1月29日に放送された『知らなくていいコト』(日本テレビ系)の第4話。このエピソードを経て、今夜の第5話から恐らくエンジンが掛かっていく。

吉高由里子「知らなくていいコト」4話、春樹(重岡大毅)に積もる元カノへの不満と恨み。きっと逆襲が近い
イラスト/まつもとりえこ

正義を信じて仕事をするケイト、疑問を感じて足を洗った尾高


“お仕事系ヒューマンドラマ”を謳う割に、1話完結のお仕事パートの内容が薄いとずっと感じていた。真壁ケイト(吉高由里子)の出生の秘密、尾高由一郎(柄本佑)や野中春樹(重岡大毅)を絡めた恋愛パートのほうが興味深く、蛇足にさえ感じていたのだ。

人のプライベートに土足で踏み込む週刊誌記者という職業。しかし、当人たちは自分なりの正義を持って職務と向き合っている。
崩落事故でトンネルに閉じ込められた被害者を彼氏に持つ女子高生には「助かってほしいという気持ちは私も同じです」と訴え、思いを聞き出したケイト。慶英大医学部入試の小論文のテーマを買い取り授業をするジーザス富岡(新納慎也)には「あなたが事前に問題を漏らさず自力で合格できたかもしれない学生さえ、不正入学した学生にしてしまうんですよ!?」と迫った。
自分の内にある正義を信じる一方で、彼女たちの倫理観はどこかぶっ壊れている。
病院のトイレで一昼夜過ごし、その中で食事することも全くいとわない。書籍の著者インタビューの場では空気を読まず相手に突っ込み、敬意を払うつもりがない。「自分が正しいことをしている」と信じるケイトは、そんな仕事に充実感を覚えている。

世界的な賞を獲得するなど仕事で結果を残していた尾高は、すっぱりと報道カメラマンから足を洗った。
「カメラマンって、レンズに写ったものと自分の心って案外遠いんだ。目の前に死にそうな人がいても、助けるよりもシャッターを切ることのほうが大事でないとできない仕事なんだよ。
もっと言えば、撮っちゃった写真には責任感を感じないっていう図々しさがないとダメだ」
尾高は自分の仕事に疑問を持ち、全うすることができなくなってしまった。

「事故に遭った人の家族に話を聞くなんてできない」とぐずった福西彰(渕野右登)を週刊イーストの編集部員たちは叱り飛ばした。でも、ケイトが仕事の姿勢に疑問を抱けば「自分はそれでいいのか?」と悩み、苦しむと思うのだ。
無差別殺人犯とされる乃十阿徹(小林薫)との父娘関係は、そんな状況にケイトを追い込む1つのきっかけになる気がしてならない。

ここからは春樹がキーマン


このドラマは、ここからきっと春樹がキーマンになっていく。何かをしでかしそうな雰囲気が日に日に増しているのだ。


序盤での彼の感情は、まだ単純なものだった。無差別殺人犯の娘であるケイトへの恐怖心と嫌悪感。職場で元カノに普通の態度を取れない気まずさ。一方のケイトは春樹を吹っ切った。今では“春樹にふられたショック”より“尾高を手放した後悔”にさいなまれる日々だ。
次回、春樹は同じ編集部の小泉愛花(関水渚)に告白される。
交際に発展するかもしれない。それも、ケイトへの当てつけの意味合いが大きいように思う。自分でふっておきながら、ケイトと尾高が話し込んでいると切なげな顔になる春樹。自分はまだ気持ちが残っているのに、まるで平気そうなケイトの態度に腹が立つ。

そんな彼の若い感情の上に、新たな感情が積もりつつある。1話も2話も3話も、ケイトは他人の企画を横取りしてスクープを獲得した。
そして、4話では春樹の担当企画を踏み台にする形で不正入学の闇を暴いた。
彼女のやり方だと、社内に敵を作ってもおかしくない。春樹のケイトへの苛立ちは露骨だった。インタビューでジーザスに話しかけるときはニコニコしているのに、ケイトが割り込んだ途端にスンッ……と目が死んでいる。ジーザスの目はまっすぐ見つめるのにケイトの目を頑なに見ようとしない。インタビュー中、彼の顔には「迷惑なんだよ、邪魔すんな!」と書いてあった。
嫌われてからが勝負のケイトに響かないのが、春樹の苛立ちを増幅させた。

文科省をも巻き込む予備校の不正が明らかになり、春樹担当のインタビュー記事は扱いが小さくなる。彼は彼なりに仕事に誇りを持っているだけに、なお悲しい。「バカみたいですよ、連載班」と資料をゴミ箱に投げ捨てるほど不満が募り、ケイトへの恨みは積もる一方だ。
何か、ケイトに牙を剥きそうな予感がするのだ。春樹はケイトの父親のことを知っている。逆襲する材料を持っている。彼の手でケイトと乃十阿のことが大々的に発表される。そんな展開が、すぐそこまで迫っている気がする。

ただ、週刊イーストでそんな記事は書けない。編集長の岩谷進(佐々木蔵之介)はケイトの理解者、そして「過ぎてしまったことは忘れろ」という考え方の持ち主である。
では、どの媒体で発表する? そういえば、週刊イーストのライバル誌「週刊世界」の編集長に岩谷の妻が就任したという話が第3話にあった。
(寺西ジャジューカ)

『知らなくていいコト』
脚本:大石静
主題歌:flumpool 「素晴らしき嘘」(A-Sketch)
音楽:平野義久
演出:狩山俊輔、塚本連平 ほか
プロデューサー:小田玲奈、久保田充、大塚英治(ケイファクトリー)
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中