フジテレビ系ドラマ「僕たちがやりました」第1話。下ネタ、暴力、未成年の喫煙など、火曜の21時にしては過激すぎると、ネット上では問題視しているような発言が目立つが、そういう意味では、第1話は序の口だと思う。

「僕たちがやりました」10人殺したけど普通の高校生、今後どこまで攻めるかカンテレの本気に期待
イラスト/小西りえこ

そこそこってなんだろ?


「俺の人生そこそこでいい」

主人公のトビオ(窪田正孝)が度々口にするセリフだ。

トビオは、ニートで実家が金持ちのパイセン(今野浩喜)の財力を使い、友達の伊佐美(間宮祥太朗)、マル(葉山奨之)と一緒に遊びまくる日々を送る。カラオケ、ローラースケート、ボウリング、ダーツ、果ては高校生では食べられないような豪華な食事とやりたい放題だ。親に何にも言われず、先生にもそれほど怒られず、自由。他の高校生が羨ましがる、最高に見える青春の過ごし方をしている。

それでもトビオは「そうそうこれでいいんだよ。そこそこ楽しけりゃ幸せだ」と、“そこそこ”しか満足しかしていない様子。


このそこそこというのは、本気度のことだろう。部活も勉強も恋愛も真面目に取り組む気になれない。かと言って一緒につるんでいる仲間達も、大親友って訳じゃないし、パイセンなんて所詮カネヅル。なんとなくは好きかもしれないが、居ないところで「ああはなりたくない」とハッキリと口にしている。

トビオは、何かに本気になれる人間に劣等感を感じているのかもしれない。だから「そこそこ」という言葉を使って、自分を納得させているのだろう。


やりたい事とか、将来の漠然とした不安がそうさせる。でも、これは何も特別な事ではなく、割りと学生あるあるなんだと思う。いや、むしろ社会人のほうがそうなのかもしれない。トビオはどこにでもいる普通の少年だ。
「僕たちがやりました」10人殺したけど普通の高校生、今後どこまで攻めるかカンテレの本気に期待
原作1巻

日常を壊したもの


ある日、マルがヤバ校に拉致されて、ボコボコにされてしまう。傷だらけのマルを見たトビオは、復讐を提案する。これは、友情からの発想だけではなく、ただの暇つぶしという意味が強く含められている。
現に、行動に移している時のトビオ達は、楽しそうだった。
トビオ、マル、伊佐美、パイセンは、夜中にヤバ校に忍び込み、パイセンが大金を投じた“男のC4爆弾”を至るところに仕掛けた。翌日の昼休み、4人は、屋上から遠隔操作で爆弾を爆発させ、ビビッて走り回るヤバ校生徒を見て大喜び。しかし、窓ガラスを割る程度の威力のはずが、なんの手違いか一発だけ大爆発を起こしてしまい、ヤバ校は大火事になってしまう。事の重大さに面を食らい、4人は立ち尽くすだけだった。
「僕たちがやりました」10人殺したけど普通の高校生、今後どこまで攻めるかカンテレの本気に期待
イラスト/小西りえこ

「俺の人生、そこそこで良かったでんすけど」
幸せな日常を壊したのは、ただの暇つぶしだった。
こんなハズじゃなかったの極みだ。起きてしまった事件の重みと、本人たちの目的があまりにもかけ離れている。

次回予告によると、死者は10人。未成年じゃなかったら死刑になってもおかしくない。こんな大事件を起こす様な人物に、普通なら全く持って共感できない。しかし、トビオには、ギリギリで共感できてしまう。


前述もしたが、それはトビオがごく普通の少年だからだ。普通に臆病で、普通に女子に興味があり、普通に将来に不安を覚えている。

ただ、トビオが普通じゃない部分が二つほどある。爆弾を作れるほどお金と暇を持て余したニートで大金持ちのパイセンという人物がそばにいたことと、通っている高校の目の前に爆弾を仕掛けてまで復讐したい人間が集まるヤバ校があったことだ。

この二つの非日常と若さ故の些細な過ちが、今回の大きな事件に繋がってしまっただけなのだ。だから、完全に自業自得なのに、トビオはかわいそうなのだ。


これからドンドン過激な方に逃げます


大火事になったところで、第1話は終了。第2話からは、現実からの4人の逃避行が始まる。事件からも逃げるし、向き合いたくない真実からも逃げるし、仲間の考えていることも聞かない。怖いから。

そして現実から逃げた先がまた、過激過ぎて火曜21時にふさわしくないものだったりする。しかし、その描写を避けると、物語の本質に関わってきてしまうので、安易にカットは出来ないはず。「僕たちがやりました」が今後も面白いかどうかは、制作のカンテレがどこまで攻めることができるか、もう本当にそこ次第だ。第1話の再現度はかなり高かったが、2話目以降も是非、頑張ってほしい。クレームは来るかもしれないけど。

(沢野奈津夫)