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日銀が金融政策の維持決定、景気は年後半改善もペースは緩やか

更新日時
  • 20年度実質GDP見通し4.7%減、中央値の公表再開-展望リポート
  • 経済・物価見通しに大きな変化なし、下振れリスク大きい
Haruhiko Kuroda

Haruhiko Kuroda

Photographer: Yuya Yamamoto/Jiji Press

日本銀行は15日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を賛成多数で決めた。声明文と同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、景気は今年後半から「徐々に改善していく」としながらも、新型コロナウイルスの影響が残る中で改善ペースは緩やかなものにとどまる、とのシナリオを示した。具体的な経済・物価見通しに大きな変化はなく、引き続き下振れリスクの方が大きいとした。

  金融政策運営は、現行のマイナス0.1%の短期政策金利と「ゼロ%程度」の長期金利目標を維持し、「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」とのフォーワードガイダンス(指針)に変化はなかった。指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)、コマーシャルペーパー(CP)・社債の買い入れ方針も据え置いた。

  3月以降に相次いで打ち出してきた資金繰り支援特別プログラムなど新型コロナの影響に対応するための一連の措置も継続し、「企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく」とした。当面は、「新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」方針も改めて表明した。

  新たな展望リポートでは、景気の現状について「極めて厳しい状態にある」との認識を維持。先行きは「経済活動が再開していくもとで、本年後半から徐々に改善していくとみられる」としたが、新型コロナの影響が残る中で「そのペースは緩やかなものにとどまる」と予想。消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比も当面は、「感染症や既往の原油価格下落などの影響を受けて、マイナスで推移するとみられる」とした。

  経済・物価見通しは、前回4月の同リポートにおける「おおむね見通しの範囲内」と評価。コロナの影響による先行き不透明感の強さや、「感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きい」との見方にも変化はなかった。

  具体的な実質国内総生産(GDP)とコアCPIの政策委員見通しは、前回は不透明感の強さからレンジ表記としたが、今回から中央値を示す従来の形式に戻した。このため単純な比較はできないが、2020年度の実質GDPは前回の前年比「5.0%減-3.0%減」から今回は中央値で同4.7%減となり、下振れ気味の見通しになっている。コアCPIの20年度見通しはマイナス0.5%。4月時点の見通しはマイナス0.7%-マイナス0.3%だった。

日銀本店

日銀本店

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  

  会合では、イールドカーブ・コントロール政策の維持に片岡剛士審議委員が引き続き反対票を投じた。今月1日に就任した中村豊明審議委員は初めての会合出席となった。ブルームバーグがエコノミストを対象に実施した調査では、9割超が日銀は今回会合で金融政策の現状維持を決めると予想していた。

エコノミストの見方

岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミスト

  • 現時点で副作用を承知でマイナス金利深掘りなどのアクションは起こせない
  • 経済全体ではまだ正常化に程遠い状況なので、日銀としては今はやることをやって政策の効果を見極めていこうということ
  • 米国や欧州の中央銀行も次の政策スキームを打ち出せる状態ではないので、日銀もまだ動けない
  • コロナの影響が長引けば当然政府の国債増発という話になるので、日銀としては引き続きイールドカーブをフラットで維持していく姿勢を貫いていくと思う

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト

  • 展望リポートでは経済・物価の見通しが中央値で示されたが、物価は22年度でも1%にも届かず、異次元緩和がほぼエンドレスに続いていくということを示している
  • GDPは落ちた後の戻りが強くない
  • 不確実性、不透明という言葉が多く使われているがそう言わざるを得ない。ワクチンなど医療的解決がないと何とも難しい
  • 今後の金融政策は据え置きを予想。コロナの影響を見つつ、必要であれば政策をとるというスタンスを維持するだろう
長短金利操作(賛成8反対1)
  • 短期金利:日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%適用
  • 長期金利:10年物金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買い入れ。その際、金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる
  • 片岡剛士委員が反対
資産買い入れ方針(全員一致)
  • ETFとJ−REIT:保有残高がそれぞれ年間約12兆円、約1800億円相当で増加するペースを上限に、積極的に買い入れ
  • CP・社債:それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持。加えて2021年3月末までの間、それぞれ 7.5 兆円の残高を上限に追加の買い入れを行う
フォワードガイダンスとコミットメント
  • 当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる
  • 政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定
(詳細やエコノミストの見方を追加して更新しました)
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