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香港に賭けた戦略、実を結ぶのか-元ゴールドマンの新世界発展CEO

  • 李嘉誠氏の一族と異なり、鄭家は香港重視を続けてきた
  • 負債資本比率42%-香港の不動産開発会社としては最も高い

香港最大のショッピングモールや39億米ドル(約4100億円)規模のスポーツ施設の建設など、鄭志剛(エイドリアン・チェン)氏は香港で最も積極的な不動産投資家の1人だ。

  40歳の鄭氏は5月、新世界発展(ニューワールド・デベロップメント)の最高経営責任者(CEO)に就任した。父親である鄭家純(ヘンリー・チェン)氏の後継者としての地位をさらに固め、一家の野心的な不動産開発を推し進める。

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鄭志剛(エイドリアン・チェン)氏

撮影:Giulia Marchi / Bloomberg

  香港を代表する資産家一族である鄭家は宝飾品販売の周大福珠宝集団も傘下に置く。香港一の富豪、李嘉誠氏の一族はここ10年間で香港への投融資を着実に減らしてきたが、李家と異なり、新世界発展は年間売上高768億香港ドル(約1兆円)の3分の2を引き続き香港で得ており、今も大型プロジェクトが進行中だ。

New World’s Prolific Hong Kong Real Estate Projects

Source: New World Development

  米ハーバード大学を卒業し、ゴールドマン・サックス・グループで投資バンカーをしていた鄭志剛氏が今見据えるのは、中国政府が推し進める「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」構想だ。香港に隣接する広東省の深圳市や広州市などの珠江デルタ地域の都市と香港、マカオを結び、巨大経済圏を創設しようという取り組みだ。

  幾つかの本土プロジェクトに170億元(約2600億円)余りを投じている新世界発展は香港での積極的な建設投資も抱え、負債自己資本比率は42%と、香港の不動産開発会社の中では最も高い。中国政府による香港統制強化で投資の選択肢が限られる中で、同社は賭けに勝つ必要がある。

  新世界発展のエドワード・ラウ副最高財務責任者(CFO)は電子メールで、「われわれはグレーターベイエリアで主導的かつ最大の香港デベロッパーだ」とコメント。「大きな資本支出と成長の計画がある」とも説明した。

Chow Tai Fook Jewellery Group Ltd. Half-Year Earnings News Conference

鄭家純(ヘンリー・チェン)氏

  視線の先にあるのは中国本土かもしれない。だが新世界発展の長期にわたる香港重視が意味するのは、政治を巡る不確実性が香港の将来に疑問を投げ掛けているまさに今、同社が多額の資金を投じたプロジェクトの幾つかが実現するということだ。

  新世界発展は2018年、旧空港の跡地でのスポーツ複合施設の建設・運営を落札。鄭氏は執行副会長として受注に寄与した。23年完成予定のこのプロジェクトは、政府が建設費300億香港ドルを賄うものの、新世界発展は将来的な運営コスト全てを負担し、同施設総収入の3%を政府に支払う。

Festive Shopping At The K11 Musea Shopping Mall

香港のショッピングモール「K11 MUSEA」

撮影:ポール・ヨン/ブルームバーグ

  新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が新世界発展の事業に打撃を与える中で、ブルームバーグがアナリスト12人を対象にまとめた調査の予想平均値によれば、同社の20年6月期の調整後通期純利益は約12%減と、11年以来の大きな落ち込みとなったもようだ。新世界発展は鄭氏のインタビューに応じていない。

原題:Billionaire Property Heir Has Big Bets on Troubled Hong Kong (1)(抜粋)

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