田中みな実が200万フォロワーの超人気インスタをやめた理由

    「いつか必ず揺り戻しが来るだろうと思っています、『嫌い』の側に」。冷静でストイックな仕事論、聞きました。

    2019年12月に、初の写真集『Sincerely yours…』(宝島社)を発売した田中みな実さん。発売2ヶ月を待たず累計発行部数60万部を突破し、今も快進撃を続けている。

    毎月のように雑誌の表紙をかざり、テレビ番組での発言はネットで大きな話題に。着用した服や愛用のコスメは完売続出。

    仕事にも美容にも妥協なく努力し続ける姿勢が「憧れの存在」として支持され、女性ファンが爆発的に増えている。

    今最も注目される存在と言えるが、その自己評価は実は驚くほど冷静だ。

    〈いつか必ず『嫌い』の側に揺り戻しが来るだろうと思っています〉

    〈仕事を選ぶ基準は、自分がやりたいかより結果を出せるかどうか〉

    「田中みな実」の今を、自らに分析してもらった。

    (※取材は2月末、都内スタジオでおこなった)

    「今もしっかり『嫌いな女子アナ』ですよ」

    ――この数年で一気に「女性の憧れ」と言われるようになったことに関してはどう感じていますか?

    不思議です。今もしっかり「嫌いな女子アナ」に名を連ねていますし、何も変わっていないんですけどね。こんな私を許容してくれる優しい時代に感謝です(笑)。

    ――写真集のお渡し会の来場者も老若男女幅広く、女性がかなり多かったと話題になりました。

    局アナのころから応援してくださっている男性や、私の親世代のご夫婦、小さなお子さんまで幅広い層の方々が足を運んで下さり正直驚きました。わざわざ時間を割いて私に会いに来てくれるなんて……泣けます。

    同年代でお子さんがいらっしゃる方にもたくさんお越しいただいて、「憧れです」「もう一度ファッションや美容を楽しもうと思えました」なんてお言葉をかけてもらえて。

    日々子育てに奮闘しながらも、この日のためにメイクをして、お気に入りのお洋服を着て会いに来てくれて……嬉しくて涙が出そうでした。

    こんな嬉しいこと、この先の人生でないんじゃないかって思うほど胸がいっぱいになりました。「がんばりすぎちゃダメ。でも、えらいぞ!」って一人ひとりを抱きしめたくなりました。

    あらゆることが「ふつう」だから

    ――使っているコスメ、着ている服が「田中みな実効果」で売り切れることも続出しています。

    お渡し会で、私がインスタや雑誌で使用していたコスメ、着用していたものと同じものを身に着けて来てくれた子がたくさんいて、初めて実感しました。

    「みな実ちゃんがおすすめしてたリップつけてきたよ!」ってニコニコしてくれるの! 愛おしいです、本当に。

    モデルさんや女優さんと違って、身長153センチで、際立って美しい顔立ちでも、美ボディーでもなんでもない。

    あらゆることがふつう、平均的だから、よりリアルに感じていただけているのかもしれません。自分を卑下するわけではなくて、客観的な意見として、そう思うんです。

    だからこそ、こういう世界に身を置く人間として、見苦しくない程度に自身を磨く必要があると感じます。そして、美ボディーなイメージをもっていただいている以上は、ご期待に添えるよう、努力し続けなければいけないな、とも……(笑)。

    また「嫌い」になられても

    ――ここまで引っ張りだこになると「私の時代がきた!」という感じはないですか?

    今は、いい意味で“気になって”いただけている貴重な時期だと有難く受け止めることにしました。

    いつか必ず揺り戻しが来るだろうと思っています。こういうのって波がありますからね。

    ――また「嫌い」の側に……。

    ええ、また悪い意味での“気になる”存在に。今からそのつもりで備えておきます(笑)。

    周りの評価で一喜一憂したくないんです。「嫌われている」と言われても受け止め過ぎず、「好きな人が増えている」と言っていただいたとしても、浮足立つことなく、気持ちはフラットであり続けたい。もちろん嬉しいけど!

    年齢を重ねると必然的に自分の魅せ方、考え方は変わっていく。それを周りがどう捉えるかということですよね。「何周もまわって、やっぱりあいつ嫌いだわ!」と思われても、それはそれで、受け止めざるを得ませんね。

    私は誰かに“好き”と思ってもらいたくて仕事をしているわけじゃないから。

    手を抜くなんてありえない

    ――自己評価が冷静ですね。田中さんの美容やお仕事への姿勢は「ストイック」と評されることも多いです。テレビや雑誌のオファーを受けるかどうかも企画ごとにご自身で判断していると聞きました。

    「自分がやりたいかどうか」より「結果を出せるかどうか」で判断することが多いです。

    例えばテレビのオファーをいただいたら、番組の企画と意図を理解できて、「これならできる」「制作者の意図に120%応えられる」と思ったものをお受けしたいと思っています。

    お金をいただいてお仕事をさせてもらっている以上、中途半端なことはできないですからね。やるなら相手の希望に添えないと。手を抜くなんてありえない。

    加えて、すべてのお仕事を受けていたら消耗する一方なので、制限はかけています。

    ――それは体力的にですか?

    確かに、それもそうですね。でも、それよりも恐れている“消耗”は出すぎることで出し切ってしまうこと。

    トーク番組に出たら出ただけ、消耗するのは当たり前のこと。芸人さんやタレントさんは、話術があって、それを生業としているから、消耗しても補填してゆく才能がある。

    私はエピソードも乏しく、話も大して面白くないから、同じ話ばかり何度も聞かされるのは苦痛でしょう。

    そうなってしまうと、せっかく呼んでくれた番組スタッフに申し訳ないし、何より見てくれている皆様に対してとっても失礼にあたるから。

    すべてをメディアに捧げる覚悟はないですし、プライベートな部分は守りたいし、大切にしたい。この世界に身を置き続けるなら、その感覚が麻痺しないように気を付けていたいです。

    インスタをきっぱりやめた理由

    ――ストイックという意味では、写真集のプロモーションのために開設したInstagramも毎日欠かさず更新されていました。

    折角の機会なので「期間限定なのに不定期じゃもったいない、毎日更新しましょう」と編集者に掛け合ってとことんやることにしました(笑)。

    23時を過ぎてから「ヤバい! 更新しなきゃ!」と慌てたこともしばしば。付き合ってくれた編集者さんに感謝しかありません。

    ――写真も文章もいつも丁寧で「何の気なしに覗いてみたら面白くてフォローしちゃった」人も多い気がします。田中さんの魅力、今好かれる理由が詰まっているような。

    自分の名前でSNSの類を何もやっていないので、ただ写真集のオフショットを披露するだけのインスタではなく、自身のことを発信できる場になればと思ったんです。

    こんな人なんだ、と人物に興味を持って写真集を手に取ってくださる方がいるかもしれないですしね。

    でも、まさかSNSをこんなに話題にしていただけるとは思いませんでした。毎日のようにネットニュースで取り上げていただき、皆さんおなかいっぱいになっていたんじゃないかな。

    でも、あれは私が望んで載せてもらっていたわけではないので、悪しからず!

    ――200万フォロワーを超える大反響になりながら、予定通りスパッとやめたのも印象的でした。そのまま続けようとか、自分のアカウントを作ろうとは考えませんでしたか?

    考えませんでした。大切な大切な写真集を知っていただくことを目的とした、期間限定のインスタグラムですから。

    時間も労力もかけてとことんやりこんでしまうし、真剣すぎるほど真剣にやってしまう性分なので、これを日常にしたら私生活がなくなるなと恐ろしくなったんです。もっとライトに捉えられたらよかったのでしょうけど。

    ――ここまで影響力があると「インフルエンサー」的な立ち位置になってもおかしくないと思うのですが、ご自身の核にあるのは「アナウンサー」なんでしょうか。

    肩書きへのこだわりはありませんが、「インフルエンサー」になることはないでしょうね。お渡し会でも「アナウンサーだった頃から好きでした」「今もアナウンサーだよー!」っていうやりとりを何度かしました(笑)。

    この写真集もそうですが、アナウンサー“だから”これはしない、やらない、という固定観念は、これでもだいぶ薄れてきました。

    忘れてはならないのは、今の私があるのはTBSのおかげだということ。女子大生気分で入社したずぶの素人を、“アナウンサー”にしてくれた。その技術は生涯失いたくない……と思いつつ、日々みるみる衰えていくのを感じています。

    アナウンサーは、れっきとした技術職なんです。その技術さえあれば、食いっぱぐれない。TBSで培ったその技術が、完全に衰えてしまう前に少しでも取り戻さなければ!

    ――「アナウンサーは技術職」という捉え方も冷静ですね。

    TBSを辞める時、研修の講師でもあった大先輩に「局をやめたら、厳密には“アナウンサー”は名乗れないんだよ。だから、“フリーアナウンサー”って本当は存在しない。あなたは、肩書なんて不要になるくらい、“田中みな実”で勝負できるようになりなさいね」と、考えさせられるお言葉をいただきました。今も先輩の言葉を度々思い出します。

    いつの日か、肩書きが要らなくほどに、「田中みな実」として胸を張って、お仕事ができたらいいな……って。今はまだ“フリーアナウンサー”という肩書きに甘えているから。

    ――わかってはいましたが……田中さん、ものすごく真面目な方なんですね……!

    あはははは。恐れ入ります!