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日銀7月展望リポート、再下方修正の可能性-世界経済下振れ警戒

  • IMFが世界経済見通し引き下げ、前回は緊急事態延長を織り込めず
  • 市場安定と対策が経済下支え、追加緩和観測は高まりにくい状況

日本銀行は7月中旬に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて経済見通しを再び下方修正する可能性が高まっている。先進国を中心に経済活動が徐々に再開されているものの、新興国や途上国では感染拡大が続いており、世界経済の下振れやコロナ第2波への警戒が日本経済の重しとなっているためだ。

  国際通貨基金(IMF)は24日、新たな世界経済見通しを発表し、4月時点でマイナス3%と予想していた2020年の経済成長率をマイナス4.9%に下方修正した。IMFは下方修正の背景について、「パンデミック(世界的大流行)の容赦ない拡大により、生活や雇用確保、不平等への長期的なマイナス影響の可能性が一段と高まった」としている。

  日銀は4月27日に公表した前回の展望リポートで、感染拡大の影響を踏まえて20年度の日本経済の成長率はマイナス5.0%~マイナス3.0%のマイナス成長になると予想した。1月時点の0.8%~1.1%のプラス成長から大幅に下方修正したが、7月14、15日に開く金融政策決定会合では、世界経済の落ち込みが深く、長期化していることを考慮する見通しだ。

  黒田東彦総裁は6月16日の会見で、世界経済について「一部の途上国・新興国で感染の拡大が止まらないことが一番大きなリスクになっているのではないか」と述べ、国内でも「新しい生活様式で需要構造等も変わってくるかもしれず、資金繰り面で困難を抱える先も出てくるかもしれない」と発言。こうした世界的な感染拡大の長期化や第2波への警戒感は4月の展望リポートでのメインシナリオでは、想定していなかった可能性が大きい。

  さらに、同リポートの公表後に全国的な緊急事態宣言の1カ月程度の延長が決定。新たな見通しには、その間の経済活動の落ち込みを追加で織り込む必要がある。

追加緩和観測は高まらず

  もっとも、経済見通しが下方修正されても、現在のような金融市場の安定が続いている限り、市場の追加緩和観測が強まることはなさそうだ。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の宮嵜浩シニアエコノミストは、日銀が次回の展望リポートで成長率見通しを「恐らく下方修正するだろう」と予想しながらも、「それが追加緩和につながるということではない。今、日銀が重視しているのは企業の資金繰りであり市場の安定だ」と語る。

  5月下旬に緊急事態宣言が解除され、経済活動が徐々に再開されていることを反映し、コロナの影響に伴う日本経済の落ち込みは4-6月期がボトムだったとの見方が市場では多い。

  また、2020年度の補正予算の事業規模は1次と2次を合わせて200兆円を超える。日銀も3月以降、コロナ対応策を相次いで打ち出しており、政府・日銀の政策対応が相当程度、先行きの日本経済を下支えする可能性が大きい。

  IMFの新たな見通しでは、世界経済は4-6月期に底を打ち、その後回復に向かうとの見方が示されている。引き続き先行きの不確実性は大きいものの、日本経済が年後半にかけて持ち直していくとの見方を維持できる公算が大きい。  

  日銀が24日に公表した6月15、16日の金融政策決定会合の主な意見によると、それまで続いていた政府側出席者からの物価安定目標の実現を求める発言が消えた。これは物価目標の実現よりも企業の資金繰り支援と金融市場の安定を優先する政府・日銀の共通した姿勢を示唆しているようだ。

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