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ドイツ銀、ワイヤーカード不正公表前から疑う-リスク回避で取引削減

  • 疑い膨らみエクスポージャー削減、前CEOへの融資も巻き戻し
  • アナリストは投資判断引き上げ、資産運用部門は投資急拡大していた

ドイツ銀行と、破産申請した独オンライン決済会社ワイヤーカードの関係は深い。

  ドイツ銀はワイヤーカードとマーカス・ブラウン前最高経営責任者(CEO)の主要取引銀行で、ブラウン氏は同行の地域諮問委員会のメンバーでもあった。アーンスト・アンド・ヤング(EY)でワイヤーカードの会計監査を数回担当したアンドレアス・レッチャー氏は会計の最高責任者としてドイツ銀に加わっている。ドイツ銀のパウル・アハライトナー監査役会会長は2018年、幹部らにワイヤーカードを見習うよう指示したこともある。

  会長の称賛の言葉とは裏腹に、ドイツ銀行内部ではこの頃からワイヤーカードの成功は本物なのか疑いが膨らんでいた。投資銀行部門は会計の不透明性と株価の割高感を指摘し、リスク管理担当者は市場を動揺させずにエクスポージャーを削減する方法を模索した。19年には同行の株式アナリストがワイヤーカード株の投資判断を引き上げ、資産運用部門DWSは保有株数を200万株弱から700万株超へと増やしたが、ドイツ銀本体はワイヤーカードとブラウン氏への融資で合意した約3億ドル(約322億円)の大半について、ヘッジをかけたり巻き戻したりした。

  同年9月にはワイヤーカードの5億ユーロ(現在のレートで約600億円)の社債発行を支援したが、自らは取得せず、他の投資家に売却した。リスクを抱え込みたくなかったからだ。11月にはブラウン氏に対するマージンローンを更新しないことを決定。事情に詳しい関係者によると、ブラウン氏は結局、米アポロ・グローバル・マネジメントなどプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社の後押しを受けた小規模の独地方銀行オルデンブルク州立銀行から融資を確保した。 

Wirecard left Germany's top banks in its dust before falling from grace

  こうしてワイヤーカードが現金の所在不明を発表した時、ドイツ銀にはブラウン氏に対する貸し付けはなかった。同行はワイヤーカードに合計で約16億ユーロの融資残がある銀行15行の一つではあるが、信用枠の9割が利用されていたと仮定してエクスポージャーは7000万ユーロ前後。ブルームバーグは、コメルツ銀行やABNアムロ、INGグループはそれぞれその2倍余りの貸付額があると報じている。

  ドイツ銀行の広報担当者は、同行とワイヤーカードの関係についてコメントを控えた。DWSもコメントを避けたが、同社は6月にワイヤーカードとブラウン氏に対して訴訟を起こす計画だと発表していた。

原題:
Deutsche Bank Cut Wirecard Ties as Its Fund Managers Went All In(抜粋)

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