「ウイルスの次にやってくるもの。もしかしたら、ウイルスよりも恐ろしいもの」
新型コロナウイルスの感染拡大の収束が見えない中、日本赤十字社が4月21日、YouTubeにそんな言葉を盛り込んだ啓発動画を公開した。
タイトルは"ウイルスの次にやってくるもの"。
どのような動画なのか。どんな思いを込めたのか。
日本赤十字社は、BuzzFeed Newsの取材に「この感染症の問題の一つは、嫌悪や差別が、感染者や感染が疑われる方など、『人』に向かっていくこと」と警鐘を鳴らす。
まずは、動画で流れるメッセージを見ていく。
"ウイルスから身を守るためには?きちんと手を洗うだけで、感染する確率はぐんと下がる。でも、心の中にひそんでいて、流れていかないものがある。"
"そいつは、お腹を空かせてるみたいで、暗いニュースや間違った情報を、たくさん食べて、どんどん育って、そして、ささやく。"
"先の見えない状況を、「もうみんな助からない」と。 誰にもまだ分からないことを、「誰かが隠しているのだ」と。"
"そいつは、人から人へと広まっていく。「あの人が病気になったのは、誰のせい?」「ウイルスが広まったのは、あいつのせいだ!」「世界がこうなったのは、あいつのせいだ!」"
"そいつは、まわりに攻撃をはじめる。人と人が傷つけあい、分断が始まる。"
"そいつは脅かす。「もしも感染していたらどうする?」「あんな風に言われたらどうする?」"
"みんな、熱があっても、隠すようになる。具合が悪くても、元気なふりをするようになる。"
"もう誰が感染しているか分からない。ウイルスがどんどん広がっていく。"
"鏡を見ると、そこに、もう、あなたは、いない。そいつの名前は、恐怖"
"ウイルスの次にやってくるもの。もしかしたら、ウイルスよりも恐ろしいもの。"
"わたしたちが恐怖に飲み込まれる前にできること"
"恐怖に餌を与えない。ときにはパソコンやスマホを消して、暗いニュースばかりを見すぎるのはやめよう。不確かな情報を、うのみにしないで、立ち止まって考えよう。"
"恐怖のささやきに耳を貸さない。恐怖は、話を大げさにして、おびえさせる。誰にもまだ分からないことは、誰にもまだ分からないことでしかない。そのままを受け止めよう。"
"恐怖から距離を取る。非難や差別の根っこに、自分の過剰な防衛本能があることに気づこう。冷静に、客観的に、恐怖を知り、見つめれば、恐怖はうすれていくはずだ。"
"恐怖が嫌がることをする。恐怖が苦手なものは、笑顔と日常だ。家族や友人と電話して、笑おう。いつものように、きちんと食べて、眠ろう。恐怖は逃げていくだろう。"
"恐怖は、誰の心の中にもいる。だから励ましあおう。応援しあおう。人は、団結すれば、恐怖よりも強く、賢い。"
"恐怖に振り回されずに、正しく知り、正しく恐れて、今日、わたしたちにできることを、それぞれの場所で。"
新型コロナウイルスによる「負のスパイラル」
なぜこの動画を制作したのか。その狙いを「負のスパイラルが、更なる感染の拡大につながっていくことを伝えたかった」と日本赤十字社の広報課の担当者は言う。
日本赤十字社によると、新型コロナウイルスは、「体の感染症」「心の感染症」「社会の感染症」の3つの顔を持つ。
そして、これらが「負のスパイラル」としてつながることで、更なる感染の拡大につながっていくと指摘する。
そのため、これまでもこの負のスパイラルを知り、断ち切るためのガイドをホームページ上で公開してきた。
今回、その内容をよりわかりやすく伝えたい、と絵本アニメーションでの表現を企図したという。
「不安や差別が、自らの感染を隠すことにつながり、感染拡大を引き起こすと考えられているため、大切なことを知っていただき、更なる感染拡大の防止に寄与したいと考えております」
その結果、約3分半のこの動画は公開後、150万回再生を超えている(4月30日現在)。
本当に戦わなくてはいけない相手は、ウイルスと恐怖
担当者は、新型コロナウイルス感染症の問題の一つを「嫌悪や差別が、感染者や感染が疑われる方など、『人』に向かっていくこと」と訴え、こう話す。
「本当に戦わなくてはいけない相手は、『人』ではなく『ウイルス』と、一人ひとりの心の中にある『恐怖』であり、多くの方々に負のスパイラルを知ってもらい、このスパイラルを断ち切らなければならないと考えております」
「人が団結し、励ましあい、応援し合うことにより、心の中にある『恐怖』を乗り越えることができます。そして、一人ひとりがそれぞれのいる場所で、今日、自分ができることに取り組んで行きましょう」