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バルセロナの戦術、選手起用法は? グリーズマンとデヨングを加えた最強スカッド【序盤戦レポート(5)】

2019/20シーズンは序盤戦を終えた。補強が成功して首位争いを演じるチームもあれば、低迷して監督交代を余儀なくされたチームもある。各クラブのこれまでの戦いを振り返りつつ、見えてきた戦い方と課題を考察していく。第5回はバルセロナ。(文:編集部)

シリーズ:序盤戦レポート text by 編集部 photo by Getty Images

バルセロナの戦術は?

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バルセロナ【写真:Getty Images】

 リーガ連覇して迎えた2019/20シーズンは星の取りこぼしが目立つ。開幕戦でビルバオに敗れ、第5節でグラナダ、第12節でレバンテに勝ち点3を渡してしまった。

 それでも、そこまで悪くない数字を残して序盤戦を終えた。14試合で勝ち点31(10勝3敗1分)は、バルベルデ体制初年度の17/18シーズンに記録した36ポイント(11勝3分)には及ばないものの、昨シーズンの28ポイント(8勝2敗4分)を上回っている。

 基本システムは4-3-3で、これまでと大きな変化はない。高いボール保持率をキープしながら、相手の隙を狙っていく。DFジェラール・ピケを中心に最終ラインから攻撃を組み立て、FWリオネル・メッシ、FWルイス・スアレスがフィニッシュ役を担う。ボールを失えば、素早いプレスで回収し、自陣の低い位置からでもカウンターを仕掛けられる。

 ピケ、MFセルヒオ・ブスケツ、MFイバン・ラキティッチ、メッシ、スアレスといった核となってきた選手は30代となったが、カンテラーノ(育成組織出身選手)も芽を出し始めている。MFカルレス・アレニャ、FWアンス・ファティ、FWカルレス・ペレスといった選手たちは将来を嘱望されている。

 MFフレンキー・デヨングを加えた中盤には起用の幅が生まれ、FWアントワーヌ・グリーズマンが入る前線のトリデンテは豪華さを増している。それ以外の補強は地味ではあるが、全体的に層の厚みをもたらしている。

昨季と変わらない最終ライン

 GKとDFは昨季とほとんど変わらない顔ぶれが並ぶ。

 GKはマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンが不動の存在だ。リーガ200試合出場を達成した27歳のドイツ代表GKは、高いセーブ技術と足元の技術でバルサのスタイルを最後尾から支えている。No.2の座には今季、バレンシアからGKネトが加わった。開幕こそ怪我で出遅れたものの、バレンシアの正GKを2年間務め上げた実績は頼もしい。

 センターバックのピケはまもなく33歳になるが、トップレベルの実力を証明し続けている。DFサミュエル・ウンティティが負傷離脱を繰り返す一方で、DFクレマン・ラングレが地位を築いている。

 右サイドバックは、DFネウソン・セメドが開幕からファーストチョイスとなっている。これまではMFセルジ・ロベルトが務めていたポジションだが、セメドがポジションを獲得し、セルジ・ロベルトは本職の中盤で起用されることが増えた。

 左サイドバックはDFジョルディ・アルバが不動の存在だが、31歳を迎える今シーズンは怪我の影響もあってフル稼働とはならず。左サイドバックもできるセメドに加えて、今夏ベティスから加入したDFジュニオル・フィルポが控えている。

 守備陣のファーストチョイスは昨季から大きく変わらないものの、バックアッパーには新顔が並ぶ。ネト、フィルポ、そしてセネガル代表のDFムサ・ワゲ。主力メンバーのプレーは計算できるだけに、彼らが与えられたチャンスでどのようなパフォーマンスを発揮できるかがカギを握りそうだ。

豊富なキャラクターを抱える中盤

 中盤で最も重要な存在になっているのはMFフレンキー・デヨング。今夏アヤックスから加入した22歳のオランダ代表MFはアンカーとインサイドハーフの2つのポジションでプレー。広い視野と的確なポジショニングを備え、ポリバレントな能力を発揮している。

 アンカーには、長年に渡って活躍してきたブスケツもいる。デヨングの台頭もあってか、今季は途中交代する機会も増えているが、CLなどの重要な一戦では起用されており、指揮官の信頼も見える。

 インサイドハーフには前述のセルジ・ロベルトとデヨングに加え、MFアルトゥール、MFアルトゥーロ・ビダルも担う。ブラジル代表でも不可欠な存在になっているアルトゥールは、往年のシャビを彷彿とされるプレーを見せている。フィジカルが優れているビダルだが、つなぎの部分でも高い能力を持っている。中盤にエナジーをもたらし、フィニッシュに関われる点で、他のMFにはない貴重な存在だ。

 群雄割拠の中盤にはラキティッチも控えているが、他の5人と比べると存在感は薄くなってしまった。カンテラ出身のアレニャは、昨季こそ飛躍の足掛かりをつかんだが、今季は層の厚い陣容の中でプレータイムを与えられていない。

 30代のブスケツ、ビダル、ラキティッチを抱えているが、トップレベルでプレーできるMFは6人いる。積極的なターンオーバーが可能で、1人、2人負傷しても大きな穴にはならないだろう。

グリーズマンが加わった前線の威力は…

 前線には今季からFWアントワーヌ・グリーズマンが加わった。左ウイングを務めることが多いが、まだ本領発揮とはいっていない。アトレティコではエースだったが、バルサの中心はメッシ。スアレスも含めた“トリデンテ”には大きな期待が注がれている。

 メッシ、スアレスについては語るまでもないだろう。6度目のバロンドールを受賞したメッシは衰えを知らない。序盤戦こそ怪我で欠場したが、復帰と同時にゴールとアシストを量産している。

 コパ・アメリカ2019に出場したスアレスはスロースタートとなったが、第7節から4試合連続ゴールをマークするなど、高いパフォーマンスを維持している。9番ポジションは替えが利かないだけに、最も重要な存在と言えるかもしれない。

 一方で、FWウスマン・デンベレは期待を裏切り続けている。相変わらずの怪我の多さに加えて、復帰後初先発となったセビージャ戦では主審に暴言を吐いて一発退場に。トップレベルで十分にやれる能力を持ちながら、オフザピッチでの愚行や怪我の多さによって信頼を失っている。

 若手の台頭も著しい。バルセロナBで10番を背負うペレスは、プレシーズンでのパフォーマンスが評価された。開幕からチャンスを与えられると、第2節では初ゴール。ファティは弱冠16歳でリーガ初ゴールをマークし、CLデビューを果たした。デンベレの立場も危うくなりつつある。

 リーガ3連覇を目指すエルネスト・バルベルデ体制3年目。3連覇はペップ・グアルディオラとヨハン・クライフしか達成していない偉業だ。バルベルデは名将と肩を並べることはできるだろうか。

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