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「ふたりの約束 アウシュヴィッツの3つの金貨」 強制収容所での奇跡の実話 「子どもの本棚」オススメ3冊

「ふたりの約束 アウシュヴィッツの3つの金貨」

 トビーとレイチェルはユダヤ人の姉妹。強制収容所でむなしい労働に明け暮れる。働けない者を待つのは死? 心の支えは、3枚の金貨の入ったブリキ缶だ。両親がナチスに連行される前、本当に必要なときに使うよう、姉妹が絶対離れ離れにならないよう、約束とともに渡してくれたのだ。ある朝、具合が悪くなって連れ去られた妹を、トビーは命がけで救いにいく。

 互いへの愛が勇気に、約束は奇跡につながる。姉妹の娘が、それぞれの母から聞いた話をもとに書いた実話だ。ヴィクトリア朝の写真をデジタル技術で取り込んだ、コラージュによる画面が、不思議な実在感で感情を揺さぶる。アウシュヴィッツ解放75周年。理不尽な差別も、遠い昔の出来事とは思えない。(プニーナ・ツヴィ、マーギー・ウォルフ文、イザベル・カーディナル絵、金原瑞人訳、西村書店、税抜き1600円、小学4年生から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「コピーボーイ」

 前作「ペーパーボーイ」から6年経ち17歳になったヴィクターは、地元の新聞社で雑用係(コピーボーイ)として働いている。人生の大先輩として慕っていたスピロさんが亡くなり、ヴィクターは生前からの約束を果たそうと決意する。それは、「ミシシッピ川の河口に遺灰をまくこと」。約束を実現するための独り旅の中で、ヴィクターは様々な人と出会い、恋もし、吃音(きつおん)とも折り合いをつけて、新たな道を切り開いていく。若い読者にも、困難を乗り越えて未来を信じる力を与えてくれそうだ。(ヴィンス・ヴォーター作、原田勝訳、岩波書店、税抜き1800円、中学生から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「おひめさまになったワニ」

 コーラ姫は、王様とお妃(きさき)様に愛されてしあわせにくらしていましたが、ふたりの期待が大きいのと毎日が遊ぶひまもないくらい忙しいことにうんざりしていました。そこで妖精に手紙を書いて助けを求めると、やってきたのがなんとワニ。そのワニが姫の身代わりになり、1日だけ自由にしてくれるというのですが……。初めてお城の外に出た姫が、両親に自分の意見をはっきり言うところは痛快です。お騒がせなワニの行動におなかをかかえて思いっきり笑える幼年童話。(L・A・シュリッツ作、B・フロッカ絵、中野怜奈訳、福音館書店、税抜き1600円、5歳から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】=朝日新聞2020年4月25日掲載