イラスト:カワムラナツミ
新型コロナウィルスが猛威を振るう中、各々の心にさまざまなストレスが…。落ち込んだときや不安なときにペットや毛布をなでると、なぜかホッと心が休まります。それには理由がありました。手で触れる感覚が脳に与える影響を利用して、セルフケアができるのです(構成=山田真理 イラスト=カワムラナツミ)

自立神経を整え、さまざまな不調を改善

痛いところに手を当てて優しくさすっていたら痛みが和らいだ。不安や緊張で心に余裕がないとき、無意識に手の甲をなでて気持ちを落ち着かせた──皆さんにも、そんな「手の持つ治癒力」に助けられた経験があると思います。

手の力を効果的に使って心身の不調を整える方法として、私がサロンで教えているのが「タッチングケア」。手で優しくリズミカルに肌に触れることで自律神経を整え、さまざまな不調を改善していくというものです。元はスウェーデンで未熟児の看護ケアとして発案され、日本でも医療や介護の現場で行われています。

実は、私もその方法でつらかった時期を乗り越えました。もともと大学病院の看護師で、2人めの子どもを出産後も育児をしながら勤めていたのですが、4人めの出産でついにダウン。仕事を辞め、鬱々とした日々を送っていたとき偶然受けたのが、アロマサロンでのトリートメントでした。人の手の温かく優しい感触と心地よいリズムが、「あなたは十分に頑張ったよ」と言ってくれているようで。終わったときは心も体もスーッと軽くなり、深く癒やされたのを実感したのです。

その体験に感動した私はアロマセラピーの勉強を始め、トリートメントのサロンを開業しました。意識したのは、優しい触れ方とリズムのある手技。それを自宅でも気軽にできるようにアレンジし、育児や介護に役立ててもらおうと教室を開いて教え始めました。さらに知識を深めるなかで、私の思い描いていた理想の方法に近い「タッチングケア法」を確立していったのです。

手を使ったケアというと、マッサージのように強く「揉む・押す」イメージをお持ちの人も多いでしょう。ですがタッチングケアはその逆で、力はいりません。「触れる・なでる」だけなので、体力がない人やご高齢の方でも、すぐに始められますよ。

人間の脳と皮膚は、同じ「外胚葉」から作られているため、感覚が密接に結びついています。肌をなでて生まれた刺激が脳に届くと、体の調節機能をコントロールしている「視床下部」の働きが活発化。すると自律神経のバランスやホルモンの分泌量が整って、さまざまな不調を改善することができるのです。