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ソフトバンクGが最高値、孫社長のAI革命期待でITバブル超え

更新日時
  • 昨春以降上げピッチ強める、資産売却や自社株買い、非公開化観測も
  • 「上がってもまだピークではない」-孫社長の株価水準観

ソフトバンクグループ株が21年ぶりに終値での上場来高値を更新した。この間、日本テレコムや英ボーダフォン、米スプリントの買収で通信事業者としての性格を一時強めるなど企業の顔は時代とともに変わったが、一貫していたのは孫正義社長の投資家としての顔だ。人工知能(AI)による社会変革を目指す孫氏への期待感は、ITバブル期を超えた株式市場での評価に表れている。

  16日の日本株市場でソフトバンクGの株価は前日比4.2%高の1万420円と続伸し、2000年2月18日の最高値1万111.1円(株式分割考慮)を上回った。同社は1981年に日本ソフトバンクとして創業し、94年に株式を店頭公開、98年に東京証券取引所1部に上場した。ITバブルの崩壊以降は長期にわたり低迷していたが、昨年3月を直近の底に上昇の勢いが増している。

Masayoshi Son

1994年のソフトバンク上場時の孫正義社長

  投資先の公正価値減少や米格付け会社による格下げなどが嫌気され、急落していた株価が昨春反転するきっかけとなったのが最大4兆5000億円の資産売却プログラムや自社株買い計画の発表だ。さらに、株式非公開化を巡るアナリストリポートや報道が相次ぎ、一段高となった。8日の決算会見で非上場化について問われた孫社長は、「ノーコメント」と回答した。

  20年10-12月期(第3四半期)決算は、ファンド事業の好調で3四半期連続の黒字となり、アナリスト予想を大きく上回った。ブルームバーグ・データによると、決算発表後にジェフリーズ証券、HSBC証券の2社が目標株価を引き上げている。

  東海東京調査センターの石野雅彦アナリストは、「自社株買いを含めてやってきたことが成果として表れている」と分析し、「世界的な株高によってビジョン・ファンドの評価が高まっていることが追い風」との認識を示した。

ソフトバンクG純利益1兆円超、ファンド好調で3四半期連続黒字

ITバブル以降のソフトバンクG株の推移

  孫社長は8日の会見で、「今われわれは産業の転換の入り口にある。AI革命は始まったばかりだ」と指摘。株価水準については「少々のでこぼこは下がったらチャンスで、上がってもそこはまだピークではないというのが僕の見方」と述べた。

ソフトバンクGの孫社長、年間20社上場に意欲-「金の卵の製造業だ」

  今後の株価上昇の鍵を握るのは、出資先企業の新規株式公開(IPO)でどの程度投資回収できるかだ。孫社長によると、今後は「年間20社くらいのリズム感で上場させたい」という。IPOを計画している企業には韓国の電子商取引大手クーパンやインドネシアのネット通販大手トコペディア、中国の配車サービス滴滴出行などが含まれている。

  一方、懸念材料はソフトバンクGが筆頭株主として25%弱を保有し、同社資産ポートフォリオの多くを占めているアリババ・グループ・ホールディング株の動向だ。SMBC日興証券の原田賢太郎クレジットアナリストはリポートで、外国企業説明責任法(HFCA法)による米国での上場廃止リスクが残るほか、子会社アント・グループのIPO延期などもあり、「雲行きが怪しくなっている」との見方を示した。

SoftBank CEO Masayoshi Son Presents Third-Quarter Results

決算会見に登壇した孫社長(20年2月)

(5段落に市場関係者の見解を追記します)
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