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アップル対エピック「フォートナイト」訴訟の背景とは-QuickTake

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今から約100年前、最大の反トラスト法(独占禁止法)事案と言えば、社会の変化を促す原動力となっていた石油に関するものだった。現在では反トラスト問題で重要な意味を持つであろう画期的な争いがデジタルの世界を巡って繰り広げられており、時代の変化を物語っていると言えるだろう。

  米アップルと人気ゲーム「フォートナイト」を手掛けるエピック・ゲームズの法廷闘争は「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」のアプリ管理者として、アップルが設定していた規約や手数料に対するエピック側の反乱が発端だ。今後の展開次第ではいわゆる「アプリ経済」に影響を及ぼすだけでなく、世界の巨大テクノロジー企業の支配力を巡って拡大する議論を方向付ける可能性もある。

1.何を巡る争いか

  エピックの創業者、ティム・スウィーニー氏が今年8月に「iOS」搭載機器向けに設計されたアプリやアプリ内のアイテム購入は全てアップルの課金システムを経由するとの規約にこれ以上従わないと宣言。同氏がエピック独自の課金システムを稼働させた後、アップルはアップストアからフォートナイトを削除し、エピックのツールを使う開発者のゲーム制作を難しくすることも辞さないと警告した。

  これに対し、エピックはカリフォルニア州北部地区連邦地裁にアップルを相手取り提訴。同様の問題でアルファベット傘下のグーグルにも訴訟を提起した。アップル側は直ちに反訴した。

2.エピックは何に不満だったのか

  アップルとグーグルはアプリストアを使う開発者に最大30%の手数料を課している。センサー・タワーの推計によると、世界の消費者によるアップストアとグーグルプレイでの支出額は2020年上期に500億ドル(約5兆2800億円)に達した。両社には極めて利益の大きい多額の収入が生まれたことになる。

  一部の開発者はこれを不公平で不当な「税金」だと不満を漏らす。アプリ購入だけでなく、フォートナイトのように人気のピックアックス(つるはし)などデジタル兵器やコスチューム、装備品などアプリ内で購入されるものにも適用されることには反発が特に強い。

3.アップル側の主張

  アップルはアップストアの成功は厳格な規約に直接関係していると主張。アプリの管理や高い品質基準の維持に相当な資源を投じていることを理由に挙げた。同社の課金システムによってアップストアを使う消費者は円滑で簡単な購入で済み、詐欺行為から守られている。しかし、アップルは自社の利益を最大化するための口実を探し出しているだけだと指摘する開発者も増えている。

4.アプリメーカーの対応

  音楽ストリーミングを手掛けるスポティファイ・テクノロジーやデートサービスを展開するマッチ・グループはエピックなど11社・団体と共に、アップルやグーグルにアプリストアの規約変更を求める団体を結成した。大半の有料アプリやサブスクリプションにアップルが課している30%手数料も批判している。

5.消費者への影響

  アップストアを巡るアップルの支配力が弱まった場合に消費者が恩恵を受けるかははっきりしない。開発者がアップルにこれまでのような額を支払う必要がなくなれば、消費者がモバイルアプリやアプリ内のアイテムに払う金額も下がる可能性はある。

  スウィーニー氏はエピックのオンラインストアは開発者に低めの手数料を課し、アップルよりも低い利益率で運営すると話しているが、開発者が浮いた金を懐に入れるだけに終わる可能性もある。

6.テクノロジー企業にとっての影響

  世界的に当局がアップルやグーグルなど巨大テクノロジー企業を独禁法違反の疑いで調べているさなかだけに、米裁判所の判断は幅広い影響を及ぼすかもしれない。課金が不公平と見られれば利用者の信用を失う恐れもある。今回の法廷闘争でエピックがゲームファンや開発者から好意的に見られているとの声が既に一部アナリストから上がっている。

原題:Behind the Apple Versus Fortnite App Store Battle: QuickTake(抜粋)

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