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上場延期のキオクシアHD、投資家は成長性・株主構成・時期に疑問

  • ライバルも名を連ねる複雑な株主構成、意思決定遅れる懸念も
  • 少額調達に「勝負できるのか」の疑問の声-上限でも755億円

キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)が10月6日の東京証券取引所への上場を延期した。最近の市場動向や新型コロナウイルスの再拡大への懸念などを総合的に判断した。投資家からは、同社の成長性や株主構成、上場時期などに厳しい見方や疑問の声が上がっていた。

  17日に決定した仮条件は2800ー3500円で想定価格の3960円を大きく下回った。仮条件について広報担当の山路航太氏は「機関投資家の意見や需要見通し、株式市場の状況を総合的にみて検討した」と答えた。国内で今年最大の新規上場(IPO)案件になるはずだったが、上場しても同社が公募で調達できるのは仮条件の上限の場合でも755億円。

  さわかみ投信の草刈貴弘最高投資責任者(CIO)は、上場前の説明会でキオクシアHDが設備投資を抑えながら効率の良い運営で世界と勝負していけると説明していたことについて「競合が兆円単位で投資するなか、本当に勝負できるのか」と懸念を示した。さらに、通常IPOに向けた説明会では、投資家から活発に質問が出るが、今月複数回開催された説明会の1つに参加した同氏は「投資家から質問が全くなかった」と明かし、市場の関心度に疑問を持ったという。

株主構成

  成長のロードマップが見えないことに加えて、株主構成にも厳しい声があった。8月27日時点で議決権の所有割合は日米韓連合が56%、東芝が41%、HOYAが3.1%。これらの株主は株式を売り出すもののIPO後も日米韓連合48%、東芝は32%を保有する。

  草刈氏は「そもそも東芝を救うために東芝から切り離したのに、日米韓連合が株主から抜けたらまた東芝になりかねない」とも指摘した。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏ストラテジストは、「投資家連合の中には韓国の競合SKハイニックスも入っており、スピーディーに投資決定していけるのか株主構成と関係者の複雑さが気になる」と話した。

米大統領選

  浪岡氏はIPOの時期にも疑問を投げかけていた。個人的な見解として「米中問題が今回のIPOにとって逆風になりかねない」とみて、「なぜこのタイミングなのか。もう少し時期が後でも良いのではないか」と話した。「目論見書の事業等リスクにも記載されているが、米中対立やそれに伴う規制により大口取引先の華為技術(ファーウェイ)に商品が提供できなくなることが同社にとってはインパクトがある」とみていた。

  29日には、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領による米大統領選の第1回候補者討論会がある。トランプ氏が中国への規制を厳しくすれば、バイデン氏もそこで競争しかねないが、キオクシアHDにとってはこれまで通りファーウェイたたきを続ける可能性のある「トランプ氏が再任される方が厳しい」と浪岡氏は指摘した。

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