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「かわいいは正義」サンリオの街・多摩市に登場したキティちゃんのデザインマンホール

マンホーラーの巡礼――多摩編 #2

2020/04/22
note

 下水道広報を使命とするデザインマンホール蓋は、地域の観光資源である神社仏閣、名所、風景、特産品、祭り、芸能などを蓋デザインの素材にした。いつの間にか、蓋鑑賞を趣味とする「マンホーラー」が増えた結果、蓋そのものが観光資源化していく。観光資源をデザインの素材にしていった蓋が、観光資源そのものとなっていった。大変面白い現象だ。 

 今回紹介する蓋は、観光資源化のために東京都が予算を出して作った新デザインマンホール蓋だ。多摩地区の府中市、東久留米市、多摩市をめぐっていきたい。

※4月20日現在、新型コロナウイルスの影響でスタンプラリー、マンホールカードは中止となっています。再開予定はどちらも未定ですが、いずれマンホールめぐりができるようになる日のために情報として記しておきます。

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府中市 ふちゅこま蓋

府中市――設置している場面に出くわした

 府中市は11種類もの新デザインマンホールを設置した。やる気まんまんだ。4つの地区に分散して設置している。府中駅前けやき並木通り、下河原緑道、府中市立片町文化センター付近、この3つは歩いて巡ることが可能だ。もう1つは西武多摩川線・多磨駅地区だ。こちらから紹介していく。

 ラグビーワールドカップ2019公式マスコット「レンジー」のデザインマンホール蓋だ。イングランド、フランス、南アフリカのキャンプ地となったことが由来らしい。ちょうど設置するところに立ち会うことができた。

府中市 ラグビーワールドカップ2019公式マスコット レンジー蓋(多磨駅地区)
住所:東京都府中市朝日町3-8 西武多摩川線 多磨駅より徒歩7分

 蓋を入れる瞬間を見られる。ワクワクが止まらない。非日常感に興奮が抑えられないが、ワーワーキャーキャーしても迷惑なだけなので静かに見守った。

 
 

 この蓋はデザイン画像を上から貼っただけ。設置している時の写真を見ると、どういうことか分かりやすいと思う。デザイン画像が貼っていない蓋本体を設置している。

 

 蓋本体を設置した後に、デザイン画像を後からつけている。このメーカーのこの蓋の場合、裏側からネジ1本でとめるだけだ。ものの1分で蓋本体との接続が完了した。あっけないが、そこがすごい蓋だなと思う。簡単にデザイン画像を交換できるというメリットは大きい。やろうと思えば毎日デザインを変えることも可能だろう。

 デザイン画像を簡単に交換できる蓋は、一過性のイベント広報や、広告に利用するのが最適だなと思う。電信柱に広告があるのだから、蓋に広告があっても良い。実際に企業広告をマンホール蓋にいれている市町村もある。石川県かほく市は2014年から企業広告を蓋にいれている。埼玉県所沢市、愛知県豊川市も蓋の広告事業をはじめている。

 東京都も取り組むと良い。渋谷駅前、新宿の繁華街などでやれば良い広告料収益になるかもしれない。景観条例とのかねあいもあるだろうが、都バスのラッピングバスのように上手く収益化したら良いと思う。あまりにあっさりデザイン画像を取り付けたのを見て、その思いを強くした。願わくばその財源でちゃんとした鋳物蓋を作って観光資源化していただきたい。

府中市――レンジー蓋 ご当地キャラでは無いので予算が出ず

 ラグビーワールドカップ2019公式マスコット「レンジー」の蓋は、府中駅前の、けやき並木通りにもう1枚ある。

ラグビーワールドカップ2019公式マスコット レンジー蓋(けやき並木通り地区)
住所:東京都府中市宮町1-41 府中駅前 けやき並木通り 駅から出て左側の歩道

 このレンジー蓋の2枚、実は東京都の観光資源化事業の予算で作られた蓋ではない。事業応募したが、「ご当地キャラクターではない」という理由で予算が貰えなかった。

府中市 レンジー蓋

 それでも、府中市は他の予算で作った。なので東京都から発表されている新デザインマンホール蓋の情報からは漏れている。府中市のホームページやリーフレットでは情報発信されている。府中市はがんばった。偉い。聞いたか足立区。予算が東京都から出なくても、作りたいものは他の予算をとってきて作ったんだ。やろうと思ったことはやる。いいぞ府中市。企画に責任感がある。

 でも、足立区。大丈夫だ。足立区も正しい。補償がないから自粛できないというのと同じだ。一方的に自粛を求めるのは良くない。今後も斜め上の数で勝負をしかけて欲しい。

 しかし、府中市にも言いたいことがある。シンボルマークや文字をごちゃごちゃ入れたデザインにはお役所的な醜悪さを感じる。事なかれ主義的に全部描いてピンボケしている。残念だ。ラグビーワールドカップ2019公式マスコット「レンジー」を蓋に活用するアイデアは良かった。しかし、なぜ今、ここに作るのか。記憶にとどめ、遺産とするために作りたいなら方法が違う。調布市の蓋を見習ってほしい。

調布市 ラグビーワールドカップ2019日本大会蓋

 調布駅前、西調布駅・飛田給駅から東京スタジアムへの経路上に合計50枚設置されている。全面鋳物のデザインマンホール蓋だ。耐久性のあるデザインだ。素晴らしい。スタジアムへ向かう路上の蓋は観客にとって2019年のラグビーワールドカップを思い出すいい遺産になっている。設置場所にもセンスを感じられる。調布市は良い仕事をしている。

府中市 ふちゅこま正面向き蓋
住所:東京都府中市朝日町3-5 西武多摩川線 多磨駅より徒歩7分 武蔵野の森公園近くの歩道

 府中市マスコットキャラクター「ふちゅこま」をロードレースバージョンにしたそうだ。東京オリンピックの自転車競技ロードレースが、府中市にある武蔵野の森公園からスタートすることにちなんでいる。ラグビーは1年遅れで作ったが、オリンピックは開催年に合わせて作った、と思いきやオリンピックが延期になった。つくづく因果だなと思う。