009年以来の大幅な利下げ幅
資産別指数週間
MSCI新興市場指数-0.6%
MSCI新興国通貨指数-0.1%
ブルームバーグ・バークレイズ新興市場の自国通貨建て国債指数+0.2%

アジア:

  • 中国の4月の輸出はドルベースで前年同月比3.5%増と、市場予想(11%減)に反して増加。東南アジア向け輸出が下支えした。だが、新型コロナ感染拡大で外需が損なわれており、輸出増は一時的となる公算が大きい。輸入は14.2%減少した
  • インドネシアの1-3月(第1四半期)国内総生産(GDP)は前年同期比2.97%増と、2001年以来の低い伸び。新型コロナ流行による同国経済への影響は、向こう数カ月で一段と厳しいものになると予想されている

EMEA:

  • トルコの銀行監督当局は、金融市場で操作的と見なす取引の定義を広げた。銀行調整監視機構(BDDK)の新規制によれば、「誤解を招く価格」をもたらしたり、資産価格を「異常もしくは不自然な」水準に維持する結果となった銀行取引は今後、操作的と見なされる
  • サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、油種の大半において6月船積み価格を引き上げた。特にロシア産原油の主な市場である地中海と欧州向けのディスカウント幅を大幅に縮小。これに反応して原油先物相場は上昇した

中南米:

  • ブラジルの格付け見通しをフィッチ・レーティングスが「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」に変更した。政情不安の再燃や新型コロナ感染拡大がブラジル経済を圧迫していることが背景
  • アルゼンチン政府は650億ドル(約6兆9000億円)の債務再編について債権者側からの新たな提案にはオープンな姿勢で臨む方針を示した。グスマン経済相がブルームバーグ・ニュースとのインタビューで発言。混乱を招くデフォルト(債務不履行)に再び陥る事態を回避するため交渉に一段と前向きになっていることを示唆した
今後のデータと経済的リリース:
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原題:EM Review: Revival of U.S.-China Tension Weighs on Risk Appetite(抜粋)

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