狙われた直球…中日・梅津KOの予兆は“第1球” バッテリーに疑念、仲間に勇気与えた広島・1番ピレラの力
2020年6月29日 10時53分
渋谷真コラム・龍の背に乗って
◇28日 中日●3ー10○広島(ナゴヤドーム)
竜の梅津、コイの森下。両チームのトッププロスペクト(最有望選手)のマッチアップは、一方的な展開となってしまった。動いたのは2回だが、その予兆は開始第1球にあった。梅津の148キロを1番・ピレラが振り抜いた。右翼・平田のグラブには収まったが、広い本拠地のウォーニングゾーンまで飛ばされた。
以後、菊池涼(左翼線二塁打)、西川(中前打)まで全7球ストレートを選び、とらえられた。梅津にとってフォークとともに自慢の球種。それが今日はおかしいのかと思わせられた。増やした変化球が2回につかまった。これがプロの怖さなのか。僕には梅津のストレートが悪かったとは思えない。前週のヤクルト戦(神宮)を見た広島が「ストレートを狙え」とミーティングで戦略を立てた結果だと思う。
2回の左前適時打、4回の左越え本塁打はスライダーを仕留めた。新外国人が1番を任される打線。広島は4番(鈴木誠)に迷うことはない。3番の西川、2番の菊池涼も早々と埋まる。1番をどうするか。無難に選べば田中広。だが、開幕前にピレラを置くことに決めた。
「みんなに勇気を与えられるような選手を置きたい」。朝山打撃コーチは人選のポイントをそう説明してきた。勇気。梅津のストレートをねらい、ヒヤリとさせたあの右飛は、中日バッテリーにはストレートへの疑念を植え付け、仲間に勇気を与えたのかもしれない。
「(本塁打は)いい感触で打てた。打席の中で修正でき、甘いスライダーをとらえられた。ベストを尽くして打席に立つことを心掛けている」
前日までは左翼だったが、来日後、初めて三塁で先発出場した。これにより、松山(一塁)、堂林(左翼)と3人同時起用が可能となる。カープアカデミー育ちではなく、大リーグ経験(通算17本塁打)のあるベネズエラ人。いくら正しい戦略を立てようと、選手に実行する能力がなければ成功しない。広島の打者にはそれがある。梅津KOの序章は、1回だったのだ。
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