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オンコリス Research Memo(4):テロメライシンは米国でも複数の医師主導治験が進む見通し(1)

2020/3/24 15:24 FISCO
*15:24JST オンコリス Research Memo(4):テロメライシンは米国でも複数の医師主導治験が進む見通し(1) ■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向 1. テロメライシン (1) 概要 テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルスのことで、腫瘍溶解性ウイルス製剤の一種である。テロメライシンの特徴は、正常細胞にも感染するが、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖することで、がん細胞を破壊していくことにある。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るケースがあるが、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため副作用も少なく、人体への安全性には問題がないことが確認されている。 (2) 開発状況 テロメライシンは現在、国内と米国、台湾・韓国にて複数のプロジェクトが進んでおり、このうち、国内と台湾については中外製薬とのライセンス契約に基づき、今後の開発主体は中外製薬に移行する。また、中国でもライセンス供与先のハンルイで臨床試験開始に向けた準備が進められている。 a) 食道がん(放射線との併用療法) 2013年より岡山大学医学部で進められた医師主導の臨床研究では、ステージ1~4までの食道がんで外科手術による切除や根治的化学療法が困難な患者(高齢者等)を対象に放射線療法との併用による治療が実施された。治療期間は6週間で、週5日の放射線治療とテロメライシンを合計3回投与し、腫瘍の縮小効果を見た。臨床研究の結果については2018年7月の日本臨床腫瘍学会で発表されており、完全奏効率(※1)で62%(全13例中8例)、うちステージ2/3の患者だけに絞ってみても57%(7例中4例)となっており、高い効果を得られることが確認された。Uicc TNM 分類 第7版の基準による日本食道学会の過去データ(2009年−2011年)によれば、放射線単独療法による完全奏効率は全ステージで約40%、ステージ2/3に絞ってみると約30%の水準であり、テロメライシンによる薬効の高さが確認されている。 ※治療を受けた患者を分母として完全に腫瘍が消失した患者の割合。30%以上腫瘍が小さくなった患者の割合は部分奏効率と呼ぶ。 同社でも2017年7月から岡山大学の臨床研究と同じ内容で第1相臨床試験を行い、2019年9月に全ての患者(6名)への投与及び効果安全性評価委員会による安全性の評価を完了し、すべての症例においてテロメライシンの投与が中止となるような有害事象が確認されなかったことを発表している。また、完全奏効率も約60%と岡山大学の臨床研究と同様の結果となっている。 中外製薬が主導する第2相臨床試験については、2020年3月初旬に1例目の被験者投与が開始されている。予定症例数は37例で、国内多施設で行い、ヒストリカルデータ(日本食道学会による放射線単独療法)との比較試験により有効性と安全性を確認する。順調に進めば2年程度で終了する見込みだ。先駆け審査指定制度の対象品目として指定されていることもあり、審査期間の短縮が見込まれることから、中外製薬の申請戦略は非開示だが、第2相臨床試験データで申請を行う場合は、早ければ2023年に上市される可能性がある。 b) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法) 食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんでステージ4の患者を対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(開発:米メルク<MRK>、商品名:キイトルーダ)との併用療法による医師主導第1相臨床試験が、2017年12月より国立がん研究センター東病院等で進められている。試験内容は、前半の9例が投与量を3群に分け(低容量、中容量、高容量)、治療期間6週間でテロメライシンを3回反復投与、ペムブロリズマブを複数回投与し、安全性や抗腫瘍効果、免疫応答等を評価するというもの(最大2年間の経過観察期間を設けて生存率についても評価)。また、後半の10例については、前半に行った試験のうち高容量群での3回反復投与を1クールとし、複数クール行う試験となる。 前半9例に関する中間報告が、2019年3月に米国で開催された癌学会で発表されている。内容は、投与を制限するような重篤な副作用が発生せず、2次評価としての予備的な有効性評価として、9例中3例で全身での部分奏効が確認されたというもの。ペムブロリズマブ単独療法では部分奏効率が13.1%という臨床試験結果が出ており、テロメライシンとの併用療法による腫瘍縮小効果が期待できる内容となっている。 また、後半10例のうち2019年12月時点で6例までの投与を完了している。いずれも食道がんから肝臓に転移したがん患者に対して転移がんへ投与しているが、今のところ奏効は確認できていないと言う。要因として、肝臓は体積が大きいため薬の投与量が少なすぎることが考えられ、現在、大学病院の倫理委員会に投与法の変更(濃度を薄くして、肝臓の幅広い箇所に多数回打つ)を交渉している段階にある。このため、臨床試験の終了時期は2021年にずれ込む可能性もある。今後、同疾患向けの開発を進めていくかどうかについては、中外製薬の方針次第となる。中外製薬でも免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の開発を進めているためで、今回の医師主導臨床試験のデータ結果次第では、アテゾリズマブとの併用療法による臨床試験を進めていく可能性がある。 c) 胃がん・胃食道接合部がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法) ステージ4の胃がん・胃食道接合部がん患者を対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による医師主導第2相臨床試験が、2019年5月より米国のコーネル大学などで始まっている。ペムプロリズマブ投与中の患者に対して、テロメライシンを隔週で4回投与する。症例数は最大37例で観察期間は半年程度となり、安全性と有効性を評価する。施設数はコーネル大学ほか2施設で、臨床試験に要する期間は3年程度を見込んでいる。2020年2月時点で6例の患者に投与している。コーネル大学では10例を終えた段階で中間発表を行う予定にしており、時期としては2020年内の発表を目指している。 コーネル大学の担当医師からは、「部分奏効率で標準治療を上回る結果であれば、企業治験に切り替えていく価値がある(ペムブロリズマブ単剤では約15%)」と言われている。中外製薬がその判断を下すことになるが、仮に企業治験を進める場合は、オプション権を行使して米国のグループ会社であるジェネンテックが主導して開発を進めていくものと予想される。なお、今回の臨床試験ではペムブロリズマブを使用しているが、中外製薬では同じ免疫チェックポイント阻害剤のアテゾリズマブがあり、企業治験では自社製品で開発を進めていくことになる。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《ST》
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ウイルス遺伝子改変技術を用いてがん治療薬を開発する「ウイルス創薬」バイオベンチャー。テロメライシンは富士フイルム富山化学と国内販売提携契約を締結。研究開発費は増加。23.12期通期は米国売上が増加。 記:2024/02/25