3密を避けたオンラインの株主総会

株主総会のシーズンが本格化する中、新型コロナウイルスの感染対策として、オンラインにも対応したバーチャル株主総会が開かれた。

西村昌樹記者:
会場の前方にはモニターのみがあり、会社の経営陣は遠隔で参加することになります。

「アステリア」社内(東京・品川区)
「アステリア」社内(東京・品川区)
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モニター越しに経営陣の話に耳を傾けるのは、数人の株主。

東京・品川区にある「アステリア」では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、事前に株主に対して来場を控え、インターネットでの出席・投票を求めるなど異例の呼びかけをしてきた。

昨年と比べると、違いは一目瞭然。昨年は184人が参加したという株主総会だが、今年は会場の規模も縮小し、実際に会場に来た株主は7人だった。

バーチャル株主総会は、会場に来なくてもライブ配信を通じて参加可能で、3密による感染リスクを避けることもできる。

2019年の株主総会の参加者は184人
2019年の株主総会の参加者は184人

スマホからリアルタイムで投票・質問も

もう1つの大きな特徴が、オンラインでのリアルタイム議決権行使だ。

アステリア・平野洋一郎社長:
これより3分後に、議決権行使サイトによる議決権行使の受付を締め切らせていただきます。

アステリア・平野洋一郎社長
アステリア・平野洋一郎社長

自宅などで視聴する株主は、進行に従い遠隔地からスマホを使ってリアルタイムでの投票を行ったり、オンラインでの質問が可能に。

アステリア・平野洋一郎社長:
集計結果をいただきました。本議案につきまして過半数のご賛成をいただきましたので、本議案は原案通り可決されました。

ブロックチェーン技術を活用

質問や投票には、データ改ざんが難しいとされるブロックチェーン技術を活用。今回の投票のおよそ半数がブロックチェーンによる投票を選択した。

参加した株主:
(議決権行使は)スマホで簡単にできました。1分くらいでできます。総会で事業報告を聞いてから行使できる仕組みはいいと思います。セキュリティー性の高い議決権行使システムを構築している会社なので、行使結果も信用できます。

スマホで投票
スマホで投票

一方、このような意見も…

会場に来た株主:
やはりちょっと物足りないですね。実際の生で聞きたかったです。こういうのは初めてですもんね。自宅で少し練習してきたけどね。

この男性は、スマホでの投票を練習したものの、実際には記載した紙を持参して提出したという。

西村昌樹記者:
会場でスマホで投票とはお考えにならなかったですか?

会場に来た株主:
考えなかったですね。スマホは持っていますけどわからないからね。感じだけ味わいに来たっていう感じです。ITの時代の1つの現れでしょうかね。

リアルタイムのフィードバックが課題…株主にはメリットも

多くの株主ではなく、撮影機材に囲まれて株主と顔の見えない対話に臨んだ平野社長。

西村昌樹記者:
社長、やってみていかがですか?

アステリア・平野洋一郎社長:
初めての試みですので何回もリハーサルをしましたが、やはり反省点というのはあります。人前で話をすると、その反応が常に分かる状況で話をするので、話したことに関して納得いただいたのか、首をかしげられたりとか、そいういったことでプレゼンテーションを行うわけですが、カメラ通しですからどのような反応があるのか全くわかならない。

やはりリアルタイムのフィードバックが何らか得られると、もう少しリアル感が出てくるかと思います。

アステリア・平野洋一郎社長
アステリア・平野洋一郎社長

しかし、バーチャルならではのメリットもある。

アステリア・平野洋一郎社長:
これまでは場所に来られる人だけが参加できていた。それがバーチャル株主総会によって、どこにいても地方にいても外国にいても参加できるということが実現できて、ある意味、株主のアクセス、そして株主の平等というところが向上できるのではないかと思います。

リアルとバーチャルの良い組み合わせを模索

三田友梨佳キャスター:
バーチャル株主総会、小泉さんはどうご覧になりましたか?

IoT・AIの専門メディア IoTNEWS代表・小泉耕二氏:
企業が経営に対する理解を株主に求めていくのが株主総会だと思います。今回、議決権行使に関してバーチャルでやったということですが、セキュリティーが気になる方も若干いるのではと思います。

セキュリティーというと、大きくは「盗聴・なりすまし・改ざん」の3つがテーマになりますが、今回の仕組みはブロックチェーンというものを使って、主になりすましや改ざんについてはかなり防止できる仕組みになっていると聞いています。

IoT・AIの専門メディア IoTNEWS代表・小泉耕二氏:
今回の例だと、賛成票を反対票に入れてしまうというのは改ざんに当たります。実際にログインして議決のためにボタンを押すだけなので、普段のECサイトとあまり変わらないと思われる方もいると思います。ただ、アステリアという会社はブロックチェーンに関して以前から研究していて、様々な取り組みをやっている会社ということもあります。

一方で、ブロックチェーンは理論的には完璧ですが、どんな仕組みも完全ということはなくて、過去に別の例ではありますが、仮想通貨などでのトラブルも起きています。ですから、いろいろな方式で完全になるよう、注意して改善する取り組みができればいいと思います。

三田友梨佳キャスター:
株主の方からは「ちょっと物足りない」という言葉もありましたが、感染対策として3密を避けることに加えて移動しなくていいというのは、遠方の株主の方にとってメリットは大きいですよね。

IoT・AIの専門メディア IoTNEWS代表・小泉耕二氏:
そうですね。慣れない方からすれば、スマートフォンで議決するのは気持ち悪かったりするので、紙に書いて会社に持って行って投票したいという方もいると思います。ただ、オンラインにすることでその場にいなくても話が聞けたり、議決権行使ができたりするメリットもかなりありますので、そういう意味ではリアルなこととバーチャルなことをうまい具合に組み合わせていきながら、一番良い形を模索していく取り組みが今後進んでいくと思います。

三田友梨佳キャスター:
選択肢が増えるというのはいいことかもしれませんね。感染拡大によって企業の運営方法が変わるなど、新たな生活スタイルが意識される中、バーチャル株主総会が定着することになるのか、しっかりと注視していきたいと思います。

(「Live News α」6月24日放送分)