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久保建英をベンチに置くマジョルカの実情。新たなライバル出現でポジション再奪取は困難に

リーガ・エスパニョーラ第22節、マジョルカ対バジャドリーが現地時間1日に行われ、マジョルカは0-1で敗れた。3戦連続でベンチスタートとなった久保建英は59分に登場。2本のシュートを放ったものの、得点につなげることはできなかった。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

久保は59分から登場も…

久保建英
【写真:Getty Images】

 MF久保建英は1点ビハインドの59分に、MFダニ・ロドリゲスに代わってピッチに入った。放ったシュートは2本で、相手のイエローカードを誘発するなど、久保らしさは随所に見せている。しかし、ゴールに絡むというミッションは果たせず、チームはリーグ戦連敗を喫した。

 マジョルカは前の試合に続いて、4-4-2のフォーメーションでバジャドリーをホームに迎え撃った。サイドハーフは右にダニ・ロドリゲス、左にMFラーゴ・ジュニオルが入り、チーム得点王のFWアンテ・プディミルの相棒には、FWクチョ・エルナンデスが4戦連続で先発に起用された。

 なかなかフィニッシュへと持ち込めない展開が続くマジョルカは、早々にプランBへと移行する。ダニ・ロドリゲスをトップ下に移し、左にクチョ、右にラーゴを配した。その後もクチョとラーゴは時折ポジションを入れ替えながら、相手ブロックのギャップを狙った。

 マジョルカの最初の決定機は28分に訪れた。左サイドバックのDFルマーがタッチライン際にドリブルで侵入すると、ダニ・ロドリゲスにマイナスのボールを折り返す。これにワントラップから右足を振り抜いてゴールネットを揺らしたが、ルマーがタッチラインを割っていたとしてゴールは認められなかった。

新加入選手との融合

 スコアを動かしたのはリーグ戦で9試合勝てていないバジャドリーだった。マジョルカのルマーが左サイドでボールを失うと、FWセルジ・グアルディオラが右サイドを突破。一度目のクロスは相手に当たったが、再び上げたクロスをFWエネス・ウナルが頭で合わせて56分にゴールを奪った。バジャドリーにとっては3試合ぶりの得点が、アウェイでの貴重な先制点となった。

 失点直後に投入された久保は右サイドハーフを務めた。さらに70分にはDFジョアン・サストレを下げてMFアレハンドロ・ポソを投入。冬にセビージャから期限付きで加入した20歳は右サイドバックに入った。

 74分には右サイドをえぐったブディミルのマイナスのパスを久保が受ける。そのまま左足を振り抜くが、DFの股の間を通したシュートはGKの正面を突いた。さらに83分、左サイドからのクロスが久保に渡る。久保は細かいタッチから左足を振り抜くが、わずかに枠外へと外れた。

 攻撃性能に優れるポソが高い位置を取ることで、左利きの久保は中でプレーする時間が増えた。データサイト『Who Scored』によれば、途中出場からシュートを2本放ったのは、マジョルカ移籍後初めて。ポソとの縦関係は、久保にとっても良さが活かせる形だった。

3戦続けて先発を外れた久保建英

 苦戦を強いられるマジョルカの中で孤軍奮闘していた久保だが、年明けからその立場に大きな変化が起きている。

 年明け初戦となったグラナダ戦で、久保はシャドー起用された。フル出場したもののゴールが遠く、24分に失点したマジョルカは敗れている。

 直後のコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)2回戦を突破すると、4バックに戻したマジョルカは格上バレンシアを撃破した。しかし、久保が投入されたのは4点目のゴールが決まった直後の80分で、4つのゴールに絡むことはできず。コパ・デル・レイを挟んで1週間後に行われたレアル・ソシエダ戦では0-3の完敗。久保は19分間のプレーに留まった。

 8試合連続で先発していた久保だが、リーグ戦ではここ3試合、ベンチスタートが続いている。代わって先発起用が続いているのがクチョである。20歳のコロンビア人FWは、今季8得点を挙げているプディミルとともに2トップを形成している。

 昨季はレンタルされたウエスカでリーグ戦34試合に出場したが、チームは19位で降格。今季は開幕後に、保有元のワトフォードからマジョルカへレンタルされた。

 U-20コロンビア代表として5月に開幕したFIFA U-20ワールドカップに出場したクチョは、タヒチ戦でハットトリックを達成する活躍を見せた。しかし、この大会でハムストリングの負傷を押してプレーしたことで、その後は長期離脱を強いられた。

 それでも、初出場となったバルセロナ戦で後半途中からピッチに立つと、リーグ戦では7試合すべてで起用されている。直近4試合ではスターティングラインナップに名を連ねた。

クチョが重用される理由

 175cmの身長は久保とさほど変わらないが、南米出身らしい縦への推進力と体の強さを持ち合わせている。中央に構えるプディミルの周りを動いてボールを引き出し、この試合ではチーム最多の4本のシュートを放った。

 ただ、この試合ではシュートを枠内に飛ばすことができず、決定的なチャンスを作ることはできていない。67分に倒れたシーンではシミュレーションを取られてイエローカードをもらっている。いい働きを見せたとは言えない結果に終わった。

 劣勢に時間が長いマジョルカでは、必然的に前線の選手には個の打開力が求められる。ビセンテ・モレノ監督はポストプレーで時間を生み出せるプディミルや、ドリブルで相手を剥がせるラーゴ・ジュニオルを重用している。

 さらに、怪我が癒えたクチョが起用されている現状を見ると、久保の先発起用はますます難しくなりそうだ。現状では相手の疲労が見える後半に久保を起用するというのが、チームにとってはベストの選択となっているのが実情だろう。

 17位のマジョルカは2月の初戦を落としたことで、1試合消化が少ない16位エイバルとの勝ち点差を5ポイントとしている。終盤戦へと突入するリーガ・エスパニョーラは、3ポイント差にひしめくマジョルカを含めた4クラブが、残留争いのメインキャストになりそうだ。

 次戦は最下位に沈むエスパニョールとの対戦が控えている。なんとしてでも勝ち点3が必要となる直接対決で、久保はアピールすることができるのだろうか。

(文:加藤健一)

【了】

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