HSBC、事業縮小も視野か-米中対立激化で脅かされるビジネス
Harry Wilson、Ambereen Choudhury、Donal Griffin-
グローバルでなければ存在意義は何になるのか-ゲーガン元CEO
-
欧米と東洋を結ぶネットワークへの潜在的打撃、どう解決するのか
対立が激化している米中の板挟みになっている英銀HSBCホールディングス。欧米と中国の橋渡しとして築き上げてきたそのビジネスが脅かされている。
事情に詳しい関係者によれば、マーク・タッカー会長は単なる立て直し策にとどまらない事業の縮小を見据え、同行の欧米業務の広範な見直しを進めている。2月に発表した3万5000人規模の人員削減では、低迷する同行の復活に十分ではないのではないかとの見方が強まっているためだ。
ロンドンに本店を置くHSBCはその利益のほとんどをアジアで稼ぐ。155年の歴史を持つ同行は先週、中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)との関わりについて、同社を陥れた事実はないとして、米国での捜査の発端がHSBC側にあるとの見方を否定。中国メディアから執拗(しつよう)な攻撃を受けていた同行が、沈黙を破り反論した。
政治状況悪化がHSBCの魅力を危うくする中で、同行の幹部はイングランド銀行(英中央銀行)と香港を巡り協議し、香港ドルと米ドルのペッグ(連動)制が混乱する可能性に備え対応策の検討も始めた。
2006年から10年までHSBCの最高経営責任者(CEO)を務めたマイケル・ゲーガン氏は「グローバルでなければ、この銀行の存在意義はどこにあるのか」と述べ、「世界中でビジネスをしたいと思えば、HSBCやシティグループなど極めて少数の銀行に行く必要がある。ネットワーク縮小でどこに利益があるのか私には見えない」と話す。
1865年に香港上海銀行として誕生したHSBCは極めて厳しい状況に見舞われている。世界的な金融危機で始まった10年間はタッカー会長が初めてCEOに選んだジョン・フリント氏の解任で終わった。在任期間はわずか1年半。その間、株価低迷や戦略的な強化策の失敗、大中華圏で主導的な地位を活用しようとするもののうまくいかなかったことで、投資家は不満を募らせていた。
元シティのベテラン、ジェームズ・フォレス氏はCEO職を打診された後、5月にHSBCの取締役会入り。行内事情を知る関係者によれば、同氏はタッカー会長とイーウェン・スティーブンソン最高財務責任者(CFO)と力を合わせ、改革を推進する。ノエル・クインCEOは最高執行責任者(COO)に似た役割を担っているという。
タッカー会長が打ち出した2月の再編計画では人員の15%が削減され、投資銀行事業も縮小される。問題は米アマゾン・ドット・コムなどの顧客企業を引き付けてきた欧米と東洋をつなぐネットワークに対する潜在的なダメージだ。同会長が他の最高幹部らと共にどのようにして解決策を見いだそうとしているのかはまだ分からない。
HSBCは事業再編への取り組みについてコメントを控えた。
関連記事 |
---|
「魔法の武器」でキャンペーン仕切る中国共産党-香港実業界に圧力(6月配信) |
原題:Squeezed by Superpowers, HSBC Eyes Next Step of Endless Reboot(抜粋)