「年齢とともにシワやシミができ、顔がたるんでも、それを受け入れつつ女優としてどう生きていくのか、それが大事」(撮影:鍋島徳恭)
10月30日に公開された垣谷美雨さん原作の映画『老後の資金がありません!』で主人公の姑・芳乃を演じている草笛光子さん。女優として現在も第一線で活躍を続ける草笛さんですが、年齢による肉体の変化に、やりきれない思いを抱いたこともあるそうで――。11月9日号の『婦人公論』から記事を掲載します。(撮影=鍋島徳恭 構成=篠藤ゆり)

<前編よりつづく

老後っていつからなのだろう

「老後」という言葉、私はよくわからないの。だって、いったいどこからが私の老後なのかしら……。85を過ぎた頃、というならすでに老後ですし、「女優の仕事を一切やめるわ」と宣言したら老後だとするなら、まだということになる。

「私、88歳なの」と言うと、皆さん「へぇ~っ!」と驚かれます。でも、「草笛さん、88歳なのにスゴイ」などと言われてもあまりピンとこなくて。しばらくしてから、「あら、やだ。私、自分を何歳だと思っているんだろう」と、我に返ります。正直、自分が今「老後」の時期を過ごしているとは、まったく思っていないの。

好奇心も、まったく衰えを知らないわね。今、一番の関心事は、ご近所で知り合ったゴールデン・レトリバーのサブちゃん。

長年飼っていたラブラドール・レトリバーのマロが亡くなり、しばらくはペットロス状態でした。寂しい気持ちでいる時、ご近所で散歩しているサブちゃんと出会ったの。とってもいい子なのよ。撫でたり、飼い主さんとお話をしたりするうちに、すっかり仲良しになって。毎日お散歩の時間を見計らい、茹でた鶏のささ身を持って、家の外で待っているんです。

サブちゃんが道の向こう側に見えた時、私が大きく手を振ると、嬉しそうに尻尾をゆさゆささせながらこちらにやってくる。私も嬉しくて、毎日サブちゃんのお散歩の時間が近づくとソワソワしてしまうのよ。