12月12日に『科捜研の女』(テレビ朝日系)の第24話が放送された。

<第24話あらすじ>1人の命より大勢の命を選んだ


フリーライターの広辺誠児(森下じんせい)が絞殺された。遺留品から、土門薫(内藤剛志)と同期の元刑事で、19年前に死亡したはずの火浦義正(升毅)が生きていることがわかり、彼に広辺殺害の容疑がかかる。

1999年の大みそかに時をほぼ同じくして起きた2つの事件……大学サークルで起きた「ミレニアム集団自殺」と、同じサークルに所属していた楡井敏秋(中村凜太郎)の不可解な転落死。その関連を調べていた広辺に、当時サークル顧問だった森迫宏成(大河内浩)から多額の振り込みがあったこともわかった。不都合な真実が明るみに出るのを恐れ、金でもみ消そうとしたのではないかと疑われた森迫だが、ほどなく絞殺体で発見! 手口は広辺殺害と同じだったうえ、事件当日、火浦が森迫を訪ねていたことも判明する。
そんななか、火浦が土門の前に姿を現した。20年前、土門の元妻で故人の有雨子(早霧せいな)と不倫を疑われていた火浦は、「人間として犯してはいけない罪を犯した」と言い残して逃亡。火浦が言っていることが事実なら、有雨子が生前に言い残した「許されないことをした」の言葉は火浦との不倫を意味したものではなくなる。

20年前の記録を改めて検証すると、楡井は自殺ではなく死後ビルから転落したと判明。森迫が連絡をとっていた衆議院議員で警察OBの古川大儀(中村凛太郎)に話を聞きに行くと、集団自殺したサークルは病理研究所から致死性の高いウイルスを盗み出し、テロを実行しようとしていたと明らかになった。楡井は恋人が妊娠したことをきっかけにサークルを抜けることを決意し、姉のように慕っていた有雨子に相談。有雨子はこのことを火浦に打ち明け、火浦は楡井をスパイとして使うことにしたのだった。しかし、楡井はサークルのメンバーにスパイ行為がばれ、リンチされ殺されてしまう。京都タワーの展望台から火浦と有雨子は一部始終を目撃しており、有雨子は警察に連絡しようとしたが、自暴自棄になったメンバーがウイルスを散布することを恐れた火浦は、連絡を止めさせた。

その後の火浦は警察を退職し、古本屋の店主として生活。そこに楡井の息子の室岡厚也(大八木凱斗)が来店。そのとき、火浦は楡井が自殺ではなかったと厚也に伝えた。厚也は広辺に事件の調査を依頼するが、広辺は森迫から金銭を受け取り、引き換えに記事を削除。厚也は広辺と森迫を殺害し、事件を隠蔽した古川の命を狙った。しかし、寸前で火浦が厚也を阻止。
火浦は「全て俺のせいだ」と厚也に謝罪した。

火浦の判断ミス


火浦と有雨子は不倫関係ではなかった。いや、不倫ではないと最初から思っていたのだが。それにしても、真相は異様にスケールの大きな話だった。

火浦は警察に連絡しようとする有雨子を制した。目の前にいる1人(楡井)の命と大勢の命を天秤にかけ、後者を選んだのだ。その判断については、何も言わない。
火浦が判断を誤ったのは、これとは別の件である。厚也は広辺が調べた事件の真相を公表しようとした。しかし、火浦はその記事を燃やした。そのまま公表させてやれば、厚也が殺人に踏み切ることはなかったのに!
「俺は事件が明らかになるのが怖かった」(火浦)
「俺は死んだも同然」と言っておきながら、何を怖気づいているのか。というか、そもそも厚也と出会ったときに本当のことを言い、謝罪していれば、事はこんな大きくならずに済んだはずだ。今回の事件の発端と火種は、全て火浦の逃げ腰にある。


やっぱり“去る去る詐欺”か!?


さて、本題に入ろう。土門の『科捜研の女』卒業問題だ。遂に彼は警察学校の教官になってしまった。あまりにもあっさりと……。榊マリコ(沢口靖子)との別れもなく、これまでの名場面を振り返る回想シーンもなく、「土門さんが警察学校行っちゃうって!」(亜美)というくだりが挟み込まれただけの地味な処理の仕方。
「科捜研の女」なぜマリコと別れをせずに去っていったのか?「土門卒業」を疑う根拠を挙げてみた24話
イラスト/サイレントT

その後、刑事部長・藤倉甚一(金田明夫)と蒲原勇樹(石井一彰)のやり取りに場面は移った。


藤倉 「警察官に異動は付きものだ。不満はあるだろうが……」
蒲原 「いえ……、覚悟はできてましたから。土門さんには刑事として一番大切なことを教えていただきました。今度は俺があの人のようになる番です」

これ、ちょっとおかしくないか? 土門が異動するからと言って、「不満はあるだろうが……」と蒲原を慰めるだろうか。蒲原も他人の異動なのに「覚悟はできてました」と返答して、なんか受け答えがおかしい。まるで、自分のことのような口ぶりなのだ。
藤倉の言う「異動は付きものだ」って、ひょっとして蒲原のことを指しているのではないか!?

ここからは、あくまで筆者の推測。実は、土門に対して「異動の話がある」とはっきり告げられてはいない。あくまで「警察学校の教官になってくれ」という旨の打診だった。教官にだって色々ある。短期の臨時教官の可能性もあるはずだ。
つまり、しばらくしたら土門は戻ってくるかもしれないということ。本当に異動するのは土門ではなく蒲原……という線も残されている。いや、それはそれで悲しい話なのだけど。
この推測が当たっていたら、挨拶もせず土門が去ってしまったことにも合点が行く。ただの臨時教官なら、わざわざウェットにマリコと別れを惜しむこともないし。じゃあ、土門の異動話はいつもの“去る去る詐欺”ということ!? 『ガキの使いやあらへんで!』の「さよなら月亭方正」じゃないんだから。しまいには、土門のことを「月亭土門」と呼びたくなってくる。
※繰り返しますが、あくまで筆者の推測です。
ちなみに、次回25話の出演予定者欄に内藤剛志の名前はなかった。しばらくいなくなるのは本当のようだ。

24話のエンディングは、マリコ1人の屋上シーンだった。不意にマリコはハッとし、「土門さん!」と振り返った。でも、そこには誰もいない。泣いてはいないが、少しだけ目が赤いマリコ。寂しそうだった。でも、毅然としている。これがマリコである。
(寺西ジャジューカ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中