ウォール街の誤算、英国からEUへの移動が新型コロナに阻まれる
Viren Vaghela、Stefania Spezzati、Silla Brush-
昨年9月までに大陸に移ったのは1000人、予想のごく一部にとどまる
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ビジネスは依然としてロンドン経由、EU拠点ではない-関係者
米国の大手銀行は、英国の欧州連合(EU)離脱に伴い人員を英国からEU域内に移す計画を立てていたが、新型コロナウイルス流行で貴重な時間を失った。今や各行は、流行の第2波で再び国境が閉ざされる前に計画を進めなければならない。
JPモルガン・チェースとモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループは年末の離脱移行期終了が迫る中でやっと、ロンドンから人員を移す以前からの計画を再始動させたが、速やかに実行することが不可能であることに気づかされた。
法律事務所リンクレーターズのパートナー、ピーター・ベバン氏は、新型コロナ流行「第2波の中でスタッフを再配置するのには懸念がある」と話す。チーム全体がロックダウンに巻き込まれることもあり得るからだ。
英健全性規制機構(PRA)の2015年のデータによると、英国内の全銀行資産のうちほぼ半分は外国銀行が保有する。しかし英国のEU離脱が決まってから昨年9月までに銀行がロンドンから大陸に移した人員数は約1000人にすぎない。コンサルティング会社EYが予想していた7000人に比べ、ごくわずかでしかない。
JPモルガンとモルガン・スタンレー、ゴールドマンの担当者はコメントを控えた。
米銀は英国からEUへのシフトの長期的な準備はしている。ゴールドマンはパリで12年間のオフィス賃借契約を結び、JPモルガンもパリで7階建てのオフィスビルを購入した。バンク・オブ・アメリカ(BofA)もパリに拠点を構え、欧州在勤スタッフの約6割を既に英国外に配置するシティグループは、主にフランクフルトで150~200人の新たな役割を設けている。
一晩では起こらない
しかし、事情に詳しい関係者によると、EU子会社で勤務する予定だった従業員の一部はまだ物理的にはロンドンにいて、EUの雇用契約の下で働いている。新型コロナで引っ越しが計画通りに進まなかったためだ。
また、JPモルガンとシティの顧客の多くは依然、両行のEU拠点ではなくロンドンを通じてビジネスを行っていると、事情に詳しい関係者が語った。ロンドンの方が流動性が高く業務のコストも低いという。シティの広報担当者はコメントを控えた。
銀行・金融業界団体のUKファイナンスで最高経営責任者(CEO)を務めるスティーブン・ジョーンズ氏は、今後もバンカーたちがロンドンからEUの拠点へと移るだろうが、「それは一晩では起こらないだろう」と述べた。
原題:
Wall Street’s Best-Laid Brexit Plans Thrown in Disarray by Virus(抜粋)