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4月の国内指標、生産・小売り・雇用が軒並み悪化-コロナ影響本格化

  • 鉱工業生産は前月比9.1%減、11年3月以来の大幅な落ち込み
  • 鉱工業生産はかなりきついというイメージ-大和総研の小林氏

新型コロナウイルス感染拡大により日本で緊急事態宣言が発令された4月の経済統計は、生産、小売り、雇用関連の統計がいずれも悪化した。外出自粛や休業要請などから国内外ともに経済活動の制限が一段と強まる中、鉱工業生産は東日本大震災が発生した2011年3月以来の大幅な落ち込み、小売業販売額は1998年3月に次ぐ過去2番目の減少率となった。

29日発表の4月分の経済指標
  • 鉱工業生産  前月比9.1%低下(予想5.7%低下)-11年3月(16.5%低下)以来の低下率
  • 小売業販売額 前年同月比13.7%減(予想11.2%減)-98年3月(14.3%減)以来の減少率
  • 完全失業率  2.6%(予想2.7%)-17年12月(2.7%)以来の高水準
  • 有効求人倍率 1.32倍(予想と同じ)-16年3月(1.31倍)以来の低水準

生産  

  経済産業省が発表した4月の鉱工業生産指数は前月比9.1%低下の87.1と3カ月連続のマイナスとなり、2015年を100とする現行の基準内で最大の低下幅となった。15業種中、生産用機械工業を除く14業種が低下。基調判断は、生産は「急速に低下している」とし、前月の「低下している」から下方修正された。

  製造工業生産予測調査によると、5月は前月比4.1%低下、6月は3.9%上昇の見込み。予測誤差を加工した5月の試算値は5.7%低下となっている。

現基準内で最大の低下幅

小売り

  商業動態統計によると、4月の小売業販売額は前年同月比13.7%減の10兆9290億円と、2カ月連続のマイナス。業種別では、自動車小売業が23.7%低下、織物・衣服・身の回り品 小売業が53.6%低下、各種商品小売業が42.9%低下。衣料品が主力の百貨店が71.5%減少する一方、スーパーは3.6%増加した。基調判断は「急速に低下している」とした。

基調判断「急速に低下している」

雇用

  総務省が発表した4月の完全失業率は前月比0.1ポイント上昇の2.6%と、2カ月連続で前月を上回った。水準としては17年12月(2.7%)以来の高さ。就業者数は前年同月比80万人減、雇用者数は同36万人減と、いずれも12年12月以来のマイナスとなった。休業者は597万人と3月の249万人から倍増した。

  厚生労働省が発表した4月の有効求人倍率は前月比0.07ポイント低下の1.32倍と4カ月連続で低下し、16年3月(1.31倍)以来の低水準となった。新規求人は前年比31.9%減で、宿泊業・飲食サービス業(47.9%減)、生活関連サービス業・娯楽業(44.0%減)、製造業(40.3%減)など、幅広い業種で雇用情勢が悪化した。

雇用情勢の悪化続く

エコノミストの見方

大和総研経済調査部の小林俊介シニアエコノミスト:

  • 鉱工業生産は3月、4月とすごい落ち方、企業部門はかなり苦しい
  • 背景には輸出の落ち込みの厳しさがある、欧米向けの自動車のウエートが高く、欧米のロックダウン(都市封鎖)に伴う外需の低迷が生産に影響した
  • 自動車はウエートが大きいことに加えて景気敏感であり、部品や生産機械、雇用に波及する一番大きな産業。5月以降に多少戻ってくるだろうが、戻り方は全部戻しではなく、どの程度達するのかが注目点
  • 小売りの落ち込みは分かっていたこととはいえ、厳しいと言わざるを得ない。衣服は店舗が閉まっているために減少しただけでなく、外に出ないため春物・夏物を買わない、化粧品はかなり落ちている

第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミスト:

  • 生産は自動車の落ち込みが大きい。世界的なコロナの流行で経済活動を停止せねばならない状況で、自動車メーカーも減産をせざるを得なかった
  • 消費については一部、ドラッグストアなどで増えているなどの話があったが、全体で見るとかなり弱っている
  • 失業率は0.1ポイントの悪化にとどまったが、中身も見ると就業者数が減っており、非労働力人口も増えている。ヘッドラインの数字よりも厳しい状況
  • 今後の注目点はどの程度悪くなるかというよりは、コロナ後の戻りがどの程度早く、しっかりしたものになるのかという点。自粛を緩める度合いに大きく依存する

IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミスト:

  • 生産は予想以上に悪い数字。4月は輸出も車が大幅に減少したので、これが生産にももろに出たと思う
  • 国内でもコロナの影響で生産が停止した。欧米のロックダウンによる需要減、サプライチェーンの停滞の両面があっただろう
  • 小売り統計は国内の活動自粛の影響を反映。コロナの影響が長引くことでの雇用、所得への影響は大きいと思う。相当厳しい状況で、V字回復は無理だろう
  • 生産で調整が続くと、製造業でも失業者が増える可能性がある
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