黒川検事長「私の行動は緊張感に欠け、軽率にすぎるもの」 辞表を提出、安倍首相は「総理大臣として当然責任ある」

    「検察庁法改正案」をめぐる問題の渦中にいた東京高等検察庁の黒川弘務検事長(63)が5月21日、辞表を提出。安倍首相は「総理大臣として、当然責任はあると思っています」と語った。

    「検察庁法改正案」をめぐる問題の渦中にいた東京高等検察庁の黒川弘務検事長(63)が5月21日、辞表を提出した。

    緊急事態宣言で外出自粛が要請される中、産経新聞の記者や朝日新聞社員と賭けマージャンをしていたことが、週刊文春によって報じられていた。

    安倍晋三首相は21日夕、報道陣の取材に対して、黒川検事長の定年延長に関する人事は「法務省・検察庁によって整理がなされたが、最終的に内閣で決定したため、総理大臣として、当然責任はあると思っています」とコメント。「ご批判は真摯に受け止めたい」と語った。

    これまでの経緯

    黒川検事長は安倍政権に近い存在と言われ、世論の大きな反発を呼んだ「検察庁法改正案」の渦中にいた。

    まず、安倍内閣は今年1月、本来は2月に定年を迎えるはずだった黒川検事長の定年を延長することを閣議決定した。

    この閣議決定について、安倍首相は、これまでの政府見解では検察官に適用されないとされてきた国家公務員法の「法解釈を変更して適用した」と説明。この法解釈変更について、法務省は「口頭で決裁を得た」と説明しており、文書で記録を残していないことも問題視されていた。

    その後、政府は国家公務員の定年などについて定めた「国家公務員法改正案」と束ねる形で「検察庁法改正案」を国会に提出した。

    この改正案は、検察官の定年を63歳から65歳に引き上げ、次長検事や高検検事長などの検察幹部については、63歳でそれぞれの役職を退く「役職定年制」を設けるというもの。

    ただし、内閣や法務相が「公務の運営に著しい支障が生じる」と判断した場合は、幹部は役職定年を超えて勤務し続けることができるという条項が含まれていた。

    そのため、特定の検事が本来の定年を超えて役職に就き続けることが可能になるなど、政権が検察庁の人事に介入する道を開き、検察の独立性を損う恐れがあるとして、元検事総長などをはじめ、識者や司法関係者、世論から大きな反発を呼んだ。

    法案は与党が強行する形で衆院内閣委員会で審議が始められたものの、Twitter上でハッシュタグ「#検察庁法改正案に抗議します」を付けて抗議する動きが広がり、最終的には今国会での審議は見送られる形となった。

    報道関係者と「賭けマージャン」

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    こうした中、週刊文春が5月20日、黒川検事長が緊急事態宣言が発令されている5月1日から2日未明にかけて、都内で産経新聞の記者や朝日新聞社員と賭けマージャンをしていたことを報じた。

    森雅子法務相は5月21日、法務省として黒川検事長に聞き取り調査を行ったことを発表し、「5月1日と13日の2回にわたって、報道機関関係者3名とマンションの一室で会合し、金銭をかけてマージャンを行なっていたことがわかった」と明らかにした。

    【速報】黒川検事長 辞表を提出 東京高検の黒川検事長が新聞記者3人と賭け麻雀を行っていた問題で、森法務大臣は安倍総理に対し黒川氏が辞表を提出したことを明らかにした。明日の閣議で了承される見通し。

    「この行為は誠に不適切というほかなく、極めて遺憾」といい、黒川検事長は訓告処分とした。また、同日、黒川検事長から辞表が提出されたと言い、5月22日の閣議決定で承認する運びだと説明した。

    安倍首相も同日夕、「(黒川検事長の人事は)法務省・検察庁によって整理がなされたが、最終的に内閣で決定したため、総理大臣として責任はあると思っています」と語った。

    今回の問題を受けて、「検察庁法改正案」を取り下げる予定はあるかという質問に対しては、「公務員全員の制度改革にあたっては国民の皆様の意見に耳を傾けることが不可欠、国民の皆様のご理解無くして前に進めることはできないと思う」と答えた。

    新型コロナウイルスの影響で「社会的な状況も大変厳しい状況にある」なか、党内から「法案を作った時とは状況が違うのではないか」と進言を受けたと言い、「そういった意見があると承知しています。そうしたことも含めて慎重に検討していく必要があるのではと思っています」と語った。

    緊張感に欠け、軽率にすぎる行動

    日本テレビ朝日新聞によると、黒川検事長も5月21日、コメントを発表した。全文は以下の通り。

    本日、内閣総理大臣宛てに辞職願を提出しました。この度報道された内容は一部事実と異なる部分もありますが、緊急事態宣言下における私の行動は、緊張感に欠け、軽率にすぎるものであり、猛省しています。このまま検事長の職にとどまることは相当でないと判断し、辞職を願い出たものです。