ポルシェの歩み:スポーツカーで大成功しSUVやEVにも進出するドイツメーカー【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■創業者は、フォルクスワーゲン・タイプ1を作ったポルシェ博士

●911から始まった圧倒的な走りとスタイリッシュなデザインは、唯一無二の存在

ポルシェは、フォルクスワーゲン傘下の世界で最もメジャーなスポーツカーメーカーのひとつです。伝統の主力モデル911は、今もなおRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトと水平対向エンジンを採用している世界の名車です。

数多くの憧れの高級スポーツカーを世に出しているポルシェのこれまでの歩みについて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:ポルシェ AG

・代表経営責任者(CEO):Dr. オリバー・ブルーメ

・創立:1931年

・資本金(2018.12現在):未発表

・従業員数(2018.12現在):3万2325人

・販売台数:28万台(2019.1~2019.12)

●起源

ダイムラーで活躍したポルシェが、1931年に設立したコンサルタント設計事務所が起源です。ポルシェの設計事務所は、多くのメーカーからのクルマの設計と開発の委託業務を行っていました。

1933年に、ナチスのアドルフ・ヒトラーから国民車(ドイツ語でフォルクスワーゲン)の設計を依頼されて設計したワーゲン・タイプ1(ビートル)は、1938年に量産化が始まりました。

●メーカーとしての歩み

第二次世界大戦中は、軍用車両や戦車などの設計を行いました。戦後、自社モデルの第1号となったのが、ポルシェ356です。設計は、フェルディナントの息子フェリー・ポルシェが設計し、1948年から生産を始めました。

ポルシェ 356
1948年、356

高い評価を得て17年間生産されたポルシェ356に代わり、1963年に登場したのがポルシェ911です。ポルシェ911は大ヒットとなり、モデルチェンジを繰り返しながら現在も世界中で圧倒的な人気を得ています。

ポルシェ 911
1963年、911(901)

ポルシェ911のイメージが強烈すぎて、他のモデルの販売が伸びない時期もありましたが、現在は棲み分けを明確にして911以外のモデルも順調に販売を伸ばしています。

●往年の代表的なモデル

1938年から生産が始まった最初のポルシェとなる356は、排気量1.1L空冷水平対向4気筒エンジンをリアに搭載し、後輪を駆動するRR(リアエンジン・リアドライブ)を採用。後継のポルシェ911もRRレイアウトで、1.2L空冷水平対向6気筒を搭載したモデルからスタートしました。356に対して、安全性と性能を向上させ、さらに運動性能を極めたカレラRS2.7(通称ナナサンカレラ)が設定されました。

・1973年、ポルシェ911は北米の安全基準に適合させるため大型バンパーを装着した第2世代に進化、ターボも設定(930ターボ)

911以外も発売されましたが、911に比べると注目度はいま一歩でした。

・1969年、ミッドシップの914発売

ポルシェ914
1969年、914

・1975年、FRレイアウトの924/944発売

ポルシェ924
1975年、924

・1977年、次世代ポルシェのフラッグシップ928が登場、フロントミッドのFRレイアウトでV8エンジンを搭載

ポルシェ928
1977年、928

●最近の代表的モデル

ポルシェが新世代にステップアップするきっかけになったのは、1986年に登場した200台限定の959でした。レース用エンジンと電子制御4WDを組み合わせたスーパースポーツカーで、1989年に登場した3代目911(964)のベースモデルとなりました。

・1991年、FRレイアウトの944の後継として968が発売

ポルシェ968
1991年、968カブリオレ

・1996年、ミッドシップ搭載のボクスター発売

911は、1993年に第4世代(タイプ933)に移行し、1997年には911初のフルモデルチェンジ(タイプ966)を行い、30年以上採用してきた空冷から水冷エンジンに変更。さらに、タイプ997、タイプ991、992へと進化しました。

ポルシェ911(992)
2018年、911(992)

・2002年、V8エンジン搭載のSUVカイエンが発売

・2009年、初のフル4シーターの4ドアスポーツサルーンのパナメーラが発売

ポルシェ パナメーラ
2009年、パナメーラ

・2014年、カイエンより小型のSUVマカン発売

・2019年、EVのタイカン登場

ポルシェ タイカン
2019年、タイカン

ポルシェは、水平対向エンジンとRRレイアウトを採用した独創的なスタイリングの911を中心に、ミッドシップスポーツやスポーツセダン、SUVなどユーザーの多様性に配慮してラインナップを揃えています。

クルママニアにとっては、一度は乗ってみたい、手にしたいと憧れる特別なクルマです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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