安倍首相は10日、首相官邸でエストニアのラタス首相と会談し、情報通信技術(ICT)やサイバーセキュリティ分野で両国の連携を強化していくことで一致した。そして電子政府の推進に向けた共同研究に関する覚書にも署名した。

日エストニア首脳会談で握手する両首脳
日エストニア首脳会談で握手する両首脳
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この首脳会談にひときわ目立つ大柄なエストニア人が同席していた。その正体は、大相撲で大関として活躍した元力士・把瑠都(本名・カイド・ホーベルソン)さんだった。実はホーベルソン氏は今、母国エストニアで国会議員を務めているのだ。

元力士・把瑠都(本名・カイド・ホーベルソン)さん
元力士・把瑠都(本名・カイド・ホーベルソン)さん

国会議員になった元把瑠都が指摘「日本は世界で一番紙を多く使う国」

ホーベルソン氏は2004年に大相撲入りし、その顔立ちから「角界のディカプリオ」とも呼ばれ人気に。豪快な取り口で大関にまで上り詰め、2013年に力士を引退した。その後タレント活動を経て2018年に母国に帰国し2019年に国会議員に当選。今回は、ラタス首相の訪日に合わせ、「日本とエストニアの架け橋になりたい」と一緒に日本を訪れていたのだ。

そのホーベルソン氏は、首脳会談と夕食会の終了後、FNNの単独取材に応じた。ホーベルソン氏は安倍首相とも話をし、「(国会議員は)慣れましたか?」と聞かれ、「まだ慣れていません(笑)」と答えたという。また、首脳会談に同席できたことについて「嬉しかった」と喜びを語った。

その上でホーベルソン氏は、「日本は世界で一番紙を多く使う国だ」と述べ、日本の電子政府化の推進に向けた両国の連携の重要性を強調した。

「電子国家」の先駆けエストニア

実は、エストニアは、行政の電子化が進んでいる「電子国家」として有名なバルト3国の1つで、スカイプ発祥の地としても知られる。人口は僅か130万人程度、国土は約4.5万㎢と九州とほぼ同じ大きさの小さな国だが、1991年の独立以降、国をあげてICT化を推進してきた。

エストニアでは、15歳以上の国民が「eIDカード」と呼ばれる身分証明書をもっている。日本でいうマイナンバーカードや運転免許証、健康保険証、交通系ICカードなどの役割を果たしており、日本では何枚も持たなくてはいけないカードを1枚に集約することができている。また、選挙の投票や確定申告、会社の設立などもインターネット上でできてしまう、IT先進国だ。

エストニアの街並み
エストニアの街並み

誰でも“電子国民”として起業可能!安倍首相も・・・

また、外国からの投資や企業の誘致などを促進するため、2014年から「e-Residency」(電子居住権)制度が導入された。エストニアの国民や居住者でなくても、いわば“電子国民”として、エストニアで法人を設立することができるのだ。

実際に、安倍首相もこのカードを持っており、首脳会談の後に開かれた夕食会で、「首相を辞めて政治家を引退したら、エストニアのチョコレートを日本に輸入したい」と語った。

元把瑠都「目指すは一つ 大統領になりたい」

ホーべルソン氏に今後の抱負を尋ねると、「日々勉強中。日本とエストニアの架け橋として、エストニアの商品の日本輸入促進に貢献したい」と述べた。その上で自らの将来について、「首相は大変だが・・・目指すは一つ。大統領ですよ」と語った。内政や外交の実権を握る首相はともかく、元首であり象徴的存在の大統領になるという元把瑠都の大きな夢。もし本当に実現すれば、日本とエストニアの大きな架け橋となりそうだ。

 
 

(フジテレビ政治部 総理番記者 阿部桃子)

阿部桃子
阿部桃子

ニュース総局政治部 平河クラブ 自民党茂木幹事長担当。1994年福岡県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、2017年フジテレビ入社。安倍元首相番や河野規制改革相など経て現職。