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日本青年会議所のアカウントに批判殺到、Twitter社は「想定外」。両者の見解は?

日本青年会議所は「憲法改正議論を起こす」目的で企画したアカウントが中国、韓国や報道機関への誹謗中傷などを繰り返し、謝罪に追い込まれた経緯がある。こうしたことから、「リテラシー」啓発を巡るJCとTwitterのパートナーシップそのものを疑問視する声が上がっている。

Twitter Japanが2月10日、情報・メディアリテラシーについて、若手経済人の組織の日本青年会議所(JC)とパートナーシップ協定を結んだと発表したことが、波紋を呼んでいる。

一体、何が起きているのか。BuzzFeed Newsは両者に取材した。

情報・メディアリテラシーの確立に向け、日本青年会議所とTwitter Japanはパートナーシップ協定を締結しました。全国に広がる日本青年会議所のネットワークと発信力を通じて、Twitterの公共の場での会話の健全性・公開性がさらに向上することを期待しています。 https://t.co/joihoXDZTX

Twitter Japanは2月10日、「全国に広がるJCのネットワークと発信力を通じて、Twitterの公共の場での会話の健全性・公開性がさらに向上することを期待しています」「JCのメディアリテラシー確立委員会がこれから毎週、リテラシーの理解やモラルを高めるのに役立つ情報をツイートしていきます」と、同社公式アカウントの一つで発表した。

しかし、このツイートが出た時点でのメディアリテラシー確立委員会の公式アカウントは、「発狂している」という言葉を使って特定の個人を批判するツイートをリツイート(RT)するなど、中立性や健全性に疑いがある状態だった(RTはその後、削除された)。

また、JCは政治からは独立し、特定政党や候補者の支援は、組織としては行わないとしている。一方で、会員に企業経営者ら地域の有力者が多いことから、麻生太郎財務相をはじめ多くの保守系政治家を輩出してきた。各地の選挙では個人の資格で保守系候補者の運動員として活動する会員も少なくない。

2020年代運動指針は「国民が国を愛する力を養うために、建国からの歴史認識を深める事業を行う」としており、保守色があることは否定できない。

さらに、2018年にJCが「憲法改正議論を起こす」目的で企画したアカウントが中国、韓国や報道機関への誹謗中傷などを繰り返し、謝罪に追い込まれた経緯がある。

こうしたことから、「リテラシー」啓発を巡るJCとTwitterのパートナーシップそのものを疑問視する声が上がっている。

まず、経緯を振り返る

パートナーシップ協定は2月10日、Twitterの公式アカウント「Twitter 政治」で発表された。

「多量の情報群を正確に読み解く力」「情報の真偽を見抜く力」「情報をスムーズに検索し、正しく活用する力」「適切な情報の発信を行う力」の能力向上を狙いとしているという。

そのうえで、以下のような言葉とともに紹介されたのが、日本青年会議所のアカウント「情報を見極めよう!」(@medialiteracy20)だ。

「日本青年会議所のメディアリテラシー確立委員会がこれから毎週、リテラシーの理解やモラルを高めるのに役立つ情報をツイートしていきますので、皆さん是非フォロー&積極的に会話に参加してください」

「情報を見極めよう!」の目的は「メディアリテラシーの理解や発信者側のモラル向上を目的につぶやき啓蒙活動」にあるとされている。

しかし、このアカウントは、協定が発表された時点でジャーナリストの津田大介さんを「発狂」と名指しして批判するツイートや、コロナウイルスをめぐって誤った情報や過度に不安を煽る一部のツイートが問題視された高須克弥医師(JC出身)のツイートを連続でRTや「いいね」していた。

Twitter上では、アカウントの運用やパートナーシップ協定そのものを批判、疑問視する声が一気に噴出した。

過去に炎上「宇予くん」とは

JCのTwitterをめぐっては、中国韓国や報道機関への誹謗中傷などを繰り返していたアカウント「宇予くん」が2018年に問題視され、閉鎖とお詫びに追い込まれた。

このアカウントは「憲法改正論議をより充実させ、憲法改正への契機とすべく、国民レベルでの議論をツイッター上で巻き起こす目的で企画」されたもの。「憲法改正に関する論点や歴史、愛国心など保守的なことを面白くつぶやき、拡散をさせるという」目的があったという。

しかし、投稿されていたのは、「中国は世界の嫌われ者。韓国は中国の舎弟。日本はこのバカ二国と国交断絶、もしくはミサイル爆撃したほうがいい」などといったツイートや、朝日新聞やNHK、共産党や社民党などを誹謗中傷する内容だった。

この問題をめぐっては、ネット上に、アカウントの企画段階のものとみられる内部資料が流出していた。「対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う」などと記載されていたことも明らかになっている。

JCは当時、「全て担当者の個人的見解である、関係ない機関・団体その他への誹謗中傷や品性を欠いた内容」が投稿されてしまったと弁明した。

こうした問題があったことに加え、今回の「情報を見極める!」の運用でも「偏り」があるように捉えられかねないリツイートが相次いでいたため、批判が広がった。

Twitter社の見解は?

BuzzFeed Newsの取材に応じたTwitter Japanは、今回の問題について、こうコメントした。

「日本青年会議所さんのアカウントのフォロー呼びかけについて本アカウントからは情報リテラシーに関するものだけが投稿される予定と聞いておりました。発信するコンテンツについては事前にアドバイスをするなどして協力していく予定でしたが、このように特定の企業や会員のリツイート等は想定しておらず、当初ご提示いただいたとおりの運用をしていただくよう、既にお願いをしているところです」

また、「宇予くん」をめぐる問題についてはTwitter側も把握していたという。その点については、こう答えた。

「JCの現行の執行部体制が『宇予くん』については過ちであったと認識しており、だからこそ真摯に向き合い信頼回復に努めたいと考えているとの説明を受けました。そしてそのための具体的な行動としてリテラシー向上に取り組んでいる、と理解しています。過去を反省し前向きに努力していこうとする日本青年会議所の姿勢を支援したいと考えました」

パートナーシップ協定についてはJCから連携の相談があったという。Twitter側は「全国3万人の会員ネットワーク」がリテラシーに関する啓発の「非常に重要なオーディエンス」として意義があると考えた、としている。

そのうえで、今回の取り組みは「JCが所属する団体向けに展開するソーシャルメディアのリテラシー教育を支援するというもので、政治的な活動を後押しするものではありません。またJCは政治団体ではありません」とも述べた。

とはいえ、JCは前述の通り多くの出身政治家がおり、その大半を国政では自民党、地方議会でも自民党か保守系無所属が占める。こうしたJC出身者の議員連盟との交流会も各地で開かれている。

「宇予くん」の企画設定にもある通り、自民党と足並みを揃えたかのような、「憲法改正」に向けた情報発信も行っている。そうした「政治性」をどう捉えているのだろうか。

この点についても尋ねたが、Twitter Japanは同様の回答を繰り返した。

なお、今後については「現状はお伝えした通り、ソーシャルメディアのリテラシー啓発を支援するものでしたが、内容については、現在協議中であります」としている。

一方の青年会議所は…

BuzzFeed NewsはJCに「パートナーシップ協定の経緯と狙い」「アカウントの運用方法や指針」のほか、「宇予くん」の問題を連携に向けてどう解決したのかに加え、「情報を見極めよう!」アカウントにおけるRTや「いいね」の経緯や理由、さらには今後の対応などについて質問を送付した。

各社からの取材への統一見解として、JCからあった回答は以下の通りだ。宇予くんについては「真撃に反省をしている」としたが、今回のRTに関するコメントはなかった。


(1)パートナーシップ協定の経緯ついて

当会は以前よりメディアリテラシーに関する事業を実施してきました。その中で、ソーシャルメディアリテラシー教育の必要性を主張されている Twitter Japan株式会社に対し提携のご提案をし、協定を結ぶ運びとなりました。

(2)本協定のねらい

近年、高度に発達した情報伝達手段の普及により、日常生活において一般的に必要とされることとなったメデ イアリテラシーについて、多量の情報群を読み解きその真偽を見抜き、必要な情報を引き出し正しく活用し、 適切な情報の発信を行う能力の向上ないし教育の確立を、協力して実現することを狙いとしています。

(3)本協定における当会の取組みについて

Twitter上にて毎週ツイートを展開し、メディアリテラシーについて議論を促していくことを目指しておりました。

(4)宇予くん問題に対するご批判について

過去に所属メンバーによる言動が問題視された当時において、公式見解としてお詫び文を発信して対策を実行しております。その後も、真撃に反省をしているところであり、今後も信頼回復に努めて参ります。

(5)宇予くん問題に対する当会の対応について

コンプライアンスチェックの仕組み並びにガバナンスの見直しを実施しました。会員向けにはコンプライアンス研修の実施を適宜行っております。

(6)政治的要素に対するご懸念について

当会は中立公正の立場を主とし、特定の個人又は法人、その他の団体の利益を目的として活動をしておりません。また、特定の政党のために活動をするということもございません。