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アジアの政治的オアシスだった香港、今は地政学巡る対立の最前線に

  • 香港で事業をしたいと考える米企業が減る可能性-ウィリー・ラム氏
  • 「米中関係に底はない。新安値が続く」とマクレガー上級研究員

最近まで政治的安定という点でアジアのオアシスだった香港が今、法規制を巡る不透明感で世界的な金融センターとしての地位が危ぶまれている。

  6月30日施行の香港国家安全維持法(国安法)はすでに香港のビジネスを変え始めている。グーグルやフェイスブックは当局へのデータ提供を停止。米国と中国は互いに相反する法規制の変更を行い、銀行は板挟みに苦しむ。今月14日にはトランプ米大統領が香港への優遇措置を撤廃する大統領令に署名し、「香港自治法」が成立した。

トランプ大統領が香港の優遇措置撤廃、対中制裁法署名-中国反発

President Trump Holds Rose Garden News Conference

トランプ米大統領(14日)

撮影:Tasos Katopodis / UPI / Bloomberg

  香港を本拠とする弁護士で作家でもあるアントニー・ダピラン氏は、「米国の措置は中国政府による香港統制と相まって、香港をオープンで安定的な国際金融センターから急激に強まる地政学的対立の最前線で争う場に急速に変えつつある」と指摘した。

米国が香港の優遇措置撤廃、何を意味するのか-QuickTake

  香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に助言する行政会議のメンバー、葉劉淑儀(レジーナ・イップ)氏はインタビューで、香港自治法は米政府が本当に意図するところと反対の方向に香港を押しやるとし、「繁栄と安定を支えるため、香港の人々をますます中国本土に依存させるだけだ」と述べた。

  その上で同法は「国際金融センターとしての香港が成功してきた基盤には実際には影響しない。金融制裁はこの法律の下で特定された個人と事業体のみを対象としており、一部で示唆されているような広範な影響はないだろう」との見方を示した。

バイデン氏当選でも

  香港中文大学中国研究センターのウィリー・ラム非常勤教授は、香港自治法で銀行などの金融機関がいずれ制裁に直面すれば、事態は一段と悪化し得ると分析。「香港で事業をしたいと考える米企業が減る可能性がある。上海に直接向かうか、シンガポールなど別のアジア金融センターに移るかもしれない」と話した。

  ローウィー研究所(シドニー)の上級研究員で「中国共産党 支配者たちの秘密の世界」の著者リチャード・マクレガー氏によれば、11月の米大統領選挙後でも状況が改善される見込みはほとんどない。米民主党の候補者指名が確実なバイデン前米副大統領が当選した場合でも、トランプ政権が最近打ち出した措置を全て引き継ぐ公算が大きいためだ。

  「米中関係に底はない。新安値が続く」とマクレガー氏はブルームバーグテレビジョンに語った。

原題:Hong Kong Ceases to Be Safe Haven in Gathering U.S.-China Storm(抜粋)

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