中学生男子です。2カ月ほど前から下唇の裏側に水ぶくれのようなものができ、かかりつけ医で「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」と診断されました。今までに2度切除しましたが、再発しました。検査の結果、悪性のものではないと言われ、しばらく様子を見ることになっています。切除すると痛みや腫れが出るので、他の対処法や治療法があれば教えてください。(福井県福井市)

 【お答えします】山口智明・福井県済生会病院口腔外科医長

 ■唾液の流出障害で発症、再発ケースも

 粘液嚢胞は唾液の流出障害によって起こる、唾液腺本体が腫れる病気です。唾液は主に、大唾液腺と呼ばれる耳下腺、舌下腺、顎下腺から分泌されますが、口唇や舌、頬粘膜には小唾液腺と呼ばれる組織が多数存在しており、おのおのの唾液腺には唾液を出す細い管が存在します。大唾液腺での発症より、小唾液腺で高い頻度で発症する病気ですが、唾液腺が存在する部位であれば口腔内のどの部位にでも発症の可能性があります。

 粘液嚢胞の原因や誘因として、その腺管(唾液を口腔内に流すホースの役目をする部位)の閉塞・慢性外傷・慢性炎症・異物の存在が挙げられます。これにより唾液が排出できず、管の中に唾液がたまって粘膜の下に水風船のようなものができることで、半透明の水ぶくれのようになります。内容液が透けて見え、触ると軟らかく、大きさは1センチ以上になることもありますが、腫れても無痛性であることがほとんどです。

 特に下唇に発生頻度が高く、原因は先ほど述べた中でも、歯でかんだり傷つけたりと慢性的に外傷を受けやすい部位であるためと予想されます。自然に破れ内容液が流出し消失することもありますが、時間が経つと再発します。

 ■根本治療は唾液腺の摘出のみ

 ご相談者は切除以外の治療法を希望されていますが、根本的治療は粘液嚢胞(腫れた唾液腺本体)の摘出手術となり、穿刺(針などで内容液を吸う)や切開では再発してしまいます。薬物治療などの保存的治療もなく、摘出のみが根本的治療となります。

 口腔内にできる粘液嚢胞は、それ自体が悪性の腫瘍など病的なものではなく、放置しても二次的な病気を生じることはありません。普段の生活で邪魔でなければ、必ずしも切除は必要でないでしょう。ただ一般的に放置しておいても自然に治ることはなく、歯が当たって破れてまた膨れてくる…というように、再発を繰り返す場合もあります。

 気になるようであれば、摘出を視野に入れて口腔外科医にご相談ください。