米当局、ボルカー・ルールの緩和承認-銀行のVC出資が可能に
Jesse Hamilton-
スワップ取引巡る証拠金要件の撤廃で金融機関の手元資金は拡大へ
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トランプ氏が指名した規制当局者らによる「ボルカー2.0」が完了
ウォール街の金融機関は、ベンチャーキャピタルファンドへの投資を近く増やせるようになるほか、デリバティブ取引に関連し留保していた証拠金を手元資金とすることができるようになる。米監督当局が、金融危機後に導入した規制ボルカー・ルールの一部緩和を認めた。
米連邦準備制度理事会(FRB)、通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)は25日、米金融機関の投資に規制を設けたボルカー・ルールの変更を承認した。これにより金融機関は、一部ファンドとの取引を増やすことが可能になる。OCCとFDICはまた、金融機関が関連会社とデリバティブ取引を行う際に証拠金を確保する要件を撤廃した。
スワップ取引を巡る証拠金要件の撤廃により、ウォール街の金融機関は手元資金が推定400億ドル(約4兆3000億円)増える可能性がある。
ボルカー・ルールは2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)に盛り込まれたものだが、トランプ大統領に指名された規制当局者らが「ボルカー2.0」と呼んできた同ルールの改定は今回の緩和承認で完了することになる。
「ボルカー2.0」では、これまで禁止されていた銀行によるベンチャーキャピタルファンドへの出資が可能になる。この変更は規制当局が昨年提案した内容とほぼ同じとなる。
FDIC理事会は新たなルールを賛成3、反対1で承認。マクウィリアムズ総裁は各変更により「コンプライアンスと監督の両方が改善する」と述べた。一方、反対票を投じた民主党系理事会メンバーのマーティン・グルエンバーグ氏は、ボルカー・ルールの「深刻な弱体化」を招くとし、金融危機の「過ちを繰り返すリスクがある」と指摘した。
「ボルカー2.0」は金融業界の全ての要求を満たしたわけではない。ゴールドマン・サックス・グループは今年3月の書簡で当局に対し、「スタートアップ企業や起業家に資本やノウハウを提供する幾つかのインキュベーター企業に投資する能力を制限する」解釈の撤廃を求めていた。当局はこの要求には応じなかった。
FDICのグルエンバーグ氏は、スワップ規制は銀行にとっての重要な保護を奪うものだと主張。ブレイナードFRB理事もそうした見方に同調し、規制解除の動きで「銀行が再びリスクのあるデリバティブの蓄積にさらされる」懸念を理由にFRBの承認に反対したと説明した。
原題:Banks Get Easier Volcker Rule and $40 Billion Break on Swaps (4)(抜粋)